西ノ島 Part 3 イカにまつわる伝説が残る由良比女神社(西ノ島)

隠岐諸島

浦郷にある由良比女神社は、古来より人々に信仰されてきた歴史ある神社。この神社にはイカにまつわる少しユニークな伝説が残されております。目の前の入り江には、実際にイカが押し寄せるという不思議な現象が起こっていたとの報告も・・・!

訪問日:2022/5/2(月)

イカ推しな西ノ島町

国賀めぐり定期観光バスに乗り、民宿にチェックインを済ませて時刻は17:30。夕食は19:00にお願いしたのでけっこう時間があります。まだ辺りも明るいので、少し民宿のまわりを散歩することにしました!前回「今日はもうゆっくり休もう。」とか言っていたのに、やっぱり歩きたくなってしまいました。

浦郷の中心とも呼べるのが浦郷港の観光交流センター。国賀めぐり観光船や観光バスの発着場なので、観光客も御用達です。食堂や漁協の直売所、貝がら細工体験なども行っているそうです。

西ノ島はイカ推しな島。特産品やマンホールなど、島内では随所にイカの姿を見ることができます。観光交流センターの前にはイカの顔はめパネルもありますが、顔を出す穴の位置については議論の余地がありそうです。

夕方17:00過ぎだったのですが、商店は全て閉店、飲食店も夜は予約のみのようでお店は全て終了していました。この島は広いため徒歩で行ける場所は限界があります。そろそろ宿に戻ろうかな、と思ったとき由良比女神社ならば浦郷港から徒歩で行けることに気がつきました!

海辺に立つ由良比女神社

浦郷の港から10分ほど西へ進むと、道路に面した鳥居が見えてきます。こちらが由良比女神社。

境内を進むと拝殿と本殿。自然に包まれるような姿が荘厳です。御祭神は由良比女命という神様ですが、全国でこの神社でしか祀られていないそうです。

隠岐国一宮に定められていた神社で、海上守護神として信仰されてきました。かつては海外へ使者を送る際や外患を防ぐための祈祷が行われていたそう。
※ちなみに島後(隠岐の島町)にある水若酢命神社も隠岐国一宮と伝えられています。

島から戻った後に知ったのですが、神社の社殿や燈籠にはイカの彫刻が施されているそうです。せっかく訪問したのだから、もっとよく見ておけばよかったと反省しております。訪問される方は、私の分までじっくり観察してみてください!

不思議なイカ寄せの浜

由良比女神社の目の前に広がる静かな入り江。ここはイカ寄せの浜と呼ばれています。

この入り江には、毎年10月〜2月にかけて、たくさんのイカが集まってきていたそう。多いときには一晩で20,000匹も浜辺に打ち上がっていたとのこと。海からイカがいなくなってしまうんじゃないかと不安になる数です。

打ち上がったイカは「捕る」ではなく、「拾う」といった状態で、全盛期にはイカ拾いのための小屋がたくさん並んでいたようです。よく見るとイカ拾いの人の姿をイメージした、香ばしいパネルも並んでいます。

残念ながら、近年ではイカ寄せはもう見られなくなってしまったようです。

イカにまつわる伝説

由良比女神社にはイカに関わる伝説が多く残されています。

御祭神が海を渡ってこの地に来る際、海面に手を浸したところイカが噛み付いてきた。その非礼を詫びるために、イカが集まるようになった。

御祭神がイカを手に持って現れた。

もともとこの神社は知夫里島のイカが寄る「イカ浜」にあったが、この地に移された。すると、イカ浜にはイカが寄らなくなった。

御祭神が出雲の国から帰ってくる11月29日の夜にイカが寄る。

この中で気になるのは③の遷座について。実際にイカ浜という場所は知夫里島にあるようですが、なぜ移す必要があったのでしょうか。調べてもこれについての記載は全然見つかりません。

Wikipediaには「西ノ島の住人がイカ寄せを羨ましく思い御神体を盗んだとも言われている」といった記載があります。もし本当ならば、祟りを恐れたりしなかったのか、また島同士の争いにならなかったのかといった疑問が残る内容です。

しかし、遷座の理由が明記されていない、ということは何か大っぴらにしにくい理由だったのではということも推測できます。そう考えると盗難説は妙に辻褄が合ってしまうような気も・・・。真相は不明です。

どんなイカが来るのか

イカ寄せの浜にはどんなイカがやってくるのでしょうか?

