会津はかつて海だった!『カイギュウランドたかさと』(喜多方市)

福島県

化石の産地として知られる喜多方市高郷町。中でも注目は地名を冠した「アイヅタカサトカイギュウ」。ところで、カイギュウってどんな動物かご存じでしょうか?

訪問日:2024/5/6(月) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

校舎利用のミュージアム

ここは福島県の北西部に位置する喜多方市高郷町。阿賀川に架かる塩坪橋から漆窪地区に至る地域では、化石がたくさん産出することが古くから知られていました。

そんな地に立つのがカイギュウランドたかさと。オレンジとクリーム色の学校みたいな外観とおもったところ、もともとは学校であった建築を活用したミュージアムであるそう。

あの下駄箱で靴を脱いで進む館内。すぐに目に入るのは、こちらの模型。この生き物については後ほど。

教室を活用した展示室

まずは約10分の映像『太古の時代にタイムスリップ』から。高郷町の紹介からはじまり、化石について知ることができます。

その先、4つ並んだ教室が展示室。「地層展示室」「貝化石展示室」「クジラ化石展示室」「カイギュウ化石展示室」とカテゴリ分けされた内容は非常にわかりやすくまとまっています。

「地層展示室」では、喜多方の大地の生い立ちをパネルで紹介。1600万年前の利田(かがた)層の時代は深い海、1000万年前の塩坪層は浅い海、400万年前の藤峠層は潟や湖と、地層ごとに変わっていく地形がわかりやすく紹介されています。この地はかつて海であったことは、地層が教えてくれるのです。

続く「貝化石展示室」は、「たかさと化石まつり」で発掘された化石が、発掘者の名前入りでたくさん展示されています。貝だけでなく、カルカロドン・メガロドンなどのサメの歯の化石も。

なお、ここで見つかった化石には、「耶麻動物化石群」という名が付けられています。

大型海獣の化石

クジラ化石展示室では、大きなミンククジラの骨格標本が。

会津では、クジラの化石も発掘されています。記念すべき第1号はなんと高校生が発見。1973年、自然科学部の部活動にて、阿賀川の岩場にて見つけたそう。その後、次々とクジラの化石が見つかっていきます。

こちらは町内で見つかったナガスクジラの化石。この化石、もともとは2003年に塩坪橋の架替工事現場で発見されます。その6年後となる2009年に、橋梁建設残土置場からそれに接続する化石が発見。奇跡的にパーツがそろいました。

こちらはイマゴタリアというセイウチの仲間の化石。頭骨化石からは鋭い歯も確認できます。現在はセイウチといえば1種類ですが、古代には多数の仲間がいたそうです。

アイヅタカサトカイギュウ

最後はカイギュウ化石展示室。ナガスクジラやイマゴタリアとともに、高郷の海を泳いでいたのがカイギュウ。ジュゴンやマナティーの仲間であり、海藻を主食とする哺乳類の動物です。

高校生によるクジラの化石発見を受けて、さらなる発掘調査を開始。その結果、アイヅタカサトカイギュウという新種が発見されました。

こちらはアイヅタカサトカイギュウの復元図。体長は約3.6m、その姿はジュゴンにそっくりです。こんな生き物が800万年前のこの地(海)に暮らしていたと想像すると、ロマンがあふれますね。

ステラーカイギュウの絶滅

最後に、アイヅタカサトカイギュウの子孫である「ステラーカイギュウ」についてのお話を。

ステラーカイギュウの1/2模型

この生き物は18世紀というつい最近まで、ベーリング海の冷たい海に暮らしていました。その体長は7〜10mとカイギュウ目の中でもかなり巨大であったそうです。

ときは1741年、ロシアのベーリング探検隊は漂流したのち、ステラーカイギュウの暮らす島にたどりつきます。

蓄えの尽きた探検隊にとって、この大きな動物は貴重な食糧。ロシアに戻ると、国の猟師にその存在を伝えます。その話はすぐに広まり、毛皮商人やハンターたちが次々と島へ訪問し乱獲、貿易船は長い航海に備えて島に立ち寄りステラーカイギュウを食糧として補給していました。

人間に対して警戒心もなく、動作が鈍いこの動物は恰好の獲物。襲われても逃げることなく海底にうずくまる程度であり、さらに仲間が襲われると集まってきて助けようとするという習性も。巨大でありながらもあまりにも狩りやすい生き物だったのです。

その結果、1768年に絶滅。発見からわずか27年のできごとでした。

ステラーカイギュウ1/2の骨格模型

当時のハンターや商人を野蛮だと揶揄することは簡単ですが、現代より昔の出来事を現代の感覚で判断するのは少々ナンセンス。とはいえ、もし生きていたらと考えると、いったいどのように人間と関わりを持っていたのか気になるところ。最初は生物資源として利用されることと思いますが、やがては保護が叫ばれていくことになったはず。捕鯨がホエールウォッチングに切り替わっていったように、観光資源へと姿を変えていたかもしれませんね。

※絶滅後も似たような動物が目撃された例や、発見された当時すでに絶滅危惧だった可能性なども一説としてあるそうです。

アクセスと営業情報

上郷舟渡線(県道340号線)から、側道を上った先にあります。見逃さないようにご注意ください!

開館時間 9:00~16:30
休館日 月曜、年末年始
料金 250円
公式サイト https://www.city.kitakata.fukushima.jp/site/kaigyuu-ibento/

※掲載の情報は2024年5月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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