圧倒的な存在感を放つ大きなレンガ造りの近代化産業遺産。ここでは予約不要で気軽に内部を見学することができます。当時最先端であった「ホフマン式輪窯」は、レンガの大量生産を可能にしました。いったいどのようなシステムでレンガが造られていたのでしょうか。
遺跡のような佇まいの窯
栃木県の野木町にある16角形のレンガ建造物。こちらは野木町煉瓦窯と呼ばれるもの。「窯」と付くことから何かを焼くためのものですが、いったい何を焼いていたかわかりますでしょうか。
正解は「レンガ」。この地にはかつて下野煉化製造会社があり、レンガの製造が行われていました。ここで造られたレンガは足尾銅山や東京駅にも使用されていたそうです。
この窯は、明治23年(1890年)に完成したもの。ドイツ人技師ホフマンが考案した「ホフマン式輪窯」と呼ばれるタイプの窯であるそう。非常に効率よくレンガを生産することができるそうですが、いったい普通の窯とは何が違うのでしょうか?
ホフマン式輪窯は現在、野木町以外では埼玉県の「深谷」、滋賀県の「近江八幡」、京都府の「舞鶴」に残されています。ただし、完全なカタチで残っているのは野木町だけであるそう。
ホフマン式輪窯の凄さ
通常の窯でレンガを焼く場合、以下の行程を踏む必要があります。
②火をつける
③焼き上がったら火を消して冷ます
④レンガを取り出す
一回一回火を消して取り出すので、非常に時間のかかる作業です。
しかし、この輪窯はそんなレンガ焼成に革命的な効率アップをもたらします。内部が16個の窯に分かれており、1つ目の窯で点火して焼いている間に、2つ目の窯ではあらかじめ並べていたレンガを余熱で乾燥。その間にさらに3つ目以降の窯にレンガを並べてスタンバイ。
1つ目の窯のレンガが焼き上がると、火を消さずに2つ目の窯へと移します。1つ目の窯を冷ましている間も止まることなく稼働を続けていき、圧倒的な効率でレンガを生産することが可能だったのです。
予約不要で見学可能
そんな貴重な輪窯ですが、ここではなんと内部見学が可能。しかも予約などは特に不要なのです。受付は、輪窯のそばに建つ野木ホフマン館。カフェや休憩スペース、ちょっとした展示のある施設です。
わずか100円という格安なチケットを購入します。そしてヘルメットを被れば準備万端!
アーチ状のヴォールトで積まれた入口から中へと入っていきます。まるで遺跡のような佇まいにわくわくしますね。
輪窯の内部へ潜入
内部は薄暗いレンガのトンネルのような空間。イメージしやすいように、レンガがびっしりと積み上げられています。
こちらは点火窯という、最初に点火を行うための場所です。火が着いた後は取り壊され、ぐるりと一周したタイミングでここもレンガ焼成場へと切り替わります。
張り巡らされた鉄骨は、保存のための補強。あえて見えるように設置しており、取り外しも可能であるそう。頭をぶつけそうになりますので、ヘルメットは絶対外さないようにしましょうね。
階段を登って2階へ
順路にそって進んでいくと、輪窯の外へ。そのまま進むと、2階へと続く階段が見えてきます。
木組みの天井、つまれたレンガ、壁がなく吹き抜けの様子は、キャンプ場の炊事場のような雰囲気。中央には、外観でも印象的だった高さ34.5mの煙突がそびえています。
窯から発生した煙は、煙道を通って煙突へと流れていきますが、その煙を調節したのがこのダンパー。全部で16基ありましたが、現在は3基だけが残っています。
外周部分にずらりと並んでいるのは鉄の蓋。それぞれが燃料となる粉炭を追加するための投炭孔(とうたんこう)となっています。その数は全部で400箇所。周囲には粉炭を運ぶための炭車とレールも備えていたそうです。
このあたりで見学順路はおしまい。内部に入ったり、二階部分に上ったりと非常に見ごたえのある見学ルートで大満足。途中には案内板もあるので、知識が無くても楽しめるようになっております。近くへ訪れた際には、ぜひとも立ち寄ってみてほしいスポットです。
アクセスと営業情報
JR東北本線(宇都宮線)の古河駅から徒歩30分ほど。近くへ向かうバスは運行していないようで、車が無いと少々アクセスしづらいです。
タクシーを利用するか、野木駅、または古河駅周辺でレンタサイクルを借りて向かうのもありかなと思います。
開館時間 | 9:00~17:00 |
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休館日 | 月曜、年末年始 |
料金 | 100円 |
公式サイト | https://www.town.nogi.lg.jp/kankou/spot_annai/rengagama/page000843.html |
※掲載の情報は2023年8月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
コメント
いつも楽しみに拝見しております!
レンガってそういやどうやって作るんだろう?っていう疑問すら抱かずに人生をただ流されるままに生きてきたのを痛感しました…。
今回も大変勉強になりました。
見ていただけて嬉しいですっ!!!
先人達の様々な工夫がには、いつも驚かされるばかりです。