東京大学農学部の入り口に設置された、ひと部屋だけのちいさな資料館。帰らぬ人となった飼い主を待ち続けた「忠犬ハチ公」のファンは、必見なようで必見じゃないような展示もあります…!!
ちいさなミュージアム
東京大学の農学部を中心とした弥生キャンパス。その農正門に立つのが農学資料館。

見ての通り、とっても小さな博物館。受付は不要、というか受付がありません。入館料はもちろん無料です。平日しか開いていないことが多い大学博物館ですが、ここは土日でもオープンしているため、立ち寄りやすさはあります。
今回は、同じく東京大学内にあり、土日でも開館している「健康と医学の博物館」と合わせて訪問しました!
ささやかな農学資料
内部は展示室が一部屋だけ。さらっと見るだけなら5分もかからないコンパクトな施設です。

山中湖へのわかさぎ導入に尽力した雨宮育作先生、ビタミン学研究の先駆者・鈴木梅太郎先生、森のノーベル賞と呼ばれる「マルクス・ヴァーレンベリ賞」などに関する展示がささやかにされています。

最大の展示物である巨大な木の輪切りは、屋久杉円板標本。最大直径は2m、樹齢は1600年と推定されています。

年輪毎に歴史的出来事も記されています。仏教伝来や阿蘇山の噴火、大化の改新など、古代の出来事も経てきたのですね。

和牛の歴史が記された國牛十圖
牛の姿が描かれた古い絵図。こちら國牛十圖(こくぎゅうじゅうず)。鎌倉時代後期に河東直麿によって成立、展示されているのは、江戸時代中期に藤貞幹が写したものであるそう。

丹波牛、大和牛、淡路牛など、日本各地の牛が描かれています。今でも全国的に名の知れた和牛、中世からその歴史は続いていたのですね。
ついつい和牛を見ると「味」や「脂の乗り」を考えてしまいますが、牛肉が食用として普及するのは明治以降のおはなし。それ以前の絵図であるため、記載されている内容は牛の性格や体型などにフォーカスしています。
筑紫牛のみ食用に関する記載がありますが、その内容は「元寇の際に元軍のいけにえ(食用)にされて数が減った」とのこと!まだ牛を食用として見ていない様子をうかがい知ることができます。

上野博士と忠犬ハチ公
渋谷駅の待ち合わせ場所として知られるハチ公像。そのモデルとなった忠犬ハチ公は東京帝国大学農学部教授である、上野英三郎博士の飼い犬でした。

ハチ公は博士が渋谷駅から帰って来ることを知っており、長期不在の期間も常に駅前で博士の帰りを待っていました。上野教授が急逝した後もハチ公は駅前に現れ、その命が尽きるまで10年間にも渡り帰らぬ博士を待ち続けていたのです。
資料館のそばには、ハチ公と上野英三郎博士像が建立されています。描かれているのは、長期不在から帰った際に、待っていたハチ公に驚きじゃれ合う博士とハチ公の姿。ほっこりする像です。

ハチ公の内臓標本
この資料館には、そんなハチ公の臓器ホルマリン漬けが展示されています。

左から、肝臓、心臓と肺、脾臓。もともとは獣医病理学研究室で保管されていましたが、2006年よりこの場所にて展示が行われるようになりました。
1935年3月8日にこの世を去ったハチ公。死後13時間が経過した後、東京帝国大学農学部獣医科病理細菌学教室にて解剖が行われました。当時の記録によると心臓に多数のフィラリアが寄生していたことから、死因はフィラリア症であったそうです。胃の中には竹串が4本みつかるも、これに起因する病気はなかったそう。
さらに、死後76年が経った2011年に顕微鏡で観察したところ、肺と心臓には癌も見られたそう。
先程の像でほっこりした気持ちが一気にリアルな現実に戻される展示内容。一般人でこの展示を楽しめる人は少ない気がしますが、ここは大学内。学生さんや医学研究者の方にはきっと何か気づきのある展示なのでしょうね…!
ちなみにハチ公像はココと渋谷駅以外にも存在しています。その場所というのは「秋田県大館市」「山形県鶴岡市」「三重県津市」「福島県飯舘村」。全部で合計6ヶ所になります。
「自由の女神像」や「モアイ像」、「モヤイ像」など、ゆるく全国の銅像めぐりをしているので、とっても気になります!
アクセスと営業情報
東京メトロ南北線の「東大前駅」より徒歩2分ほどの、「農正門」入ってすぐ右手にあります。
| 開館時間 | 9:00~17:00 |
|---|---|
| 休館日 | 年中無休 |
| 料金 | 無料 |
| 公式サイト | https://www.a.u-tokyo.ac.jp/shiryoukan/ |
※掲載の情報は2025年8月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。


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