豪華客船に描かれた謎の紋章と飾り毛布『氷川丸』(横浜市)

神奈川県

豪華客船であったり病院船であったりと様々な活躍をしていた氷川丸。役目を終えた現在は横浜で余生を過ごしています。優雅な客室や無骨な機関室など隅々まで見学することができます。

訪問日:2018/10/14(日) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

横浜のミュージアムシップ

山下公園のシーバス乗り場の隣に停泊する氷川丸。日本郵船によって造られた貨客船で、1930年に竣工しました。

氷川丸は、日本からアメリカのシアトルへと繋がる「シアトル航路」を運行していた貨客船。シアトル港では「HIKAWAMARU(ハイカワマル)」の愛称で親しまれていたそう。

1960年に役目を終えると引退へ。現在は内部に入ることができるミュージアムシップとなっています。港に係留された姿は、今にも出港しそうな出で立ち。

豪華仕様の船内

内装はとにかく豪華!「一等食堂」は、アール・デコの装飾や高い天井で高級ホテルのような仕上がりです。

こちらは「一等客室」。冷温水の出る洗面台や空調設備つきという、船とは思えないほど豪華な個室です。

「一等喫煙室」も優雅。世界中の上級品なお酒やタバコがそろっており、それらを嗜みながらカードゲームを楽しむ社交場であったそう。ちなみに、もちろんですが「禁煙」です。

一流のサービスでの暮らし

氷川丸の一流のサービスは話題となり、チャールズチャップリンや秩父宮夫妻も乗船されたそうです。そんなサービス精神が描かれた絵本が置いてありました。

中には、給仕の身だしなみや、徹底した心構えなどが書かれています。「料理は芸術作品」「お客様の好みを覚える」など、プロ意識の高さを知ることができます。

一等船客のくつろぎの一日なる展示を見つけました。そこに書かれていたのは「デッキでゴルフ」「ビーフスープ」「デッキで輪投げ」「昼寝2時間」という、現代社会では想像もつかないような過ごし方です。

目につくのは飾り毛布

客室をよく見ると、毛布が不思議なカタチに折られています。これは「飾り毛布」。給仕スタッフが乗客を楽しませるために折った毛布で、またの名を花毛布ともいいます。

日本の客船ならではのサービスとして、当時はとても人気があったそう。折り紙文化の根付く日本らしさがあふれた粋なサービスですね!

その折り方の種類ですが、名前が付いているものだけで70種類以上もあるそう。Wikipediaによると、花だけでなく、マンタや金魚といった動物や観音菩薩など非常に多岐に渡るそう。

現在でも、「フェリーあまみ」や「マルエーフェリー」などのいくつかのフェリーで飾り毛布を見ることができるそう。ぜひ生で見てみたいけど、当たり前ですがどれも特等室や1等室のみ。2等しか利用したことがない私にとっては、出会うのは難しそうです。

迫力ある機関室

優雅な客室を抜け、深い階段を下るとそこは機関室。何層にも重なった吹き抜けの空間には、様々な機械がびっしりと並んでいます。

現役時代のままのエンジンや、8つの気筒で構成されるディーゼルエンジンなど、巨体を動かす心臓部分をじっくり見学できます。

ラグジュアリーな客室からはうってかわって、無骨な雰囲気。少しだけスチームパンクの香りもする空間です。かくれんぼとかしたらとても楽しそうな気がします。

謎の紋章

階段の手すりには謎の紋章を見つけました。洋風な船内の装飾に不釣り合いな、もくもくとした和風なデザイン。

こちらは「八雲」という紋章で氷川神社の神紋です。

そもそも氷川丸の名前の由来は大宮氷川神社から来ているのです。ブリッジには神棚もあり、氷川神社の神を勧進しています。


船内を見学し終えるとすっかり氷川丸=豪華客船のイメージがつきました。そんな氷川丸ですが、第二次世界大戦中は「海軍特設病院船」として活躍。終戦後も解体されることなく、「引き上げ」の役割を担い、時代の波に上手く乗りながら、今日まで生き残りました。

今となっては戦前より存在する唯一の貨客船。産業遺産として重要文化財にも指定されているのです。きっと多くの人に愛された船なのでしょうね。

アクセスと営業情報

みなとみらい線の「元町・中華街駅」4番出口より徒歩3分、JR根岸線「石川町駅」より徒歩15分。

開館時間 10:00~17:00
休館日 月曜 ※祝日の場合は翌日
料金 300円
公式サイト https://hikawamaru.nyk.com/

※掲載の情報は2024年3月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

コメント

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