世界一を誇ったハッカの歴史『北見ハッカ記念館』(北見市)

道東

全盛期には世界の70%のシェアを誇った北見のハッカ。どのような歴史があり、どうやって生産されていたかを体感することができるのがこの北見ハッカ記念館。ハッカ生産の第一段階である「ハッカ蒸溜」の行程も見学可能です。

訪問日:2023/9/29(金) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

レトロでかわいい記念館

オホーツク地方最大の都市である北見。かつてハッカ生産が盛んに行われており、ハッカ産業によって発展した歴史を持ちます。そんなハッカの歴史を学ぶことができるのが北見ハッカ記念館。かつて稼働していた北見薄荷工場の事務所兼研究所を整備、1986年に記念館として開館しました。

壁に塗られた淡いピンク色がとってもかわいらしい建物です。

館内もレトロな空気が詰まっています。軋む木の床、少しゆがんだガラス、クラシカルな時計・・・。なんだかノスタルジックな気持ちになる建物です。

2007年には「北海道における近代農業、食品加工業などの発展の歩みを物語る近代化産業遺産群」として、近代化産業遺産にも指定されました。

ハッカ産業の歴史

かつての図書室や研究室が、そのまま展示室になってます。室内にはパネルや映像、さらには実際に使用されていた器具がずらり。

移住者の手によって伝わったハッカは、屯田兵解隊とともに兵士を中心に本格的な栽培が開始されます。本州の商人たちが買付を開始、産業の発展とともに北見の人口は増加していきます。

1923年の関東大震災で横浜の倉庫が燃えて在庫がなくなり価格が暴騰したことも後押しとなり、ハッカで富を築いた「ハッカ成金」と呼ばれる人々が誕生したそうです。

1933年には当時世界一と言われたホクレンのハッカ精製工場が建設されます。「HOKUREN」ブランドのハッカが誕生、海外へ進出が開始。こちらはハッカ油のもとになる精脳を輸出するための5ポンド缶、そしてその缶を密閉するためのオートマチックシーマー。

北見における作付面積は2万ヘクタール、300万トンも生産され、世界の7割を占めるほどであったそうです。

太平洋戦争がはじまる頃にはハッカは一時中断。戦後には道庁による奨励もあり再興しますが、ブラジルをはじめとした外国産に押されて衰退。1983年にハッカ輸入関税の引き下げを受けて北見ハッカ工場が閉鎖。50年の歴史に幕を閉じます。

館内の見どころ

こちらは薄荷工場のジオラマ。もともとは遠軽につくる予定であり、その土地に合わせた設計がされていたため、表と裏が反対になってしまったそう。よく見るとテニスコートも併設されており、作業員も息抜きしていたのかなと想像が膨らみます。

ハッカをはじめとした様々なハーブが入った香り箱。かぎ比べ体験することができます。

ずらりと並んたハッカ製品。シガレットやタブレット、化粧品、調味料など様々なものが並んでいます。警告文の無い昔のたばこをはじめ、懐かしさに浸れるのではないでしょうか。

隣には薄荷蒸溜館

ハッカ記念館の隣には、当時の木造ハッカ小屋をイメージして造られた薄荷蒸溜館があります。

館内に置かれているのは蒸溜。明治~大正時代に使用されていた「天水釜式蒸溜器」や、昭和30年代以降の「ホクレンA式蒸溜器」など、時代によって変化していく様子を見比べることができます。

館内にはショップも併設されており、ハッカ油やお菓子をはじめとした様々なハッカ製品を購入することもできます。

ハッカ蒸溜を見学

薄荷蒸溜館では、ハッカ農家による一連の工程を見ることができます。まずはハッカを蒸溜釜に入れて水蒸気をあてて蒸します。こちらのシルバーの容器は、さきほど並んでいた様々な蒸溜器の最新バージョンです。

蒸すことにより成分が蒸気に混じり出てくるので、冷却槽を通して冷やします。

冷却されたことで水と精油が分離。上澄みとなる黄色い油部分を抽出することで、「取卸油」が完成します。この取卸油は工場で「ハッカ脳」と「ハッカ油」に精製、各地へ出荷されていきます。

私が訪問した際は、この蒸溜が常時行われており、少しずつ取卸油が溜まって行く様子をじっくりと見学することができました。

そして、この行程のおかげか、辺り一面にミントの香りがたっぷり。とっても爽やかな気持ちになれる場所でした。

アクセスと営業情報

JR北見駅から徒歩10分。

開館時間 9:00~17:00 ※11~4月は9:30~16:30
休館日 月曜、翌祝
料金 無料
公式サイト http://www.kitamihakka.jp/

※掲載の情報は2023年9月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

コメント

  1. […] […]

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