四季の魅力がつまった『東山魁夷せとうち美術館』(坂出市)

香川県

旅する風景画家・東山魁夷の作品を専門とした美術館。石版画を中心に多数の作品を収蔵・展示しています。日本各地の美しい景色が描かれた作品は、旅好きの感性に引っかかるものばかりです。

訪問日:2018/3/11(日) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

旅する画家・東山魁夷

戦後日本を代表する日本画家、東山魁夷(ひがしやまかいい)

横浜に生まれるも、3歳の時に父の仕事の関係で神戸へ。兵庫県立第二神戸中学校在籍中、恩師から薦めを受けて画家を目指すようになり、東京美術学校へ進学。さらに卒業後はドイツのベルリンへ留学します。

第3回日展に出品した『残照』が特選を受賞したことがきっかけに、風景画家としての道を進み始めます。

国内はもちろん、ドイツ、オーストリア、中国など世界各国へ訪問し、文字通り旅する画家として活躍。人気は高まり、「国民的日本画家」とも称されていたそうです。

各地にある魁夷の美術館

そんな東山魁夷の美術館は日本に4箇所あります。

①長野県立美術館・東山魁夷館(長野県)
②香川県立東山魁夷せとうち美術館(香川県)
③市川市東山魁夷記念館(千葉県)
④東山魁夷 心の旅路館(岐阜県)

今回ご紹介するのは2004年にオープンした②香川県坂出市にある東山魁夷せとうち美術館。坂出と東山魁夷の接点は、魁夷の祖父が櫃石島(ひついしじま)出身であったということ。それに因み、櫃石島を望むロケーションである瀬戸大橋の袂に造られました。

周辺には瀬大橋記念公園が広がり、瀬戸大橋タワーや瀬戸大橋記念館などがあります。

建築は谷口吉生

設計を担当したのは谷口吉生。「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」「東京国立博物館・法隆寺宝物館」「葛西臨海水族園」など、日本各地に作品を残す日本を代表する建築家です。谷口吉生の父である谷口吉郎と東山魁夷は親交があり、その縁で担当することとなったそうです。

美術館までまっすぐに伸びる道は、魁夷の代表作である1950年に発表した『道』をイメージした造りになっているそうです。

写真ではわかりにくいのですが、外観のカラーリングも魁夷作品を象徴する緑色が採用されています。ただの展示施設ではなく、建築そのものが魁夷の作風に合わせて作られた美術館なのです。

魁夷の作品を多数展示

版画作品を中心に、多数の作品を収蔵・展示しています。館内は残念ながら撮影禁止。イメージだけでも伝わればと思い、ミュージアムショップで買ったポストカードを載せてみました。

『たにま』
キャンバスの中心を流れる雪解け水は、冬の終わりの寂しさと春の訪れの喜びを表しているかのようです。

『花明り』
しだれ桜と満月を描いた作品。深い森を背景に、光る桜とぼんやりとした満月に目が奪われます。

『残照』
戦争や家族の死を乗り越えた先に描かれた力強い風景画です。前述の通り、第3回日展にて特選を受賞。政府買い上げとなったこの作品は、東山魁夷の転機になりました。

どこを描いた作品?

さて、東山魁夷の作品を見ていつも思うのが「ここはどこ?」。まず、最初に紹介した『たにま』。こちらは長野県野沢温泉村を描いたらしいです。

『花明り』は京都市東山区円山公園。実際に満月の夜を狙って京都へ行き、この作品を描いたそう。

「画面の上で、花の上に月を描くなどということは、決して難しいことではありませんが、やはりその場に私自身が居合わせるということ。」

添えられたこの言葉からも、旅する画家である信念が伝わってきます。

『残照』に描かれた壮大な景色は、千葉県君津市の鹿野山(かのうさん)。高い山の少ない千葉県にもこんなにも深い山々があるのですね。アクセスも悪くないので、そのうち行ってみようかな。

美術館の最後にはデジタルギャラリーが待っています。魁夷の作品がアーカイブされており、タッチパネルで選択すると、壁のモニターに写し出される仕組みです。

操作しないでおくと、作品がランダムに表示されています。目の前の椅子に腰かけて、移り行く景色をずっと眺めていたくなりました。

アクセスと営業情報

JR坂出駅よりバス・乗合タクシーで約20分ほど。本数はそれほど多くないので、事前に往復の時刻を確認しておいた方が良いです。

開館時間 9:00~17:00
休館日 月曜、年末年始 ※GW、夏休みは無休
料金 テーマ作品展:310円 ※特別展は企画により異なります
公式サイト https://www.pref.kagawa.lg.jp/higasiyamakaii/higashiyama/

※掲載の情報は2023年1月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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