変幻自在の益子焼の世界『益子陶芸美術館』(益子町)

栃木県

関東を代表する「やきもののまち」として知られる栃木県の益子町。ここでつくられている益子焼は、もともと民芸品でしたが、次第に芸術的な評価を得ていき、今では世界にも名が知られる名産品として成長していきました。この美術館では、そんな益子焼の歴史と代表的な陶芸家による作品を存分に堪能できます。

2021/2/19(金)

まずはさらっと益子焼の歴史

今では一定の知名度を得ている益子焼ですが、益子の窯業がはじまったのは江戸時代末期の1852年。日本の陶磁器生産地の中ではかなり新しい方になります。

笠間で修行をしていた大塚啓三郎という人物がこの地で陶土を発見し、窯を築いたことによってはじめられたといわれています。益子を治めていた黒羽藩はこの窯業を保護したため活性化、1864年には6軒の窯元が創業しました。

明治時代に入ると、藩の御用窯から民窯となり、さらに多くの窯元が開業。量産に適したシンプルな紋様の日用品を多く生産していきます。

1927年には濱田庄司という陶芸家が花器などの民芸品を手掛けるようになります。彼の参加していた民芸運動とリンクし、それまでは生活のための量産品であった益子焼が、芸術品として評価されるようになります。

1979年には伝統的工芸品に指定されます。九谷焼や美濃焼とも肩を並べ、益子焼の名は全国に知られていきました。

益子陶芸美術館

そんな益子焼に焦点を当てたミュージアムが益子陶芸美術館。益子のメインストリートである城内坂から、一本入った丘の上に建てられています。

蔵のような外観の建物。釉薬で緑に輝くタイルが貼られており、とってもあざやか。

有名作家の作品展示や、縄文土器から始まる益子焼の歴史をパネルと実物で紹介しているコーナー、様々な企画展を行っており、益子焼について詳しくなれる場所です。

開館時間:9:30〜17:00 ※11〜1月は16:00まで
休館日:月曜、年末年始
料金:600円

バリエーション豊かな作品

館内では、新旧様々な作家の作品が並んでいます。一言で益子焼といっても、その作風は非常に多岐に渡っています。「焼き物の魅力がイマイチわからない・・・」なんて人こそ、ここに来ればイメージが変わるのではないでしょうか。

まず、見逃せないのが濱田庄司の作品。洗練されたモダンな作風で、彼の技術は重要無形文化財にも指定されています。「人間国宝」なのです。

濱田の友人で華やかな作風の佐久間藤太郎、シックな印象の村田元、線条文が印象的な小滝悦郎、「牙白磁(げはくじ)」と名づけられた真っ白くもあたたかみのある作品が特徴の廣崎裕哉、色鮮やかでストライプがインパクト抜群な瀬戸浩など、様々な時代の陶芸家の作品が並びます。(※敬称略)

それぞれ解説もあるためじっくりと学ぶことも可能ですが、「どの陶芸家が一番好きか」「どれか1つ持ち帰っても良いとしたらどれにする?」みたいなカジュアルな楽しみ方をしても面白そうです。

私は、雪のように神秘的な作品を作る木村一郎が妙に気に入ってしまいました。

濱田庄司氏旧宅

日用品であった益子焼を芸術品に高めた濱田庄司。川崎で生まれた彼は、東京で学生生活を過ごします。東京高等工業学校の窯業科を卒業後、京都市立陶芸試験場にて釉薬を研究。そこで知り合ったイギリス人陶芸家のバーナード・リーチの帰国に伴い渡英します。

帰国後、1930年よりかねてより関心を寄せていた益子にて総作活動を開始。その拠点として暮らしていたのがこちらの家屋。開放されており、内部も含めて自由に見学できます。

すぐ隣には、濱田氏が愛用していた登り窯のレプリカがあります。斜面を利用した窯で、温度を一定に保てるように工夫されています。いくつもの窯が連なる姿は迫力あります。

すぐ近くには益子大仏

陶芸美術館のすぐ近くには、益子大仏があります。美術館の駐車場からはわずか100mほどの位置です。

高台にあるため、城内坂からもちらちらその姿を拝むことができる大仏様。墓地を見守っている大日如来坐像ですが、こちらはなんと陶製。芸術家の藤原郁三による作品です。

太陽を浴びると白く輝き、とても美しい大仏様でした。

※観音寺というお寺が管理していますが、境内からは少し離れているのでご注意ください。

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