そびえるクスノキの巨樹と鶴姫伝説を持つ日本総鎮守『大山祇神社』(今治市/芸予諸島)

芸予諸島

しまなみ海道を構成する島の1つ、大三島にある全国の大山祇神社と三嶋大社の総本社。天然記念物のクスノキの巨木は圧巻!悲しいストーリーの鶴姫にまつわる伝説も残ります。今回は神門が閉じて静けさに包まれた夕方に参拝しました。

2020/9/26(土)

離島に建つ神社

大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)があるのは、愛媛県今治市の大三島(おおみしま)。離島ですが、しまなみ海道という島伝いに橋が架かったルート上にあるため、広島サイドからも愛媛サイドからも車でアクセスできます。

夕暮れの境内

重厚感のある総門。塗装のされていないヒノキ造りで、近づくと良い香りが漂います。

広い空間を抜けると神門が見えてきます。立派な注連縄が下がる門で、総門と同じくヒノキ造り。ここもまた良い香りです。両サイドには随神像が鎮座しているのですが、目力が物凄く、夜に見るとゾクッとします。

ここから先の神域に参拝できるのは17:00まで。それ以降は門が閉じております。

まるで合掌造りのように大きな切妻屋根が印象的な国宝館。刀剣や甲冑などの武具を中心に、国宝8点と多数の重要文化財を所持しています。

とびしま海道大崎上島とたくさんの島を越えてやってきたため、時刻は18時。まだ日は沈みきっていませんが、参拝客はほぼゼロ。境内は静けさに包まれています。

総本社で総鎮守

大山祇神社は日本各地に存在していますが、この大三島の大山祇神社はそれらの神社の総本社にあたります。主祭神は大山積大神。山の神として広く信仰されおり、各地の山神社や三池炭鉱・軍艦島といった炭鉱でも祀られています。また瀬戸内海の水軍からは武神としても信仰されていました。

そんな格式の高さを感じる大山祇神社は、伊予国(愛媛県)の中で最も社格が高い「一宮(いちのみや)」でもあります。

さらに「日本総鎮守」という壮大な別名も持っています。総鎮守というのは、特定の地域を守るお社のこと。江戸の総鎮守である神田明神や、関東総鎮守である鶴岡八幡宮など、各地の名だたる神社がその役割を担っています。日本総鎮守ということは日本全体の守り神であるということ。ここまで守備範囲が広い神社とは、全く知りませんでした!

天然記念物のクスノキ群

境内には大小200本のクスノキが植えられております、そのうち38本は「大山祇神社のクスノキ群」として国の天然記念物に指定されています。多くのクスノキの中には、名前が付けられている樹木もいくつか存在しています。

「雨乞いの楠」
樹齢3,000年といわれる、日本最古のクスの木。能因法師という人物がこの木に供物を供え雨乞いを行ったところ、三日三晩雨を降らせたという伝説が残っております。支えを受けてなお立ち続ける姿は、杖をついた老神のようです。

「乎知命 御手植の楠」
乎知命(おちのみこと)が植えたとされる楠の大木で、御神木として祭られています。幹周り6mはありそうで、非常に力強い姿。樹齢2,600年といわれていますが、青々とした葉を多くつけた姿は、まだまだ元気な様子です。一緒に写真を撮ると長生きできるそうです。

「伊藤博文公 記念楠」
明治42年に伊藤博文がこの神社に参拝した際、記念に植樹したクスノキ。先の2つに比べると細く見えますが、かなり立派です。1909年に植えられているので、樹齢はおよそ100年くらいと考えられます。

戦う女性のストーリー「鶴姫伝説」

「我が想い この鈴に込めて」

そう書かれたこの銅像は、瀬戸内のジャンヌ・ダルクとも呼ばれる鶴姫。鶴姫には「鶴姫伝説」といわれる悲しいストーリーが存在しています。

大山祇神社の大宮司の娘として生まれた鶴姫。女性でありながら体力に優れ、加えて人を率いる力も持っていたため、三島大明神の化身ではないかと囁かれていました。

時は戦国時代、大三島は周防の国の大内氏より侵攻されていました。敵の軍勢から島を守るために鶴姫の兄は奮戦しますが、命を落としてしまいます。

鶴姫は兄に替わり、水軍を率いて戦い抜きます。しかし、大内軍の前に多くの味方は討たれ、ともに戦っていた恋人すらも失ってしまいます。

なんとか敵軍の撃退に成功したものの、鶴姫は悲しみに暮れ18歳という若さで海へと消えていくのでした・・・

この鶴姫伝説が広く認知されるようになったのは、1966年に発表された小説『海と女と鎧 瀬戸内のジャンヌ・ダルク』がきっかけ。それ以前は、地元民ですら知らない人も多かったそう。

大崎上島の「ふれあい郷土資料館」に展示されていたイラスト

現在では、小説だけでなく、漫画やゲーム、ミュージカルなど様々なメディアに取り入れられていきますが「この鶴姫が実在したか」というのははっきりしていないそうです。

宝物館にある「紺糸裾素懸威胴丸(こんいとすそすがけおどしどうまる)」は、日本唯一の女性用鎧で鶴姫の物だったという意見もありますが、その真相は謎に包まれています。


閉門していたため、拝殿・本殿を拝むことができなかったのが残念。次来るときは日中に訪れたいものです。

また、大山祇神社は春と秋に行われる「一人角力」という神事でも有名。稲の精霊と相撲を取るのですが、その姿は一般市民はもちろん、対峙する力士にも見えません。姿の見えない相手と相撲を繰り広げるという、非常に特殊な行事なのです。Youtubeに動画がいくつか挙がっていますので、気になる方は検索してみてください!

岡山県、広島県、山口県、香川県、愛媛県と瀬戸内海をめぐる9日間の旅もこれにておしまい。一気に関東まで車で帰ります!

コメント

  1. […] そびえるクスノキの巨樹と鶴姫伝説を持つ日本総鎮守『大山祇神社』(今治… […]

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