想いが詰まった1,200体の石像と3つの鐘『愛宕念仏寺』(嵯峨野/嵐山)

京都府

嵐山の奥地にひっそりと佇む愛宕(おたぎ)念仏寺。境内にずらりと並ぶのは、表情豊かな1,200体もの羅漢像たち。どこかコミカルなハンドメイドの石像には、お寺の復興をかけた想いが詰まっています。

拝観時間:8:00~16:30
料金:300円
訪問日:2020/3/29(日)

嵯峨野めぐりのスタート地点

愛宕(おたぎ)念仏寺の最寄り駅は阪急嵐山線・嵐山駅、もしくは嵐電・嵐山駅。そこから京都バスに乗ること18分、バス停《愛宕寺前》で下車すぐ。本数はそれほど多くはありませんが、嵐山駅周辺はお店やカフェなどがたくさんあるため、時間調整はそれほど苦にならないかと思います。

バスで愛宕念仏寺までアクセスして、ここから徒歩で下りながら化野念仏寺や祇王寺、天龍寺など各寺社を拝観していく「嵯峨野めぐり」は嵐山を満喫できる観光ルートです。

・JR京都駅からもバスが出ていますが、本数が少なく観光利用はむずかしそう。
・駅からレンタサイクルで行くという方法もありますが、上り坂が続くためかなりハード。

圧巻の千二百羅漢

愛宕念仏寺は別名「千二百羅漢の寺」境内には1,200体の石でできた羅漢像が所せましと並んでいます。

個性豊かな表情や動きをする羅漢像に、一つとして同じものはありません。じっくり観察していると、色々な発見がありそうです。

コケをまとった姿は風流ですが、どこかコミカルさも。身の回りの知人やキャラクターなどに似ている石像を探すのも楽しいです。

なぜこんなにも石像が?

羅漢の中でもお釈迦様に付き添った500人の弟子のことを「五百羅漢」といいます。500体の羅漢像が並ぶ五百羅漢寺は日本各地で見ることができますが、1,200体というのははじめて見かけました。

なぜ、こんなにもたくさんの羅漢像がいるのでしょうか?

もともと東山に会ったというこちらのお寺。1922年にこの嵯峨野へ移転し復興を試みるも、戦時中に住職不在の無住寺となり、台風被害などで廃寺となっていました。

1955年に仏像彫刻家である西村公朝が住職となり復興がはじまります。その際「境内を羅漢の石像でいっぱいにしたい」と発願したところ、それに賛同し一般の参拝者が自信で彫った羅漢像を奉納する「昭和の羅漢彫り」がスタート。希望者は殺到し、たった1年で500体もの羅漢像が集まります。
その後も希望者は減らず、700体を追加で募集したところ、わずか10年で合計1,200体に膨れ上がりました。

石像を後ろから見てみると、製作者の名前が彫られています。

ひときわユニークな石像

一般の方が作成した羅漢様は、小道具を持っていたり、独特の表情をしていたりと、かなり個性的。そんなオリジナリティあふれる作品の中から、私が気になったものをご紹介。

フクロウをかかえた羅漢様。製作者はきっとフクロウが好きな方だったのでしょう。

尺八を吹く羅漢様。きっと製作者の方は尺八奏者だったのでしょうね。2体並んでおり、セッションしているようです。

グローブをはめたボクサー羅漢様。製作者はきっとボクサー、もしくはボクシングが好きな方だったのでは。右アッパーを決める姿は、どことなくマイク・タイソンに似てるような気もします。

まさかの逆立ち羅漢様。これはもともと逆立ちする前提で造られたのでしょうか。足の裏が平なので、この上にもう一体乗せることもできそうな気がします。

地面に埋まっている羅漢様。これって、もししてただの石だったのでは・・・!頭に突起のような小石が並んでおり、ダースモール、もしくはドドリアさんみたいです。

一番印象的だったのは、こちらの平面羅漢様。まさかの2次元フェイスです。しれっと羅漢様の中に混ざっていますが、明らかに異彩を放っています。まるで変装して紛れ込んだけど、すぐバレてしまうメタモンみたいです。

トライアングルの鐘

愛宕念仏寺の鐘は少々特殊で、3つの鐘が吊るされています。この「三宝の鐘」も公朝さんによる作品で、「仏・法・僧」を表しているそう。

撞くための木も円形をしているため、どの角度からでも叩くことができます。とはいえ、3角形に配置された鐘を撞こうとすると、力の振り方が意外と難しい!3つ連続でキレイに鳴らすのはなかなか技術が要りそうです。

鳴らしてみるとそれぞれ音階が違うため反響が独特。3つの音が重なり合い、不思議なハーモニーを奏でます。

想いがつまった「ふれ愛」

ふれ愛観音堂に安置されている金色の観音様「ふれ愛観音」。”ふれあい”という名が示す通り、おさわり自由な仏像です。この仏像には、公朝さんのあたたかい想いが込められています。

ある日、TV局より目の不自由な女性が仏像にふれる映像を撮りたいとの申し出があったが、基本的に仏像はふれることが禁じられているため、どの寺からもその許可が下りない・・・そんな出来事が起こります。

公朝さんが取り持ち、仁和寺がこれを許諾、無事に撮影は行われました。そのとき、目が不自由な人でも自由に触って感じることができる仏像を造ろうという考えが生まれ、造られたのがこのふれ愛観音。

観音堂の中には、点字の説明文も設置されています。


このあとは、しばらく歩いて化野念仏寺を目指します!

コメント

  1. […] 今回は化野念仏寺のさらに奥にある愛宕(おたぎ)念仏寺までバスで移動、そこから歩いて他のスポットと合わせてめぐりながら駅へもどる「嵯峨野めぐり」コースでまわりました。 […]

  2. […] 実際に触ることができる仏像・ふれあい観音も安置されています。あれ、このコンセプトはどこかで見たことがあるような・・・。あ!京都嵯峨野の愛宕念仏寺で見た仏様だ!よく見ると、愛宕念仏寺の住職である西村公朝という名が記されておりビンゴでした。 […]

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