あの工作船がまるごと展示『海上保安資料館横浜館』(横浜市)

神奈川県

2001年におこった「九州南西海域工作船事件」。その事件を引き起こした工作船の実物を展示しているという非常にインパクトのある資料館。館内に鎮座する工作船は完全に廃船の姿。いったいどのような経緯でこの場所に置かれることになったのでしょうか?

訪問日:2023/1/14(土) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

海保の資料館

イベントや様々なショップが入り、常に人々で賑わう赤レンガ倉庫。その裏には海上保安庁の基地である横浜海上防災基地があります。

ここには海上保安資料館横浜館が併設されており、一般人でも見学可能。予約などは不要、さらに入館料は無料と気軽に訪ねやすい資料館です。マニアックなテーマなのでほとんど人はいないかなと思いきや、来館者は多数。赤レンガ倉庫に訪れた人がふらっと入って行っている印象です。

ここは周辺海域の現状と海上警備の重要性を伝えるために2004年12月にオープンした資料館。いったいどんなものが展示されているのでしょうか?

圧巻の工作船展示

館内に鎮座するのは巨大な船。錆びついてぼろぼろになった姿から、廃船の香りが漂います。

こちらはなんと北朝鮮の工作船!!2001年におきた「九州南西海域工作船事件」の船を引き揚げ、展示しているのです。

工作船を中心とした資料館であり、様々な角度からじっくりと見学することができます。

順路を進んで行くと、上から見られるポイントも。想像していたよりもずっと大きな姿についつい見とれてしまいます。

よく見ると、弾痕と思われる穴も多数見ることができます。九州南西海域工作船事件とは、いったいどのような事件だったのでしょうか・・・?

九州南西海域工作船事件

それは20年以上も前となる2001年12月22日、九州南西海域の日本の排他的経済水域に不審船が侵入。

不審船は海上保安庁の停船命令にも従わず逃走。巡視船が強行接舷を試みたところ、不審船は自動小銃で攻撃。巡視船も正当防衛射撃を行い激しい銃撃戦が繰り広げられます。

不審船は突如、自爆と見られる爆発を起こし沈没しました。沈没した不審船を引き揚げたところ、この船は北朝鮮の工作船であることが明らかになりました。

スクリーンでは、実際の映像を交えたプログラムが上映。緊迫感のある映像に思わず息を飲みます。

偽装工作の跡

この工作船は全長29.68m、44トンの長漁3705という船。沈没前の姿を再現した模型も展示されており、漁船に偽装していた様子を知ることができます。

こちらのMZと書かれた木の板。MZは宮崎県に登録された漁船を示すコード。巧妙な偽装が行われていたことを表します。

船尾側から船内の一部も見ることができます。大きな空洞となっており、小型船艇が格納できるように設計されていたようです。

隣には、格納されていた小型の船も展示されています。繊維強化プラスチックでできており、小型の漁船風ですがかなりのスピードで進むことができるそう。

ところで、この工作船の目的はいったい何だったのでしょうか?それは、沈没した船から回収された様々な物品から見えてきます。

回収された品々

引き揚げられた工作船からは多数の武器が見つかります。ロケットランチャーや自動小銃、無反動砲や地対空ミサイルまで。全て北朝鮮を示すマークが記されていたそうです。

こちらのスイッチ、なんと自爆スイッチ!ハングル文字で自爆と書かれているそう。最後、こちらを押して沈没していったと考えられています。

ショーケースに並んでいるのは様々な物品。九州の海岸線を記した地図、日本製の携帯電話、辞書などなど。電話からは、都内の暴力団関係者へ連絡をとっていたことも。これらの証拠によると、工作船の目的は覚せい剤の運搬を行っていたと考えられています。

こちらはプロペラがついた水中スクーター。どうやって舵を切るのか、どうやって乗るのでしょうか気になりますが、先頭に小さなハンドル、後ろに足掛けがあるので、バイクのようにまたがって乗るのでしょうか。

先ほどの小型船艇やこちらのスクーター、さらには潜水用具なども備えていたので、不法出入国への関与も目的であったと考えられています。

工作船そのものに加えて、改修された武器や工作道具など実物の展示はとにかく生々しい。国防について改めて考えさせられる施設でした。

アクセスと営業情報

みなとみらい線の馬車道駅または日本大通り駅から徒歩8分、JR線の桜木町駅から徒歩17分。前述の通り、赤レンガ倉庫の奥にあるので合わせての訪問がおすすめです。

開館時間 10:00~17:00
休館日 月曜、年末年始
料金 無料
公式サイト https://www.kaiho.mlit.go.jp/03kanku/kouhou/jcgm_yokohama/

※掲載の情報は2023年1月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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