足利学校は約1,000年の歴史を誇る「日本最古の学校」として知られています。儒学、兵学、易学など様々な学問の学びの場であった場所。歴史的建造物が保存・復元されており、今も学問の精神を現代に伝えています。
足利学校に入学
日本で最も古い学校として知られる足利学校。その跡は大正10年(1921年)に国の史跡に指定されています。平成27年(2015年)には「閑谷学校」(岡山県備前市)、「弘道館」(茨城県水戸市)、「咸宜園」(大分県日田市)とともに「近世日本の教育遺産群─学ぶ心・礼節の本源─」として日本遺産に指定。現在100件を超える日本遺産のうち、第一号でした。
受付で料金を支払うと、「入学おめでとうございます」の一声とともに「入学証&学生証シール」がもらえます。学校ならではの楽しい演出です!
受付のそばには、トイレと自販機を備えた休憩所があります。14分間の案内映像がエンドレスで流れているので、最初に見ておくとその後の見学がより楽しめます。あと、暑い日は貴重なエアコンスポット!
最初に見えるのは寛文8年(1668)年の造営である学校門。日本で唯一「學校」の額がかけられた門とのこと。ちなみに「学校」という言葉は儒学の教科書のひとつ、孟子にある言葉だそう。今までまったく気にしたことなかったですが、ルーツは日本語ではないのですね。
波乱万丈の歴史
足利学校の内部の紹介の前に、まずはその歴史を簡単にご紹介!
足利学校の創建については奈良時代の国学の「遺制説」、平安時代の「小野篁説」、鎌倉時代の「足利義兼説」など諸説ありますが、その歴史が明らかになるのは、室町時代の永享11年(1439年)関東管領・上杉憲実が再興してから。現在国宝に指定されている書籍を寄進し、鎌倉の円覚寺から僧・快元を招いて初代の「庠主(しょうしゅ=校長)」とし、足利学校の経営にあたらせました。
応仁の乱以後、引き続く戦乱の中でも学問の灯を絶やすことなくともし続け、学徒三千といわれるほどに隆盛。儒学に加えて易学や兵学といった実用的な学問も学ばれ、数多くの軍師を輩出。天文18年(1549年)にはイエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルにより「日本国中最も大にして、最も有名な坂東の大学」と世界に紹介されました。
豊臣秀吉の甥、豊臣秀次は書籍を京都に運び去ってしまいますが、幕府を開いた徳川家康は足利学校の存続を決め書物を返還させます。その後、歴代将軍が保護するも、時代の変化や火災で江戸時代半ばからは衰退。江戸時代の末期には「坂東の大学」の役割を終え、明治5年(1872年)に幕を下ろしました。
建物の取り壊しがされそうになるも、有志による保存運動が展開。平成2年(1990年)の復元完成へとつながります。今では「学校さま」と呼ばれ、人々に親しまれているそうです。
江戸時代から残る孔子廟
学校門をくぐった先にある孔子廟は、寛文8年(1668)年、江戸幕府4代将軍・徳川綱吉の時代に造営されたもの。中国・明時代の聖廟を模したものであるそう。
孔子廟の中心に安置されているのは孔子像。室町時代の天文4年(1535年)に造られたもので、日本最古の孔子彫像といわれています。ちなみに頭巾を被り儒服をまとった姿を、「行教像」と呼ぶそう。
孔子像に向かって右側には江戸時代延享3年(1746年)作の小野篁像。平安時代の公卿・歌人であり、「学問の神様」と呼ばれる人物。歴史紹介でもちらっと名前が出ましたが、足利学校の創設者とする説もあります。
※この小野篁、「冥界で閻魔大王に仕えていた」というウワサもある人物です。詳しくはコチラの記事にて。
遺蹟図書館
孔子廟の隣にあるのは遺蹟図書館。明治36年(1903年)に建てられた図書館の書物を受け継ぎ、大正4年(1915年)に建てられたもの。平成6年(1994年)には市の重要文化財にも指定されました。
靴を脱いであがる館内では、本や資料がずらりと展示されています。「徒然草」「伊勢物語」「鉢かづき」など、聞いたことある名前の書物がたくさん。ショーケースに入ったものだけでなく、手にとって読むことができる書籍も。高校日本史の教科書もあって、ちょっぴり懐かしくなりました。
本棚の上に置かれた謎の道具。2本の鎖で器のようなものがつるされています。特に解説などはないため、私が勝手にご説明させていただきます!
こちらは宥坐之器(ゆうざのき)。吊り下がる器に水を注いでいくと、次第にバランスが保たれていきます。しかし、そのまま水を入れ続けると傾きこぼれてしまうのです。孔子による「満ちて覆らない者はいない」という教えを伝えるための道具なのです。
復元された方丈
茅葺き屋根の立派な木造建築は、江戸時代中期の姿に復元された方丈。学生の講義や学校行事が行われる、学校の中心となる建物です。
靴を脱いで上がると、広々とした座敷に縁側。目の前には池や築山のある庭園が広がり、吹き抜ける風が心地よい穏やかな空間。
モニターではイケメンボイスの小野篁による論語の素読の授業も受けることができます。
内部見学を終えて外に出た時に気がついたのですが、方丈の前にも先程見かけた「宥坐之器(ゆうざのき)」がありました!
しかもこちらは大きく、実際に水をすくって入れることができます。ちゃんと解説もありますので、私の話は無視してこちらでご覧くださいね。


アクセスと営業情報
JR両毛線の「足利」駅から徒歩10分、または東武伊勢崎線の「足利市」駅から徒歩15分。
開館時間 | 4~9月:9:00~16:30 10~3月:9:00~16:00 |
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休館日 | 第3水曜、年末年始 |
料金 | 480円 |
公式サイト | https://www.city.ashikaga.tochigi.jp/education/000031/index.html |
※掲載の情報は2025年7月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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