イベント会場としても知られる日比谷公園は、2つの池や噴水をはじめとした見どころたっぷりな都市型公園。この公園は「3つの洋」をテーマに造られているということですが、いったい何を指すのでしょうか。
噴水広場と2つの池
「日比谷オクトーバーフェスト」などのイベントでも知られる日比谷公園は、1903年に開園した歴史のある公園。当時、このような洋風の公園は日本初であったそうです。
日比谷公園のシンボルと言えばこの噴水。直径30mの大きな噴水であり、8:00~21:00の間で稼働しています。
噴水から少し進むと、心字池が見えてきます。ここは、かつて江戸城の濠であった部分を公園造成時に池としたもの。上から見ると「心」の字を崩した形をしているため、このような名前が付けられています。シラサギなどの野鳥も訪れ、6月にはハナショウブが咲くそう。
もう一つの池が野外大音楽堂のそばに広がる雲形池。中心にはツルの噴水がそびえ立つ、風情あふれる池です。装飾用噴水としては、長崎諏訪神社、大阪箕面公園に続いて3番目に古いそう。
点在する多数の見どころ
園内を散策していると、様々なものを見つけることができます。それぞれ名称に加えてちょっとした解説も付いているため、ちょっとした野外博物館のような感覚で楽しむことができます。
こちらの立派な石垣は、日比谷見附跡。江戸城外郭城門の一つである日比谷御門の一部です。傍にある心字池とともに、貴重な江戸城の遺構として保存されています。
そびえ立つ推定樹齢400年のイチョウの巨木は、その名も首かけイチョウ。もともと日比谷見附のあたりに生えていましたが、道路拡張にともない伐採されることに。日比谷公園の生みの親本多静六博士の進言により移植が実現、博士が「首にかけても移植させる」と発言したことからこのような名前になったそうです。
日比谷公園開設当初からあるという水飲み場。鋳鉄製の重厚な姿は独特の存在感を放ちます。馬も水が飲めるように造られており、モータリゼーションが進む以前の面影を感じます。
唐突に現れるハニワ。「宮崎県立平和台公園」と姉妹公園として結ばれた記念に贈られたもの。古墳の多い宮崎県、平和台公園では多数のハニワを見ることができるのです。
3つの「洋」とは
さて、見どころの多い日比谷公園ですが、当初は3つの「洋」をテーマに造られたそうです。園内を散策する際に、それを意識してみるとまた違った楽しみ方ができます。
①西洋風花壇
1つ目の洋は「洋花」。今でこそバラやチューリップなど西洋の花を植えた花壇は珍しくありませんが、当時一般市民が洋花を見ることができる場所は限られていました。そんな時代に造られたのが西洋風花壇。日本に自生する花よりもカラフルで華やかな洋花は、きっとロマンティックに映ったことでしょう。
第一花壇は日本最初の洋式庭園。現在もそびえ立つシュロノキや、ソテツの周りを囲むように咲くパンジーやビオラ、チューリップといった花々が見ごたえある花壇となっています。
こちらのペリカンの噴水は、昭和28年に、野外創作彫刻展協賛のセメント会社から寄贈されたものです。
②洋食レストラン
2つ目の洋は「洋食」。園内には当時まだ珍しかった洋食レストランがオープン。銀座で食堂を経営していた小坂梅吉によって、洋風喫茶店「松本楼日比谷店」が開かれました。お洒落な店で「カレーを食べてコーヒーを飲む」というのが当時流行のモボ・モガたちにおけるハイカラな習慣であったそう。
そんなレストランですが、現在も営業しており洋食メニューを楽しむことができます。多数のラインナップの中、気になるのは「ハイカラビーフカレー」。
「ハイカラハヤシライス」とセットになった「ハヤシ&ビーフカレー」にしました。カレーはシンプルで懐かしさを感じるお味で、見た目よりずっとスパイシーです。一方、ハヤシライスは甘味と酸味が強くクセになるお味。
この2つは組み合わせるとお互いを引き立て合います。食べ終わった後に思いついたのですが、カレーとハヤシを混ぜたら完璧な味になりそうな予感。
さてさて、そんな松本楼日比谷店ですが、関東大震災によって焼失。建て直されて戦災も免れたものの、1971年の沖縄返還協定反対デモによって再度焼失。現在の建物は1973年9月26日に再建された3代目となります。
この復活は全国からの願いによって実現したものであるため、それに感謝を示す記念として1年に1度の9月26日に限りカレーが10円にてふるまわれる「10円カレー」というイベントが開催されました。このイベント、なんと現在も続いているそう。金額は10円ではなく、「創業年数以上の寄付」へと変わったようですが、非常に安価に伝統の味を楽しむことができます。
③音楽堂での洋楽
3つ目の洋は「洋楽」。人々に気軽に洋楽に親しんでもらうため、まずは「小音楽堂」が建てられます。現在見ることができるこちらの小音楽堂は1983年に建て替えられた3代目。
より大きな音楽堂を望む声が集まると、作曲家の山田耕作、劇作家の小山内薫、政治家の小村欣一らが計画案を練り上げ、野外劇場の建設が決定。ギリシャ・デルフィの古代劇場を参考に、水の波紋を意識した客席配置を行ったりと斬新なデザインで仕上げました。
現在の大音楽堂は1983年に造られた3代目。屋根の角度が工夫されている、壁もダイレクトに反射しないように「はつり仕上げ」というざらざら加工になっているそうです。
多数のアーティストが演奏してきたため、音楽ファンにとっては人気の場所。1977年7月17日の「普通の女の子に戻りたい」のセリフで知られるキャンディーズ解散宣や、Johnny, Louis & Charの無料コンサートなど様々な歴史の舞台となってきました。そのため、「音楽の聖地」「ロックの聖地」「フォークの殿堂」とも称されます。
今回訪問した日は「天晴れ!真冬の大ギャンパレ音楽祭 in 日比谷野音」の開催日。音楽堂には長いグッズ待機列ができており、周辺には多数の「遊び人」の姿が。きっと、たくさんの人の思い出の場所になっていることでしょう。
アクセスと営業情報
・東京メトロ丸ノ内線・千代田線の「霞ヶ関駅」B2出口すぐ
・東京メトロ日比谷線・千代田線・都営地下鉄三田線の「日比谷駅」 A10・A14出口すぐ
・東京メトロ有楽町線の「桜田門駅」出口5から 徒歩5分
・JR線の「有楽町駅」から徒歩8分
開園時間 | 24時間 |
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料金 | 無料 |
公式サイト | https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index037.html |
※掲載の情報は2024年1月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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