まるで映画の世界のような昭和の暮らしが広がる小さな博物館。実際に人が暮らしていた民家をそのまま保存しているため、まるでタイムスリップしたような気持ちになれる場所です。昭和を描いたアニメ映画のモデルにもなり、その価値は年を経るごとに高まっています。
昭和の民家をそのまま展示
昭和のくらし博物館は昭和の一般庶民が暮らしていた邸宅を、中の家財道具ごと保存・展示したミュージアム。住宅街の中で、普通の民家に溶け込むように立っています。
昭和26年に建てられたというこの住宅。取り壊しが考えられた際、この家の長女であった小泉和子さんが、「こういう普通の家こそ、将来貴重になるから博物館として保存しよう」と提案。まわりは「こんな普通な家、誰も見に来ない」と反対したそうですが、それを押し切り博物館として開業しました。
当時は普通の家であったはずですが、今となってみると新鮮なものばかり。その価値は年々増していくことでしょう。
あふれる生活感
館内はドラマや映画で見かける昭和の家庭が広がっています。(※内部は撮影禁止)
カッカッカッと響く振り子時計の音、日めくりカレンダー、灰がたまった囲炉裏、氷を入れて使用する非電化製品の冷蔵庫、小さな傘の付いた電球、きしむ木の床、畳の香り・・・。お茶の間にはラジオが響き、食卓にはイワシや麦飯、豆腐の味噌汁が並んでいます。
入館者が訪れるたびに鳴り響く、引き戸が開くガラガラという音もなんともノスタルジック。にぎやかな朝ドラのシーンが浮かびます。
お外には、手押しポンプの井戸と、洗濯板の入ったタライが置かれています。今や全自動が普通となっている洗濯ですが、昔はこういった道具を使って手作業だったというのが驚きです。水が冷たい冬は特にハードですよね。
平成に増設されたという部分には、なんだ懐かしい縁側も作られています。昭和をテーマにした雑誌なども置いあり、お庭を眺めてのんびり過ごすことも可能。ふと思ったのですが、ここは夏に訪問したら凄く良いのではないでしょうか?縁側に腰かけてセミの声に耳を傾けてみると、強烈なノスタルジーを感じられそうです。
日常生活だけでなく、戦時中の暮らしを紹介したパネルや、防毒マスクなど、戦争に関わる展示も豊富でした。昔を懐かしむだけでなく、学びも多い博物館です。
映画の聖地に
映画「この世界の片隅に」は、戦時中の日本を舞台にしたアニメ映画。昭和19年に軍港の町・呉に嫁いだ北条すずの日常生活を描いた作品で、2016年に公開されました。
昭和の暮らしが丁寧に描かれた作品ですが、その参考となったのがこちらの博物館。ここでは、昭和の暮らしぶりを伝える「昭和くらしの学校」を開いて、作画担当の浦谷千恵さんや片淵須直監督に家事仕事を教えたりしていたそう。
館内の一室では原画展も行われており、この博物館をモデルに描いた家屋の様子を感じ取ることができます。
さらに、2021年に公開された映画「スズさん~昭和の家事と家族の物語~」では、この博物館である小泉家が舞台となっています。館長である小泉和子さんのお母さん、スズさんの炊事・洗濯・裁縫といった家事の様子、戦争や震災を乗り越えた暮らしぶりが映し出された作品だそうです。
ギャラリーも併設
入館券に+200円でギャラリーを見学することができます。日本の洋画家である吉井忠(よしいただし)さんの作品を展示した「吉井忠の部屋」。
こちらは小泉和子さんが絵を勉強していた際、師と仰いでいた人物。サルバドール・ダリのようなシュールリアリズムに傾倒していましたが、日本全国を歩いて風土や文化を描くようになります。
眼に力の宿る人物画や、旅情あふれる風景画を中心に数点の絵が飾られていました。東北出身の方で、稚内や下北などの風景を描いた作品も多くそろっていました。
アクセスと営業情報
東急池上線の久が原駅より徒歩8分、または東急多摩川線の下丸子駅より徒歩8分。道はシンプルですが、案内板などは少ないため、地図を確認しながら進んだ方が良いです。
また、道路に面しておらず、細い路地の先にあります。白いノボリと電柱の看板が目印なので、見過ごさないようにご注意ください!
開館時間 | 10:00~17:00 |
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休館日 | 月~木曜、9月上旬、年末年始 |
料金 | 500円 |
公式サイト | http://www.showanokurashi.com/ |
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