鶴岡八幡宮のすぐ近くに立つアートミュージアム。近代以降の洋画や日本画を中心とした、コレクション展を開催しています。個性的な屋外作品が並ぶ彫刻庭園も見どころです。
歴史ある近代美術館
神奈川県立近代美術館は、神奈川県にある日本最古の公立近代美術館。現在は「葉山館」と「鎌倉別館」という2つの建物に分かれています。もともとは1951年に鶴岡八幡宮境内に開館。のちに鎌倉館となりますが、2016年(平成28年)3月31日に土地の契約が満了となり閉館。以後は1984年開館の鎌倉別館と2003年開館の葉山館が残ります。なお、鶴岡八幡宮の鎌倉館はその後取り壊し予定でしたが、建物の価値から保存が決定。耐震補強工事がなされ、「鎌倉文華館鶴岡ミュージアム」へと姿を変えました。
そんな鎌倉別館ですが、開館35周年を迎えた2019年10月にリニューアル・オープン。壁面や照明がアップデートされ、カフェスペースも増設されました。
屋外作品が並ぶ彫刻庭園
さて、建物に入る前に見逃せないのが屋外作品。入口前に広がるお庭は様々なアートが並ぶ彫刻庭園となっています。ここは入館料不要、無料で見学できるのです。
来館者を真っ先に出迎えるのは人型の彫刻作品《犬の唄》by 柳原義達。女性の彫刻とはイメージが重ならない不思議なタイトルが付けられています。東京国立近代美術館にも同名の作品が収蔵されており、そちらの解説を見ると「普仏戦争に敗れたフランスの抵抗精神を歌ったシャンソン」に由来しているそうです。
《SWING 86-01》by 渡辺豊重は白赤緑という鮮やかなカラーリング。アルファベットの小文字のような不思議なデザインで、2つのパーツが寄り添っています。
アルミニウムでできた不思議な作品《カゲボウシ》by 井上玲子。「この便利グッズは何に使うでしょうか」なんていわれたら、考え込んでしまいそうな造形です。
その名前から、もしかして影の方に意味があるのかも・・・。そう思い作品から伸びる影の部分を見ると、白い花を咲かせるサザンカの垣根にうねるようなシルエットが。時間帯によって変わる影こそが本体と考えると、動的な作品に感じられてきます。
光を反射するメタリックな作品は《時空》by 多田美波。まるで光線のような躍動感で、周囲の風景とともに他の彫刻作品を映し出しています。
屋根のあるポイントに置かれている《静思空間》by 眞板雅文。円形のプレートを突き破る円錐、そしてその中央を抜ける道、まわりに敷かれた砂利。1年のうちある時期だけこの道を太陽の光が抜ける、そんな古代の信仰を感じさせる作品でした。
時期で変わるコレクション展
さてさて、そろそろ館内へ。外にある受付でチケットを購入したあとは、2階にある展示室へと向かいます。
この美術館には常設展示はなく、おもに所蔵作品による企画展示を行っています。訪問する時期によって展示作品が変わるので、事前に公式ホームページで確認してから、興味のある展覧会の開催時期に行くのがおすすめです。
主なコレクションは、大正〜昭和初期に活躍した洋画家・岸田劉生の代表作である麗子像のひとつ《童女図(麗子立像)》、《鮭》で知られる明治初期の洋画家・高橋由一の《江の島図》など、さらには北大路魯山人の《信楽灰被大壺》といった陶芸作品も収蔵しています。
新収蔵作品展2015〜2019
今回訪問した際は、以下のコレクション展を開催していました。
新収蔵作品展2015~2019
2015年度から2019年度に収蔵された作品から、収蔵後未公開の油彩画、彫刻、版画など約70点を展覧した新収蔵作品展。小林ドンゲさんの妖艶な銅版画作品、木下晋さんの《光の合掌(桜井哲夫)》《火葬場の花》などのショッキングな油絵など、印象に残る作品が多く、規模は小さめながらも見応えのある展覧会。
さきほどの屋外彫刻で見かけた井上玲子さんの彫刻作品《わたしと私》も展示されていました。
作品の解説はありませんが、作者の解説はあるためとっつきやすいです。展示室は1部屋だけなので、じっくり見ても30分ほど。寺社めぐりの合間に立ち寄るのにもおすすめな美術館でした!
アクセスと営業情報
JR横須賀線・江ノ島電鉄線の「鎌倉」駅より徒歩15分、
開館時間 | 9:30~17:00 |
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休館日 | 月曜、年末年始、展示替期間 |
料金 | コレクション展:250円 |
公式サイト | https://www.moma.pref.kanagawa.jp/annex/ |
※掲載の情報は2025年1月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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