三栖右嗣(みすゆうじ)の作品を多数収蔵するアートミュージアム。まるで写真のようなリアリティあふれる表現や、大きなキャンバスを利用したダイナミックな構図は、美術に興味がない方でも楽しむことができます!
ヤオコーの運営する美術館
川越氷川神社の裏手に建つヤオコー川越美術館。モダンなコンクリートの建築は、「大館樹海ドーム」や「せんだいメディアテーク」などで知られる伊東豊雄によるもの。


入館チケットは300円。コーヒーや抹茶などの飲み物セット券500円もあります。

ここは、埼玉県を中心に、関東各地に店舗を展開するスーパーマーケット「ヤオコー」の創業120周年記念事業として開設されたミュージアム。エントランスには、ヤオコー1号店の模型も展示されていました。

なお、ヤオコーカードの提示で入館料が100円引きになるという割引もあります。
静かで落ち着ける館内
館内はエントランス部分、展示室×2、喫茶スペースと4つに分かれています。1つ目の展示室は天井から床にかけて、漏斗型の柱が落ちています。

2つ目の展示室は高い天窓と、その真下には丸いソファ。書き込み用のノートも置かれていました。

喫茶スペースはグランドピアノと椅子&テーブルがたくさん。ここでドリンクの注文も可能なので、川越散策中に静かに休憩するにはぴったりのスペースです。

館内はなんと写真撮影可能!ということで、ここからは私が気になった作品を紹介させていただきます。
三栖右嗣の絵画
展示されている作品は全て、日本の洋画家である三栖右嗣(みすゆうじ)のもの。現代リアリズムの巨匠として知られる画家で、リアリティのある写実的な作品が並んでいます。
《かもめとキッツォ爺さん》は、たばこを加える漁師風のおじいさんと、そのそばに留まるカモメを描いた作品。おじいさんがカモメに話しかけているように見える、ほのぼのした風景です。この人物は千葉の漁師であり、「キッツォ」は「吉宗(きっそう)」という名から来ているそうです。

アトリエのような風景を描く《室内》は、カラフルで華やかな作品。机に座る人物と、窓際で本を読む人物はデザイナー、虚ろな目で立っているのはモデルでしょうか。

《林檎のある風景》は、太い木の根元に落ちる赤いリンゴを描いています。落ち葉の布団の上に並ぶリンゴは、ツヤツヤの質感がリアル。とっても美味しそうです。

季節に合わせた作品
150点以上という収蔵作品は、春夏と秋冬の年に2回入れ替えて展示されています。訪問した際は、「秋冬の展示」。
《秋日》は、キャンバスのほとんどを紅葉が埋め尽くす大胆な作品。紅葉の下には2人の人物が描かれます。人物は最小限の書き込みでぼんやりとしているのに、祖母と孫であることがわかるのが不思議です。

横たわる巨大な廃船と、飛び交うカモメの姿で迫力のある《オホーツク》。この船はなぜ横たわっているのか、いつからこうしているのか、何のための船だったのか、遠くに見える小屋は漁師小屋なのか。想像力が掻き立てられる絵画です。

高さ2m以上ある大きな《爛熳》。キャンバスを埋め尽くすのは鮮やかなシダレザクラ。その下にはレジャーシートに座る母親と赤ちゃん。リアルな人物のはずが、逆に幻想を感じます。

もう一つの《爛熳》。こちらも一面のシダレザクラが描かれています。花の色は濃淡がくっきりとつけられて奥行きがあるため、単調にならないのが凄いです。

ところで、三栖右嗣とはどのような画家だったのでしょうか?
三栖右嗣とヤオコーの関係
三栖右嗣は1927年に神奈川県の厚木に生まれます。1952年に東京藝術大学を卒業後、画家の道へ。1960〜1970年の10年間画家活動を停止するも、その後活動を再開。
館内には、愛用品であった絵の具や筆も展示されています。

1975年、沖縄国際海洋博覧会の「海を描く現代コンクール展」に《海の家族》で大賞を受賞。さらに、翌年の1976年には第19回安井賞を《老いる》で受賞します。
こちらがその作品。老いた母の裸像を描いた作品であり、深いシワや、白髪が輝く頭髪、どこまでも写実的に表現されています。

そんな三栖右嗣とヤオコーの繋がりとなったのが、こちらの《コスモス》。白とピンクのコスモスは、花びらに濃淡が表現されているため、立体感のある作品です。

館長の川野幸夫の母であり、ヤオコーの実質の創業者である、故・川野トモ名誉会長が三栖右嗣の個展でこの作品を購入。それまで特別絵に関心があったわけではないため、川野館長は驚いたと同時に、よほど心を動かされたと感じたそうです。それ以降、川野家と三栖右嗣は家族で付き合いが生まれていきました。川越に本社屋が完成した際には、各フロアに三栖作品を展示したそうです。
そんなわけで、三栖作品への愛がたっぷりと詰まった美術館。たった300円という良心的な入館料から、地域への貢献も感じ取れる施設でもあります。駅からは離れていますが、川越散策の際はぜひとも立ち寄ってみるのがおすすめです。私もまた、別の季節に寄ってみたいなと思いました。
アクセスと営業情報
| 開館時間 | 10:00~17:00 |
|---|---|
| 休館日 | 月曜、年末年始 |
| 料金 | 300円 |
| 公式サイト | https://www.yaoko-net.com/museum/ |
※掲載の情報は2026年2月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。


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