史上初の武家政権であった鎌倉幕府を見守ってきた神社。現代においても古都・鎌倉を代表する神社であり、多くの参拝者で賑わっています。境内には源平の池やミュージアムなど、見どころが多数。ところで、「昭和の鎌倉攻め」ってご存じでしょうか?
鎌倉武士の守護神
多数の寺社が残る鎌倉において、最も知名度が高い神社のひとつが鶴岡八幡宮。
源頼義が奥州を平定して鎌倉に帰ってきた際に、源氏の氏神として八幡大神を由比郷の地(現・材木座)にお祀りしたのが始まりだそう。鎌倉幕府が開かれると、鎌倉武士の守護神として重要な役割を担います。
全長1.8kmもの参道は若宮大路。「段葛(だんかずら)」と呼ばれる、地上より一段高い参道が伸びています。車より高い位置を歩いているのは不思議な感覚です。実は徐々に道幅が狭くなるように造られており、遠近法で八幡宮を遠くに見せ威厳を高めるという工夫がなされています。
鎌倉駅から向かう場合は、この若宮大路か、もしくはお店がひしめく「小町通り」を通り抜けて向かいます。サクッと向かいたい場合、正式な参道を歩きたい場合は若宮大路、食べ歩きなども楽しみたい場合は小町通りから行くのが良さそうです。
源氏池と弁才天社
境内に入るとすぐに橋があります。その下に広がるのが源平池。源氏池という表記もありもしかして名称が変わったのかと思いきや、橋の右側が源氏池、左側が平家池となっているそう。
源氏と縁が深い神社であるのに平家池があることに驚いたのですが、それぞれの池の島の数に意味があることを知りさらに驚愕!源氏池には島が3つ、平家池には島が4つあるのですが、それぞれ「産」と「死」を表しているそう。源氏は栄え、平家は滅びるという願いとのことですが、これはもはや呪いでは・・・。
平家池には「鶴岡ミュージアム」がありますが、それは後ほど。まずは、源氏池に浮かぶ旗上弁財天社へ。北条政子が建立し弁才天を祀っていましたが、明治の神仏分離に伴い取り壊しに。その後、創建800年にあたる1980年に復元されました。
社殿の裏にあるのが政子石(まさこいし)。源頼朝が妻の政子の安産を祈願したとされる石です。夫婦円満の祈願石で姫石とも呼ばれ、子宝や安産のご利益もあるとされています。
上下両宮からなる社殿
参道の先にあるのが舞殿。義経を慕う静御前が舞をおさめたとされる若宮回廊跡に建てられました。下拝殿とも呼ばれているそう。
舞殿の奥にある大石段を上ると本宮がありますが、その前に若宮へお参りしてからにします!
大石段向かって右側にある社殿は若宮もしくは「下宮」と呼ばれており、本宮の御祭神である応神天皇の御子・仁徳天皇をはじめ、履中天皇・仲媛命・磐之媛命の四柱の祀っています。建築は江戸時代初期にあたる寛永元年(1624年)のものであるそう。
さて、石段を上った先にあるのが本宮。こちらは「上宮」と呼ばれております。現在の社殿は、江戸幕府11代将軍・徳川家斉によって1828年に再建されたものです。
屋根に曲線を与えた「流造」と、本殿と拝殿を一体化した「権現造」、その両方の特徴を兼ね備えた「流権現造」という建築様式。御祭神は八幡大神(応神天皇)、比売神、神功皇后の三柱からなる八幡三神です。
本宮の回廊は宝物殿となっており、200円で拝観することができます。鎌倉時代の「板碑伝」、足利持氏が自らの血を混ぜて描いたという願文「足利持氏血書願文」、南北朝時代の「住吉神倚像」などが展示されています。入館すると、裏側も含めて本宮の周りをぐるりと見渡せるのもポイントです。
神の使いの鳩
扁額の八幡の漢字、よく見ると何かがデザインされているのにお気づきでしょうか。
これはハト。八幡宮を全国に移動させるときに、ハトが道案内したという伝説があるため、ハトは「八幡さまのお使い」と呼ばれているのです。
そんなことを知ってか知らずか、境内にはハトがたくさん!!先ほどの源氏池に浮かぶ旗上弁才天社の近くには、白いハトもたくさんいます。コイ&ハト兼用のエサを買うと、手にとまってくることも。
なお、鎌倉みやげとして全国的に知られている「鳩サブレ」も、この八幡宮のハトがモチーフとなっているのです!みなさん、ご存知でしたでしょうか。
平家池の鶴岡ミュージアム
平家池のほとりに立つ真っ白な建物。こちらは鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム。もともと神奈川県立近代美術館の旧鎌倉館であった建物を利用した博物館。
展示室内では、貴族による平安時代から武士による鎌倉時代の変遷、武士団の仕組みなどがパネルで紹介されています。モダンな映像コンテンツもあり、とっつきやすい歴史ミュージアム。
さらに、期間限定でこちらの展示も。葛飾北斎が描いた富嶽三十六景、歌川広重の東海道五十三次といった浮世絵も多数見ることができます。
2025年1月7日(火)- 2025年3月9日(日)
全体の展示ボリュームはそれほど多くないため、15分ほどでも見終えることができますが、人も少なく静かな空間なのでゆったりと見学するのがおすすめ。
出口へ進むと最後に平家池を望むテラスにつながります。水面に反射する光が天井に映り、ゆらゆらと動く。ずっと見ていられそうな光景でした。
昭和の鎌倉攻め
最後にひとつ、鶴岡八幡宮の歴史を語る上で外せない「昭和の鎌倉攻め」についてちらっとふれさせてください!それは昭和35年(1960年)頃、戦争も終わり平和の世の中が訪れた時代におこります。
世の中は高度経済成長期に突入。宅地造成ブームがはじまり、ブルドーザーによって次々と山が切り開かれていくことに。その手は鶴岡八幡宮の裏山である聖域「御谷(おやつ)」まで差し掛かります。これに対して住民は全力で開発を阻止。「御谷騒動」と呼ばれる市民運動がおこり、集まった寄付金で御谷を買収。自然環境や歴史遺産を買い取ることで守る市民運動「ナショナルトラスト運動」へと発展します。
ナショナルトラスト運動がおこったのは日本初であり、このときに設立された財団「鎌倉風致保存会」は日本で最初のナショナルトラスト団体であったそうです。
この運動が契機となり、昭和41年(1966年)には「古都保存法」が制定。鎌倉の街並みは開発から守られることになりました。
歴史を感じる風情ある雰囲気が人気の鎌倉も、住民の努力により守られてきた光景。そう考えると、鎌倉という街がまた違った輝きを見せてくれる気がしますね!
アクセスと営業情報
JR線「鎌倉」駅の東口から徒歩10分。
開門時間 | 6:00~20:00 |
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料金 | 無料 |
公式サイト | https://www.hachimangu.or.jp/ |
※掲載の情報は2025年1月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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