様々な企画展も開催している美術館ですが、常設展示となるMOMASコレクションも見応え抜群。ピカソ、モネ、シャガールをはじめとした個性的な作品がずらりと並びます。屋外には中銀カプセルタワービルのプロトタイプカプセルの姿も。
公園の中のアートミュージアム
音楽噴水や彫刻広場があり、非常に文化的なイメージの北浦和公園。そんな公園を象徴する施設が埼玉県立近代美術館。英語表記であるThe Museum of Modern Art, Saitamaの頭文字をとって、「MOMAS」とも呼ばれています。
1957年に開館した埼玉県立美術館をルーツに、1982年にオープン。印象的な外観は、黒川紀章によるもの。後に「広島市現代美術館」や「和歌山県立近代美術館」、「国立新美術館」など多数の美術館を手掛ける建築家ですが、ここが初めての美術館設計であったそう。
常設展示はMOMASコレクションと呼ばれています。ここは一部を除いて作品の写真撮影が可能!気になる作品をスマホに入れてお持ち帰りできます。
有名画家のコレクション
『ジヴェルニーの積みわら、夕日』by クロード・モネ
2つならんだ積みわらはもちろん、ピンクと水色というかわいらしい色合いの背景もファンタジック。様々な色が幾重にも重なる、織物のような絵画です。
『ルエルの眺め』by クロード・モネ
こちらも同じくモネの作品ですが、先程とは異なりリアルな色合いの風景画。1858年の作品ということですので、当時の年齢は18歳。晩年のようなスタイルが確立する以前の作品です。
『静物』by パブロ・ピカソ
静物という名の作品は多数ありますが、こちらは1944年の作品。並んだキャンドル、ポット、カップは複数の視点から見た姿が一体となっています。これらのモチーフは何を意味するのか、鏡に映る白と黒のモノトーンの景色は何を表しているのか・・・。
『二つの約束』by マルク・シャガール
台の上に置かれたバラの花瓶、そしてその背後にはヤギやニワトリが暮らすまち。気になったのは人が一人も描かれていないこと。誰もいないまちに終末感が滲み出してきたところで、花瓶が置かれているのが台では無いことに気が付きました。
ユニークな展示方法
作品をただ並べるだけでなく、いろいろと工夫された展示もあります。
薄いカーテンが揺れる「対話する部屋」に展示されているのは『garden 3』by 丸山直文。壁には「ここは、どこ?」「どんな音が聞こえてきそう?」といった質問が。大きなキャンバスと向き合って、描かれた3人のストーリーを考えてみるのも楽しいです。
壁に散らばる「宇宙」「曼荼羅」などのワード。それとともに並ぶのは『フォトグラム』by ラスロ・モホリ=ナジ、『肖像Ⅲ ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト』by 柄澤齊という2つの作品。なぜこの2つなのか、ワードとの関連は何か。想像が膨らみます。
展示室内に無造作に置かれた黒くタールが塗られた木管。壁には樹木のような映像が投影されています。こちらは『泉ー9個からなる』by 遠藤利克。
靴を脱いで小さな階段を上がった先には、写真左奥へと伸びる細く薄暗い展示室。そこには『折る円』by 泉茂、『谺』by 堀越陽子という2つの作品が。
大まかに2部屋だけの展示室ですが、様々な展示方法があるため良いアクセントになっています。
秘密の屋外展示
展示室のドアを開くと、屋外展示場にも繋がります。この屋外展示場の入口、展示室へ入室してすぐの所にあり、非常に見落としやすいのでご注意ください。
外へ出て見ると、彫刻作品が3点ほど並んでいます。屋外ですが、展示室内からしか近づくことができないようになっております。
印象的なのは『階段』by 重村三雄。屋外階段に並ぶのは、すらりとした女性、傘とリュックを備えてニット帽を被った女性、腰掛けて考え込んでいるような麦わら帽子の女性。
この3人はいったいどのような関係なのでしょうか。友人?姉妹?お互いを気にする様子が感じられないので、もしかしたら赤の他人なのかもしれません。
展示室以外にも隠れた作品あり
展示室を出た後も気が抜けないのが、こちらの美術館の面白いところ。
吹き抜けのセンターホールには、『ダミアン神父像』by 舟越保武、『枢機卿』by ジャコモ・マンズー、『マグダラのマリア』 by ヴェナンツォ・クロチェッティといった作品たちが並んでいます。
周囲をめぐってみると、壁に突き刺さるものを発見しました!こちらは『ドッキング(表面)No.86-1985』by 田中米吉。インパクトは抜群ですが、意外と気が付きにくいかもしれません。
そして、極めつけはこちら!なんとコインロッカーにも作品が展示されています。『Number of Time in Coin-Locker』by 宮島達男という作品で、ロッカーを利用しないと・・・いえ、ロッカーを利用していても気が付かないかもしれません。
私が気が付いたのはここまでですが、もしかしたら他にも作品が隠れているかもしれません。訪問予定の方は、いろいろなところへ目を向けて見ると、何か発見があるかもしれません。
インパクト抜群な彫刻広場
美術館の目の前は彫刻広場があり、子どもたちが楽しげにはしゃぎまわっています。
そんな子供たちを見守るのは重機。こちらも作品のようですが、どういった用途で使用される重機なのでしょうか。搭乗席も操作盤もないため、何か独立した動力で動くのかもしれません。
木々に絡みつく不思議な生き物。「森の奥で未知の生物に出会ってしまい、命の危機を感じる」そんなシチュエーションが浮かびます。
おもむろに置かれた白い四角いもの。こちらは美術館の設計者である黒川紀章の作品、中銀カプセルタワービルの住居用モデルカプセルとして作られたもの。
中銀カプセルタワービルは、中央区銀座に建てられたビルで、新陳代謝を意味する建築運動「メタボリズム」の代表作として知名度の高い作品。このカプセルが無数に積み重なり、新陳代謝する細胞のように入れ替わって行くことを想定して造られました。
中を除くとホテルのようなワンルーム。ブラウン管テレビやダイヤルフォンなど、レトロに感じる仕上がりです。こんな部屋ですっきりとした暮らしを送ってみたいものです。
美術館はもちろん、屋外にも多数の見どころがあり、たっぷり楽しめる美術館でした!趣向を凝らした展示が非常に楽しめたので、次は企画展が開催されているタイミングで訪れてみたいです。
アクセスと営業情報
北浦和駅西口より徒歩3分。
開館時間 | 10:00~17:30 |
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休館日 | 月曜、年末年始、メンテナンス日 |
料金 | MOMASコレクション:200円 |
公式サイト | https://pref.spec.ed.jp/momas/ |
※掲載の情報は2023年2月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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