ビルの屋上に庭園があるのは決して珍しくありません。しかし、鶴見駅の駅ビルCIAL(シァル)鶴見の屋上には、他とは一線を画す「日本庭園」が広がっています。ビルの内装にも禅宗文化が散りばめられており、他には無い独特な存在感を放っています。
禅文化を感じる駅ビル
京浜東北線および鶴見線が乗り入れる鶴見駅。そのターミナルビルとなっているのがCIAL鶴見。
一見すると普通の駅ビルに見えますが、このCIAL鶴見は禅がコンセプト。内部は随所に和風なデザインが施されています。
なぜ、駅ビルに禅なのでしょうか?その背景には、かつて日本初の禅宗寺院である建長寺がこのあたりの土地を管理していたということ、また曹洞宗の總持寺が移転してきたということがあるそう。
レストラン街である6階は食に携わる役職である典座(てんぞ)を冠した「典座小径(てんぞこみち)」、書店や眼科の入る5階は物事の本質を見抜く目を意味する眼睛(がんぜい)を冠した「眼睛小径(がんぜいこみち)」という名も付けられています。また、トイレには禅宗寺院で御手洗を示す「東司(とうす)」という表記もあります。
このように書くとまるで仏教テーマパークかのように見えますが、入店しているテナントは一般的なチェーン店なので特に意識しなければ普通の駅ビルです。
開放的な清風苑
屋上庭園はエレベーターのみで行くことができます。エレベーターを降りて外へつながるドアを開くと、目に入るのはウッドデッキが敷かれた開放的な広場。
その中心には芝生と石が組まれた庭園が広がります。清風苑と名付けられたこの庭園は、清々しい風が吹く中に身を置くことで、煩悩や雑念を払い落とすといったコンセプトで造られています。
横たわるの石は5mほどの大きさでかな立派。冬に訪れたため、黄色い芝生が少し寂しげですが、夏場に来れば青々と美しい姿なのでしょう。
よく見ると、地面にも石を埋め込んで何かが埋め込まれています。これは高低差をつけず、石の色合いや向きによって表現された平面の石庭。
屋上には自動販売機とベンチもあるので、買い物や散策の休憩に立ち寄るのも良さそうです。
枯山水が広がる坐月庭
これで終わりかなと思いきや、奥にはさらなるゲートがあります。行ってみましょう!
坐月庭と書かれた入口を進むと、そこにはまるで京都の古刹のような日本庭園の姿が。水を使わずに水を表現する枯山水と呼ばれるタイプの庭園で、並べられた石のまわりには白砂利に描かれた波紋が広がります。
7つの石が配置されていますが、特に印象的なのはほぼ中央に置かれた石組。日本庭園においてこのように3つに組まれた石は、釈迦三尊像や阿弥陀三尊像といった仏像になぞらえ「三尊石(さんぞんせき)」と呼ぶそうです。
庭園に向き合うようにベンチが設置されているので、ぼーっと眺めて過ごすことができる。庭園の奥には高めのフェンスが設置されており、市街地の様子もほとんど入ってこないため、どこか別世界のような気分で庭園鑑賞が楽しめるような工夫がなされています。室外機の音が少し気になりますが、逆に他の音を打ち消してくれていると考えると悪くないです。
プロデュースは枡野俊明
屋上庭園、そしてビルのインテリアなどをプロデュースしたのは、枡野俊明(ますの しゅんみょう)という人物。
日本造園設計を設立した庭園デザイナーで、セルリアンタワー東急ホテル日本庭園や、新潟県立近代美術館の庭園、寒川神社神嶽山神苑、カナダ大使館の庭園など多数の庭園を手掛けています。また、著作物も多数出版しており、中には「ZEN GARDEN DESIGN」など海外に向けたものも。
かつて鶴見区の總持寺にて雲水として修行しており、現在は同じく鶴見区にある建功寺の住職も務めています。鶴見とは縁が深い方のようです。
禅カフェもおすすめ
2つ下のフロアとなる5階には、禅カフェ坐月一葉(ざげつかずは)が入っています。お抹茶や煎茶などの日本茶に加えて、抹茶のパフェやあんみつといった甘味、建長うどんや湯葉あんかけご飯といった食事メニューもそろっています。
こちらは「もっちりごま豆腐プリン」。名前の通りもっちりとした食感のプリンで、めっちゃ美味しいです!!中に入ったクルミが良いアクセント。まわりにはほうじ茶ゼリーとほうじ茶シロップがあり、程よい甘さに仕上がっています。
甘味を頼むと、煎茶がセットで付いてきます。お茶は数種類から選べるのですが、そのバリエーションがとっても豊か!静岡の天竜、佐賀の嬉野、京都のかりがねなど日本各地のお茶が揃っています。
店員さんにアシストしてもらって「京都かぶせ茶」にしました。甘口で独特の旨味を感じるお茶で、普段口にするティーパックの緑茶とは全然違うふくよかな風味にびっくり。
お値段は少しだけ高めですが、上品な和風スイーツと上質な日本茶が楽しめて大満足でした。
アクセスと営業情報
前述の通り鶴見駅東口にある駅ビルCIAL鶴見の屋上にあるため迷うことはありません。ただし、庭園の開放時間は10:00〜16:00と決まっているのでご注意ください。
庭園自体はコンパクトなので、見るだけなら一瞬で終わります。わざわざこれ目当てに行くと少し物足りない感じになりそうですので、鶴見駅から徒歩5分ほどのところにある曹洞宗の大本山・總持寺の参拝と合わせて訪問するのがおすすめ。
庭園利用時間 | 10:00~16:00 |
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料金 | 無料 |
公式サイト | https://www.cial.co.jp/tsurumi/ |
※掲載の情報は2022年2月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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