静寂の枯山水庭園とテナガザルの襖絵『金地院』(京都市左京区)

京都府

南禅寺の塔頭であり、江戸幕府と縁が深い寺院。派手さはありませんが、小堀遠州による庭園を静かに楽しむことができるお寺です。特別拝観に参加すると、茶室「八窓の席」や長谷川等伯のサルの襖絵も見ることができます。

訪問日:2025/3/29(土) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

以心崇伝ゆかりの寺

金地院(こんちいん)は臨済宗南禅寺派の寺院であり、南禅寺の塔頭(たっちゅう)寺院。南禅寺周辺は観光客で大賑わいですが、ここはとっても静かな雰囲気。

ここは室町幕府4代将軍・足利義持が応永年間(1394年~1427年)に創建した寺院。その後以心崇伝(いしんすうでん)が南禅寺の住待となった際に、自坊として現在地に移転、再興しました。

この以心崇伝という僧は、徳川家康の側近として活躍した人物であり、金地院に住んでいたことから「金地院崇伝」と呼ばれていました。ただの僧侶ではなく、海外との外交や法令の起草など、様々な役割を果たし「黒衣の宰相」という異名でも呼ばれていたそうです。

立派な唐破風の門は明智門。明智光秀が母の菩提のために大徳寺に寄進して建てられたもの。金地院の唐門が豊国神社に移築されたため、大徳寺から買い取り移築したそう。

東照宮と開山堂

順路に沿って境内を進んでいくと見えるのは石の鳥居。寺院なのに鳥居があるのは少し違和感がありますが、この鳥居はこの先にある東照宮への入口。

東照宮は徳川家康を祀る神社。東照大権現坐像を安置、さらに徳川家康の遺髪と念持仏を祀っています。中に入ることはできませんが、天井に描かれた狩野探幽による鳴き龍も見ることができます。

日本各地に建つ東照宮ですが、この金地院の東照宮は「日光東照宮」「久能山東照宮」と並び、徳川家康の遺言による3つの東照宮のうちの一つ。現在残っている建築はごく一部ですが、創建当時は多数の建造物が並び、日光東照宮と比較されるほどであったそう。

東照宮の先にあるのが以心崇伝の塔所である開山堂。色鮮やかな以心崇伝坐像を中心に、十六羅漢象が左右に安置されていました。

小堀遠州による方丈庭園

順路の最後にたどりつくのが、金地院の本堂にあたる建築物、方丈。寛永4年(1627年)の建築であり、もとは伏見の桃山城にあった建築を移築したとのこと。

建物の前に広がる庭園。手前部分は白砂が敷き詰められており、何も配置されていません。ここはなんと海を表しているそう。広々とした縁側に腰掛けてゆっくり鑑賞していると、自然と穏やかな気持ちになってきます。

奥の部分の大きな石組は、左手が亀、右手が鶴となっております。鶴と亀が向かい合う姿を表現していることから「鶴亀の庭」とも呼ばれているそう。鶴は長い首を寝かせたような姿。

亀の背中には真柏が植えられています。その樹齢はなんと800年とのこと。

鶴と亀の間にある5畳弱の長方形の巨石は遥拝石。隣接する東照宮を拝むために置かれたものです。実際にそこに立つことはなく、祭壇的な位置づけであるそう。庭園の周りを彩るのは常緑樹。枯れないことから徳川家の繁栄を祈ったものとのことです。

この庭園は、以心崇伝が徳川家光を迎えるため、作庭家の小堀遠州(こぼりえんしゅう)に造らせた庭。小堀遠州作と伝えられている庭園は様々な場所に存在していますが、確実に遠州作という資料が残っている庭は、実はここだけであるそう。

八窓の席と猿猴図

この金地院では解説付きの特別拝観を行っております。定時開催されていますが、詳しくは受付に確認とのこと。訪問した際は、ちょうど13:30の回に参加することができました。

狩野探幽による襖絵が広がる菊之間や、海北友松による「群鴉屏風」などの見どころがある中、目を引くのは長谷川等伯の襖絵「猿猴捉月図」。黒いテナガザルが手を伸ばしているのは、湖面に映る満月を掴もうとしている姿であるそう。よく見ると輪郭線はなく、体毛は1本1本硬い竹筆で描かれています。

受付に掲げられていた真

そして、小堀遠州による三畳台目の茶室「八窓の席」も見ることができます。現在確認できる6つの窓の解説や、身分の差を取り入れた武家社会よりの茶室であることなど、様々な内容が語られます。

パンフレットの写真(モノクロ)

特別拝観の所要時間は30〜40分ほど。肝心の開催日・開催時間ですが、お寺の公式サイトが見当たらないため詳細は見当たらず。通年開催しているという噂も・・・。

アクセスと参拝情報

地下鉄東西線「蹴上」下車、徒歩約5分。

拝観時間 12~2月:9:00~16:30
3~11月:9:00~17:00
料金 500円 ※特別拝観は+700円
公式サイト 不明

※掲載の情報は2025年3月時点のものです。

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