東京湾防衛のために築かれた砲台跡。整備が行われ、待望の一般公開が開始されました。レンガが積まれた戦争遺跡からは、まさに要塞といった武骨な雰囲気を存分に味わうことができます。
気軽に会える戦争遺跡
千代ヶ崎砲台は東京湾要塞を構成する砲台の一つ。江戸時代後期に会津藩が台場を築いた平根山に造られた西洋式の砲台で、明治28年に完成しました。
戦後は農地として民間に払い下げられ、その後自衛隊の施設となります。平成27年に国の史跡に指定されました。
これまでは見学会に参加しないと見ることができませんでしたが、2021年10月より満を持して一般公開が開始されました!土日祝限定ですが、予約不要・無料で見ることができます。
浦賀ドックも同時期に公開をはじめ、開国クルーズも運行。いまの浦賀はかなりアツイです!
無料のガイドツアー
自由に見学することもできますが、ガイドツアーに参加すると通常非公開の地下施設内へも立ち入ることができます。
ノープランで訪問したところ、ちょうどガイドツアーが開催されるタイミングだったので参加させてもらいました!ちなみに料金は無料、所要時間は40分程度となります。
まずはレンガに包まれた塁道を進んでいきます。これぞ戦争遺跡といった雰囲気抜群のメインストリート。通り沿いには掩蔽部(えんぺいぶ)と呼ばれる、兵隊が待機していた部屋が3つ並んでいます。
途中には施設内の細い通路を進んで行くシーンも。この圧迫感ある感じがなんともわくわく。たまにオオゲジなどの戦跡定番なショッキング生物が出現することもありますので、心の準備はしておいた方が良いです。
地下に造られた施設
こちらは井戸。この砲台跡には水道設備が無いため、雨水を貯める貯水所が2ヶ所に設置されていました。ガイドツアーならば、水を蓄えている様子も覗くことができます。
弾薬庫では、当時のろうそくの明かりを再現したぼんやりとした照明が設置されています。弾薬の近くに火器があるのは非常に危うく感じますが、ろうそくの部分と弾薬庫の間には大きい隙間を開けて、危険を回避していたそうです。
弾薬庫の天井には丸い穴が空けられています。こちらは、下部にある弾薬庫から滑車を使い、弾薬を持ち上げるために開けられた穴。揚弾井(ようだんせい)と呼ばれています。
円形の砲座跡
進んで行くと、円形の砲座跡が見えてきます。ここには28cm榴弾砲という大型の大砲が設置されていました。砲座は3つ、それぞれ2つの砲床があったので、合計6門の榴弾砲を備えていました。
28cm榴弾のスケール感を実感できる、ほぼ実物大の模擬弾も用意されていました。イメージしていたよりも遥かに大きいです。また、このサイズで1つ200kg以上というとんでもない重さだったそうです。
砲座跡の周囲に作られたくぼみは、榴弾を置く場所。1つのくぼみに3つほどが並ぶようになっています。また、真ん丸に空けられた穴は伝声管のための穴。ここを通して声で指示していたそう。
なお、この榴弾砲が発射されたことは無かったとのこと。戦艦を沈めるために設置された大砲でしたが、戦場は空に変わったため出番が無いまま終戦を迎えてしまったそうです。
開放的な地上部分
地上部分に登ると、これまでの鬱蒼とした雰囲気から打って変わって公園のような雰囲気。見晴らしも良く、対岸の千葉県や富士山も見渡せます。周辺にはオオシマザクラが生えており、春になるときれいな花を咲かせるそう。
ここからは3箇所の砲座跡を上から見下ろすことができます。円形の遺跡は、上から見てこそ絵になります。
先ほど歩いてきた塁道もなかなか良い感じ。緑の中に現れるレンガの遺構は、まさに遺跡といった姿。定番の例えで本当に申し訳ないのですが、「ラピュタ感」あります。
ガイドツアーはここで解散。この後は、地上部分でのんびり過ごしても、再び地下に戻っても自由です。
ボランティアガイドの方による案内は、とってもわかりやすい内容。各ポイントにもボランティアのおじさんが待機しているのですが、おじさんの小ボケにガイドさんが横須賀弁で突っ込む様子も微笑ましくて楽しめました・・・!
(今のところ案内板などはあまり設置されていないため、個人で見学する場合は多少の予備知識があった方が良さそうな印象でした。)
アクセスと営業情報
京急線尾浦賀駅から徒歩で約45分、浦賀ドックからは約30分ほど。
車の場合は、横浜横須賀道路の浦賀ICから15分ほど。私が訪問した際は臨時駐車場が15台ほど用意されていました。もし空いてない場合は、徒歩10分ほどのところにある「燈明堂」という観光名所にそこそこ広い駐車場があるようです。
また駐車場から砲台跡への道中には、横須賀海軍カレーパンの移動販売が来ていました。美味しそうな香りで確実に胃袋を誘惑してくるのでご注意ください。(もちもちでとっても美味しかったです)
公開時間 | 3~9月:9:30~16:30 10~2月:9:30~15:30 |
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公開日 | 土日祝日 |
料金 | 無料 |
公式サイト | https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/8120/bunkazai/tokyowan.html |
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