9月の百花園は、ヒガンバナやタマスダレ、ハギのトンネルなど多くの植物が花を咲かせています。巨大なヒョウタンやヘビウリなどインパクトある果実も見頃を迎えていました。
料金:150円
都会の草庭
向島百花園の最寄り駅は東武スカイツリーラインの東向島駅。地下鉄半蔵門線とも直通しています。駅から百花園までは徒歩8分ほど。街中の一角に、公園のようにひっそりと存在しています。
園内は、とてもこじんまりとした庭園。草木が生い茂っており、六義園や小石川後楽園のように縮景や枯山水といった造園師の技術を楽しむ大名庭園とは雰囲気が違います。ここは草木が主役の草庭なのです。
江戸時代に佐原鞠塢(さわらきくう)という人物がこの土地を購入し、梅を植えた「新梅屋敷」が百花園のはじまり。その後、空襲で消失するも、人々の努力で復元。現在に至ります。園内から見えるスカイツリーは新しい形の借景でしょうか。※借景=庭園の外にある山や城などを、背景として取り込み景観を作る手法のこと。
9月に咲く花
夏の暑さも落ち着いた9月の後半。園内にはまだまだ元気に咲く花がたくさん。
濃い紫の花を咲かせるのは、秋の季語でもおなじみのキキョウ。星型の花は、明智氏の家紋でもおなじみです。
白い小さな花を咲かせるセンニンソウ。まるで線香花火みたいにぴょんぴょんと雄しべ雌しべが飛び出しています。
花が終わると、こんな風にわしゃわしゃとした形状へと変化。この綿毛がせんにんのヒゲのようなので、仙人草と名付けられたそうです。
棒のような葉に囲まれているタマスダレ。ヒガンバナ科の植物で、白い花弁と黄色いのくっきりとしたコントラストがキレイ。学名は「ゼフィランサス」。この名前を聞くと、頭の中に0083の数字が浮かぶ方も多いのでは。
山野草のヤマホトトギスの花は、花びらが反り返っておりかなり特徴的。ヤマホトトギスと聞くと「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」の俳句が浮かびますが、ここで詠われている山ホトトギスは鳥のこと。
ハギのトンネル
四季の花が楽しめる向島百花園において、とりわけ有名なのが9月後半に咲く萩の花。園内にある胡枝花洞(こしかどう)というトンネル状に並んだアーチには、ハギが絡みつきさながらハギのトンネルを作り上げています。
小柄で控えめな印象のハギの花も、集まると色鮮やかな花景色。行灯のような和風の照明装置も雰囲気あって良いです。
このトンネルにはクマンバチが頻繁に訪れます。花に夢中で人に向かってくることはありませんが、羽音が大きいのでびっくりします。
豊富な昆虫
植物が多いということは、もちろん昆虫もたくさん。ツマグロヒョウモンかと思われる蝶は、かなり近づいても逃げません。ちなみにこの蝶のサナギは、ハンダ付けのようなメタリックな突起があります。
せわしなく飛んでいるイチモンジセセリ。羽の裏側に白い点々が一列に並んでいるのが特徴です。
小さくひらひら飛んでいるのはウラナミシジミ。波のような模様と、オレンジがかったポイントが目印。シジミチョウはなかなか花に止まらず、またすぐに飛び立ってしまうので写真に撮るのがとても難しい。
他にも、スズムシやコオロギなど鳴く虫も多く生息しております。8月の終わりには「虫ききの会」というイベントも開催しているそう。
そしてとにかく蚊が多い!入口に虫除けスプレーがあるので必ず利用すべきです。私はそれに気づかずに園内散策していたため、信じられないほどたくさんの蚊に刺されました。
巨大な果実
「実りの秋」という言葉があるように、この季節になると花が終わり果実を結んでいる草木も多くあります。
最終形態を迎えたゴーヤ。オレンジ色に変色した実ははじけ、赤い種が見えています。この成熟した種はとても甘いらしい。
こちらは普通のナスとは違うテラジマナス。かつて百花園周辺の寺島村にて生産されていた江戸野菜の1つです。隅田川上流より流れてくる肥沃な土壌で栽培されていたそうです。
巨大なヘチマ発見!小学校でもおなじみだったのであまり気にしていませんでしたが、「ヘチマ」って変わった名前。もともとは繊維質な性質から「糸瓜(いとうり)」という名前でした。これがなまって「とうり」になります。ここまではまだ納得です。「と」の文字は、いろはにほへとで「へ」と「ち」の間にあることから「へち間(ま)」と呼ばれるようになったそう。(※諸説あり)
さらに、超巨大なひょうたんも!長さ50〜60cmほどと、かなり大きく育っています。受付周辺に同じくらいのひょうたんがあったのですが、かなりの重さ。よく弦が切れないものです。
ちいさなひょうたんもたくさん。なんだかかわいらしい。
にょろんと伸びた不思議な果実が垂れ下がる。こちらはヘビウリという、インドから来た植物。1m近い長い果実が、その名の通りヘビのように垂れ下がっています。
縦に割けた実はミツバアケビ。そのまま食べることもできるそう。
名前の通り、小さな白い実をたくさん付けているシロミノコムラサキ。なんだか無性にディッピンドッツが食べたくなってきました。
散らばる石碑
園内を散策していると目につくのは、たくさんの石碑。記念碑、歌碑など様々な石碑が全部で29個もあります。
それぞれ「いろはにほへと・・」の文字が振られているので、順番にめぐってみるのも楽しい。
『月岡芳年翁(つきおかよしとしおう)の碑』
月岡芳年は江戸時代の浮世絵師。「無惨絵」と呼ばれる、猟奇的な絵を描いており、「血まみれ芳年」という呼び名もあったそう。
『東京市碑』
向島百花園は、昭和13年に東京市に寄贈されます。それを記念する碑がこちら。
『芭蕉「春もやや」の句碑』
刻まれているのは、「春もやや けしきととのう 月と梅」という松尾芭蕉の俳句。梅の花と月で、春の訪れを感じさせる風情ある句です。
『きょうげん塚』
狂言作者である河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)。300を越える作品を残したことを記念し、後世に伝えるために建てられたそう。
小さい庭園なので、30分もあれば余裕で見て回れます。しかし、植物や石碑などの見どころがとても多いため、じっくり見ているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。様々な魅力がコンパクトに詰まった充実した庭園でした。
このあとは、東向島駅まで戻り東武博物館へ!
コメント
[…] […]