淡路島北部にある寺院・本福寺の本堂は、現代的なコンクリート建築。まるで水中へと入って行くかのようなアプローチに、現代アートにも通じる非日常を感じることができます。寺院とは思えないデザインされた空間に、計画当初は多くの人の反対があったようです。
淡路島の古刹
兵庫県淡路市にある本福寺(ほんぷくじ)は平安時代に建立されたという歴史の深い寺院。大阪湾や港町を見渡す高台に建てられています。
仁和寺を総本山とした真言宗御室派に属しており、淡路四国八十八ヶ所霊場の第五十九番札所にあたります。さらに、淡路島の花の名所を札所として指定した「あわじ花へんろ」の第6番札所にも指定されています。
そんな本福寺に来た目的は、「水御堂(みずみどう)」と呼ばれる本堂。寺院とは思えないようなモダンなデザインで建てられており、SNSなどでも話題になるスポットなのです。
コンクリートの本堂
正門を抜けて本堂への案内の通りに進んでいくと、俗界と聖界の境目とされる大きなコンクリートの壁が見えてきます。
壁の向こうには回廊のように弧を描く道と、水が張られた蓮池が。まるで鏡のように空を映し出す美しい水盤。ハスやスイレンが植えられているため、夏場には美しい花景色が広がることでしょう。
この寺院らしからぬ建築は、世界的な建築家・安藤忠雄によるもの。直島の地中美術館や、茨木市の光の教会など、打ちっぱなしのコンクリートが特徴的な建築を日本各地に残しています。
ハス池の中へ続く階段
この水御堂が本堂とのことですが、どこにお堂があるのでしょうか・・・?
蓮池の中央へ進むと、地下へと続く階段が姿を見せます。本堂はこの池のちょうど真下に広がっており、蓮池が屋根となっているのです。
まるで水中へ潜って行くような不思議な感覚にどきどき。降りたところが受付となっており、拝観料400円を納めます。優しいおばあちゃんが「ようこそお参りくださいました」と受け入れてくれました。
朱色の回廊の中には、淡路市の重要文化財にも指定された本尊の薬師如来像や不動明王像をはじめとした黄金の仏像、壁にかけられた曼荼羅など、密教の世界が広がります。
堂内では大きなガラス窓が設置されており、自然光をたっぷりと取り入れる構造になっています。窓は西を向いているため、西日が射し込む午後に訪問すると仏像の背後からまるで後光のように射し込む光を拝観することができます。(内部は撮影NGですのでご注意くださいね。)
多くの反対を受けた建築
通常の寺院と比較して、明らかに異彩を放つ建築。当初は寺院関係者や檀家からは猛反対を受けていたそう。
安藤は「お寺=人が集まり、心の豊かさを感じられる空間」と考え、人が来る場所にするためにはと様々な考えを巡らせました。通常寺院建築のシンボルとなる大屋根は権力の象徴とも捉えられるため排除、代わりに仏教の原点となるハスをシンボルにするために水盤を中心とした建築を考案します。
ほとんどの人から反対を受けるも、京都本福寺の高僧である立花大亀に意見を求めたところ、好評を得ることに成功。これによって反対意見は全て無くなったそうです。
(Wikipediaによると、それまで反対していた人達は、高僧が賛成したという話を聞いたとたん、手のひらを返したように全員賛成に傾いたそうです。権力を排除しようとした建築であるのに、権力に後押しされるというのは何とも皮肉なエピソードです)
アクセスと営業情報
神戸淡路鳴門自動車道の東浦ICから約5分。駐車場は正門前に数台分あります。
周辺には「道の駅東浦ターミナルパーク」、「淡路夢舞台」、「国営明石海峡公園」など観光スポットがたくさん。淡路島北部の観光コースにすんなり入る立地です。
開館時間 | 9:00~17:00 |
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料金 | 400円 |
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