島の名産であり、イカ寄せ伝説にちなんで名付けられた活きイカパック『伝説のイカ』ケンサキイカ(6〜8月)、ブドウイカ(※ケンサキイカの亜種)(9〜11月)、ヤリイカ(1〜3月)とのこと。この3種が寄せられてきた可能性は高いです。

※この「伝説のイカ」開発には、困難のストーリーがあったようです。気になる方はコチラ

由良比女神社は「するめ大明神」と呼ばれていたこともあるようなので、スルメイカの可能性もあります。日本海側のスルメイカは、夏・秋・冬の3つの群に分けることができ、そのうち秋生まれは9〜11月にかけて東シナ海北部から日本海南西部までの沿海にて発生するそう。秋のイカ寄せはスルメイカっぽいですね。

案内板によると近年では大型のソデイカ(ドウタレイカ)がやってくることもあるそう。ただし、この種類は基本的にペアでやってくるため、大量のイカ寄せとはちょっと違うタイプのようです。

おそらく最も最近となるイカ寄せは2006年2月7日に起こっています。

【トピックス】イカ寄せの浜にイカが寄った | 西ノ島町|島根県隠岐郡

この時の写真に映るイカ、白っぽいのでケンサキイカかと思ったのですが、季節的に違うような気もします。気になっていたところ、さきほどの「伝説のイカ」のページ下部に「平成18年2月にスルメイカの大群が浜に押し寄せた」との記載が!ということで、スルメイカが寄せられていたのは確定しました!

他の種類が寄せられてきた可能性は否定できませんが、記録を見つけることができませんでした・・・。

イカはなぜやってくるのか

伝説はロマンがありますが、実際にイカが集まっていた実績がある以上は科学的な視点もほしいところ。

なぜこの入り江にイカが集まるのでしょうか?

まず、イカが集まる要因として考えられるのが海流。隠岐は対馬海流が流れており、イカたちはそれに乗って島の周囲にやってくるそう。イカで有名な佐賀県の呼子や北海道の函館でイカが捕れるのも同じ理由ですね。

そしてイカ寄せ浜の地形。海流に乗って泳いでいたイカの群れが、そのまま湾に入りイカ寄せの浜へ。急に浅くなることからそのまま打ち上がるというのがイカ寄せの仕組みのようです。いわば天然のトラップですね。

と、それっぽく書いてみましたが、これだとイカに限定されず他の生物が打ち上げられてもおかしくはありません。イカならではの理由として考えられるのが、イカの泳ぎ方でしょうか。以前水族館にて「水槽にぶつかって弱ってしまうためイカの飼育は難しい」という記載を見かけたことがあります。イカはサカナとは異なり吸い込んだ水を吐き出して進むためスピードが早く急な方向転換が苦手。入江に入ったら最後、浜辺に打ち上がるまで進んでしまうのかもしれません。

また光に関する習性も考えられます。イカ釣り船といえば、夜の海で燦燦と輝く集魚灯を用いて行うイメージがあるので、光を好む性質がありこの浜辺の何か光に集まってきているのかも……と思ったのですが、実はイカは明るいところを嫌う生き物ともいわれています。集魚灯を焚く理由も、夜間に暗くなって水面付近まで上がってきたイカに光を当て、その光を避けて船底へと逃れたイカを捕獲するためであるそう。

実際のところイカの光に関する性質ははっきりとわかっておらず、水平方向の光に集まる、上方向からの光にとどまる、全方向からの光を嫌うなど、単純に「光が嫌い」と言い切ってしまうわけにもいかないようです。

さて、イカ寄せ発生の原因を突き止めようとしていたはずが、イカの習性という壁にぶち当たってしまいました。というわけで、イカの研究が進むか、新たなイカ寄せが発生するまでこの話は置いておきたいと思います。

なお、イカ寄せが近年見られなくなった要因の一つとして考えられているのが、入り江にたどり着く前に捕獲されてしまうということ。漁業の発達と考えると人類の進歩を感じますが、特異なイカ寄せという光景が見られなくなるのは少し寂しい気もしますね。

一度くらいはリアルに、もしくは動画でも良いから見てみたいものです。

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