激しい争奪戦が繰り広げられた常陸国の要衝『小田城跡』(つくば市)

茨城県

この地を治めていた小田氏の居城であり、戦国時代には激しい争奪戦が繰り広げられた激戦の地。再現建築はありませんが、復元された土塁やお堀から、その規模感や防衛の歴史を感じることができます。

訪問日:2024/2/11(日) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

復元された城跡

小田城は鎌倉時代から戦国時代にかけて、常陸南部で最大勢力を誇った小田氏の居城。2009年から7年間かけて本丸跡とその周辺が復元整備され、現在は「小田城跡歴史ひろば」として自由に見学できるようになっています。四方を囲む土塁の上も自由に歩けるのもポイント。

かつて筑波鉄道の線路が本丸跡の中心を横切っていました。鉄道が廃線となるとその跡地は「つくばりんりんロード」という自転車道になります。その際に、このポイントは小田城跡を迂回するように変更されました。

小田氏の戦いの歴史

この小田城を長きに渡って居城としてきたのが小田氏。頼朝亡き後の十三人の合議制の一人・八田知家を祖とする一族です。15代小田氏治まで350年以上もこの地を治めていました。

小田城は、そんな八田知家の居館がルーツといわれています。4代・小田時知の時代には現在も残る土塁が築かれていたことがわかっているそう。

南北朝時代、室町時代、戦国時代と後北条氏や上杉氏、佐竹氏といった周辺勢力に奪われては取り返すという小田城争奪戦が繰り広げられます。戦国時代末に上杉謙信・佐竹義昭に奪われ、一度は奪還に成功するものの、1569年の手這坂の合戦にて再度奪われ、小田氏は小田城を失ってしまいます。

その後、小田氏は豊臣秀吉の小田原攻めに際して小田城奪還を試みますが失敗。参陣しなかったことから、秀吉に所領を没収され大名としての小田氏は滅亡。その後、小田氏は結城氏の食客となり越前へと赴くことに。残った小田城も関ヶ原の戦い以降の佐竹氏の秋田移封に伴い、廃城となってしまいました。

堀と土塁に囲まれた平城

正門である大手門と考えられる東門。かつては堀に木橋が架かっており、やがて木橋と土橋を組み合わせたものに変更されます。

北西土塁の切れ目には公衆トイレがあり、その傍の壁は土塁の断面図が描かれています。室町時代以降に土塁が拡張していく様子を見ることができる展示です。

土塁を削って造られた南西虎口跡。その先には、南西馬出曲輪が続いております。奪われては取り返すという歴史から防御力が低い城かと思われがちですが、幾度となく改修が行われ、その守備を強化されていました。

ちなみに小田城が落城した回数は9回ほどであるそう。何度も攻め落とされているところだけを見ると弱い城のイメージが付きますが、多くの大名が狙った要衝であるとも考えられます。難攻不落といわれた岐阜城ですら6回ほど落城しているので、これだけで城の強度を判断するのは早計かもしれません。

絶景広がる鉄壁の山城『岐阜城』は何故6回も落城しているのか(岐阜市)
金華山の山頂に建つ岐阜城。斎藤道三、織田信長と戦国時代を代表する武将の居住であり、急斜面の上に建つ難攻不落の山城。再建された天守に立てば、一面に広がるパノラマを楽しめます。堅牢な城に見えますが、気になるのは落城回数の多さ。何か弱点があったのでしょうか。

建物跡の多数残る城内

城内は広々とした芝生広場。建物跡の柱位置をもとに作られた東屋や水飲み場もあります。周辺に暮らす人は公園として利用しているようで、ウォーキングしている方や、野球している少年たちの姿も。

建物域と呼ばれるエリアは、城主の屋敷などがあった空間。礎石建物の跡は茶色、掘立柱建物の跡はベージュで色分けされています。

かつて庭園があったと考えられる場所には東池が復元されています。石を敷き詰めた州浜や土を持った築山もあったことがわかっており、使い捨ての盃であるかわらけが多数出土したことから、この場所で宴会が開かれていたと考えられています。

ミニミュージアムも併設

駐車場には小田城跡歴史ひろば案内所というガイダンスセンターがあり、わかりやすいパネルや模型が展示されています。最初に訪問して少し知識を付けてから巡ると見え方が変わってくるハズ。

こちらは本丸の復元模型。堀と土塁に囲まれていた様子を上から見て実感できます。櫓や天守といったお城らしい建築は無かったのですね。

城跡から出土した陶磁器の破片も展示されています。中国から輸入した高価なものも多く見つかっており、城内に庭園が築かれていたことと合わせて、小田氏が優雅な暮らしを送っていたことが垣間見えます。

 

再現建築や立派な石垣なども無いため、著名なお城に比べると控えめな印象の城跡。とはいえ、土塁やお堀は非常に良く復元されております。

ちょっと物足りなく感じる方は、小田氏がこの城を奪われては何度も取り返してきた歴史や、多くの大名が欲しがった場所であるという点などにフォーカスして歴史ロマンを感じて見るのもおすすめです。

アクセスと営業情報

開門時間 24時間 ※案内所は9:00~16:30
休館日 年中無休 ※案内所は月曜、休日の翌日(土日除く)、年末年始
料金 無料
公式サイト https://www.city.tsukuba.lg.jp/kankobunka/bunka/rekishi/1001640.html

※掲載の情報は2024年2月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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