江戸時代より化粧品として知られる「紅」を製造する伊勢半によるミュージアム。紅の製造過程や歴史はもちろん、日本における化粧品のヒストリーも知ることができます。企画展も開催しており、コンパクトながらも充実した空間が広がります。
紅をテーマにした資料館
紅ミュージアムは、江戸時代から続く最後の紅屋、伊勢半本店が設立した資料館。化粧品として利用されてきた「紅(べに)」をはじめ、化粧の歴史などの展示も楽しめるミュージアムです。
1階の常設展示は無料で見学することができます。小さな展示室が2部屋というコンパクトなつくりですが、パネル展示に加えて映像や実物なども揃っており、なかなか見ごたえがあります。
こちらは江戸時代の紅屋の復元模型。
伊勢半は、1825年に澤田半右衛門によって開かれました。半衛門はもともと紅白粉問屋で奉公しており、そこから独立。その際に伊勢屋という呉服店から株を購入、店名を「伊勢屋半右衛門」、屋号を「伊勢半」に定めました。江戸発祥の紅屋はほとんどが卸売り専門でしたが、伊勢半は自ら製造も行う紅屋であったそうです。
ベニバナからつくる紅餅
紅のもとになるのが、キク科の一年草・ベニバナ。現代においては「ベニバナ油」という食用油の原料として知られていますが、黄色い花であるのにベニバナと呼ばれるのには違和感がありました。
一見すると黄色にしか見えないベニバナの花弁には、黄色に加えて赤色の色素も含まれています。黄色の色素は水溶性で簡単に抽出できるため安価な衣料や食品に、赤色の色素は水に溶けずなおかつわずかしか採れないため、高級な衣料や化粧品に使用されてきました。
館内のモニターでは、ベニバナの花弁から紅餅ができあがる様子を映像で見ることができます。まずは花弁を水洗いして黄色い色素を落とします。数日かけて発酵させると黄色い花は赤身が増していき、黄色→橙→赤→紅と変化。それを煎餅状に成形して干したものを「紅餅」と呼び、紅屋ではこれを加工して紅を作っていきます。
日本の化粧の歴史
信仰に由来するものや階級などを表す手段として行われてきた化粧。江戸時代にはその化粧が女性のものとして定着していきます。「江戸時代の鏡台と化粧道具類」とともに、当時の化粧の解説も。赤・白・黒の3色だけというのが、日本らしいスタイルです。
こちらは「お歯黒道具一式」。お歯黒といえば、歯を黒く染めるインパクト抜群な化粧。既婚女性の象徴であるという意味や、黒く染めるための手順などが記されています。
なお、館内にはこのお歯黒に対する外国人のコメントも多数掲載されています。どんな感想であったかはぜひ現地にて。
他にも「房楊枝」や「舌こき」といったオーラルケア、ノイバラを使用した化粧水などのスキンケアなど、現代と照らし合わせた展示は非常にユニーク。ついつい見入ってしまいます。
明治以降のメイク
ずらりと並ぶのは明治以降の化粧品。明治政府による欧化政策にともないカタカナ名称が普及。大正時代にはモダンガールが出現し、洋装が一般化していきます。
1937年の支那事変後は外国製品の輸入がストップ。戦争が激化するにつれ華美な化粧は禁止されていきます。今日ある基礎化粧品やメイクアップ化粧品が定着するのは戦後。好みの色やメーカーを見つけて、自由に楽しめるようになります。
当時の広告も見ることができます。「ママには分らない パパにも分らない・・・昭和10年以後に生れた私たちだけのセンス!」など、時代を反映したキャッチフレーズやデザインは、化粧に興味が無い人でも楽しめる内容です。
企画展・ミニチュア愛
地下一階は企画展示室。常設展は無料ですが、こちらは別途有料。訪問した際に開催されていたのはコチラ。
2024/02/20(火)〜 2024/04/07(日)
雛道具研究科の川内由美子さんが集めたミニチュアコレクションを展示した企画展。雛道具というのは、雛人形とともに飾るミニチュア調度品のこと。化粧道具や香道具など、様々なものが展示されています。
雛道具だけでなく、八百屋などのお店のミニチュアも。店内の様子や商品の野菜まで細かく仕上げられています。他にも結納飾りや木箱入り菓子、朝顔屋などいろいろなミニチュアがたっぷり。ちょっとした解説もわかりやすいです。中には川内由美子さんが自ら作ってしまったというものも・・・!
ミニチュア雛道具というものを全く知らずに訪れてしまったのですが、精巧に造られた作品は小さいながらも見ごたえ抜群。「こんな世界があるんだ」と、新しい発見に出会うことができました。
アクセスと営業情報
東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線の「表参道駅」B1出口より徒歩12分。
開館時間 | 10:00~17:00 |
---|---|
休館日 | 日曜、月曜、年末年始、創業記念日(7月7日) |
料金 | 常設展:無料/企画展:有料 |
公式サイト | https://www.isehanhonten.co.jp/museum/ |
※掲載の情報は2024年3月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
コメント