奥深い盆栽の世界を気軽に楽しめる『大宮盆栽美術館』(さいたま市)

埼玉県

何となく取っつきにくく渋いイメージの盆栽。高価なものを見てもよくわからないかも…そんな方におすすめなのがこちらの盆栽美術館!形や樹木の種類など、様々な見方がわかりやすく展示されているため知識が無くても盆栽の凄さを感じることができます!

筆者は盆栽については完全に素人です。内容や写真の撮り方など、至らない点は多々あると思いますが、有識者の方はあたたかい目で見てもらえると幸いです・・・!

訪問日:2022/1/23(日)

盆栽専門のミュージアム

埼玉県さいたま市にある大宮盆栽美術館。2010年にオープンしたこちらの美術館は、世界初の公立盆栽美術館なのです。

館内に一歩足を踏み入れると、「季節の一鉢」のお出迎え。1月に訪問したところ、立派な花を咲かせるツバキの盆栽が飾られていました。

展示は屋内庭園に分かれております。まず屋内にて解説を見たあとに数多くの盆栽が展示された庭園へと進むという順路になっています。

屋内展示では写真付きのわかりやすいパネルが続きます。「正面を見極める」「下から見上げる」といった盆栽鑑賞の仕方、「根張り」「枝ぶり」「葉」といった鑑賞ポイントなどもばっちり解説されています。

(※屋内展示は撮影禁止でした。)

名木立ち並ぶ庭園

さぁ、盆栽鑑賞の準備が整ったのでいざ庭園へ!池泉が造られた和風の庭園に、盆栽が植えられた鉢がずらりと並んでいます。常に約60点の作品が展示されており、サクラや紅葉など季節によって姿を変えるものも。

立ち並ぶ盆栽は一つ一つが巨大樹のような風格。まるで深い森を歩いているような、そんな気持ちにさせてくれます。

園内では盆美eガイドというスマホサイトによる案内があります。これは、各盆栽に記されたコードを入力するだけで、詳しい解説を聞くことができるというもの。音声で聞くこともできるので、スマホ用のイヤホンを持参するのがおすすめです!

王道の松柏盆栽

盆栽の代表格とされる松や真柏(ビャクシン)の盆栽を「松柏(しょうはく)盆栽」と呼ぶそう。盆栽ときいて真っ先にイメージが浮かぶ、いわば王道の盆栽ですね!

立派な『黒松』。樹高は125cmにも及びます。推定樹齢は250年といわれており、盆栽愛好家として知られる大隈重信が愛蔵していたとも伝わっています。

推定樹齢350年の『五葉松「青龍」』。まるで龍のようにうねる幹が凄い!歳月を経て幹や枝が枯れて白くなった部分をシャリ(舎利)と呼ぶのですが、まるで龍の腹のようです。五葉松ならではの丸っこい葉が雲に見えてきました。

こちらの『真柏「北斎」』はシャリがとにかく見事。流れるように伸びる枝は、まるで白波のような姿。北斎という名も神奈川沖浪裏のようなイメージから付けられたのではないでしょうか。

推定樹齢500年といわれる『五葉松「千代の松」』。高さは160cmと盆栽美術館で最大級の盆栽です。

ちょっとまってください、樹齢が凄すぎませんか?

さらりと展示されていますが、数百年という人間よりもずっと長生きな盆栽。最初に手掛けた人はもうこの世にはいないと思うと、通常の美術作品とは異なる継承されていく奥深さを感じます。そりゃ、野球ボール飛んできたら怒りますよね・・・。

なお、こちらの『真柏「寿雲」』推定樹齢800年!鎌倉時代の人が造り出したということになりますね。白くなったシャリは流れるような造形となっており、油絵の具を塗ったかのよう。

バリエーション豊かな盆栽

四季によって姿を変えるモミジやカエデで造り上げる盆栽を雑木盆栽(葉物盆栽)と呼ぶそう。また、花を付ける樹木をメインにした場合は花物盆栽とも呼ぶそうです。いずれも松柏盆栽に比べると力強さは控えめですが、それぞれ色々な楽しみ方ができます。

推定樹齢160年の『梅もどき』。葉がウメに似ているためこのような名がついていますが、ウメではありません。細かくぶわっと広がる枝ぶりと重厚感が太い幹が特徴的。よく見ると根の中に石を抱えているところに力強さも感じ取れます。

果実を楽しめるものを実物盆栽と呼びますが、『花梨』は代表的な種類。花に加えて黄色い果実も楽しめますが、時期は花が4~5月・実が10~11月頃。1月は葉も全て落ちて枝のみの姿となっています。少し寂しく思えますが、まだら模様の独特な幹がよく見えます。

幹がぽっかりと空いており古木の風格を漂わせるます『野梅』。枝には小さな蕾がたっぷりと付いていたので、もう少ししたら花が咲きそうです。ちなみに野梅の読み方は「ヤバイ」・・・!

躍動感あふれる樹形

樹木の種類に加えて、盆栽には樹木の形状・形態を指す「樹形」というものがあります。

鉢からこぼれるような『五葉松「白糸の滝」』。この垂れ下がるような姿は、樹木が崖から垂れる様子をイメージした「懸崖(けんがい)」と呼ばれる樹形です。

何本もの五葉松が植えられているこちらは「寄せ植え」と呼ばれる形態。厳しい環境の中で、身を寄せ合うようにして生きる、自然の樹木の姿を再現しているそうです。これはもう鉢に作られた森です。

この山もみじのように根の部分が平たく広がった姿を「盤根」と呼びます。この盆栽の名は「武蔵ヶ丘」。たしかに、なだらかな丘のようにも見えますね。

合わせて盆栽村めぐりも

公立の美術館が設立されたことが示す通り、大宮は「盆栽の街」。でも、なぜ盆栽の街なのでしょうか?そのきっかけとなったのが1925年の関東大震災。被災した都内の盆栽業者が大宮の地に移住し、盆栽村が作り上げられました。

盆栽村が発足した当時、そこに住むには「盆栽を10鉢以上持つ」「門戸を開放し誰でも見られるようにする」「2階はつくらない」といったユニークなルールがあったそうです。

盆栽村は盆栽美術館のすぐ近くにあり、現在でもいくつかの盆栽園が営まれております。見学が可能なところもあり、盆栽美術館で盆栽を学んだ後にさらなる盆栽めぐりが楽しめます。私が巡った際は、藤樹園・蔓青園・清香園の3ヶ所が予約なしでも見学可能でした。(※盆栽園の内部は基本的に写真撮影禁止)

盆栽村にはさいたま市立漫画会館もあります。日本で最初の漫画家といわれる北沢楽天の旧宅跡に建てられた記念館で、貴重な資料や人物像を描いたパネルなどが展示されています。盆栽村散策で合わせて立ち寄るのもおすすめです。

アクセスと営業情報

宇都宮線の土呂駅東口から徒歩5分、東武野田線(アーバンパークライン)の大宮公園駅から徒歩10分。駐車場は2時間まで無料で利用できます。

開館時間 9:00~16:30 ※11~2月は9:00~16:00
休館日 木曜
料金 310円
公式サイト https://www.bonsai-art-museum.jp/ja/

※掲載の情報は2022年1月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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