見捨てられた凄惨な歴史『アブチラガマ』(南城市)

沖縄県

南城市にあるアブチラガマは、沖縄地上戦の凄惨さ、そしてひめゆり学徒隊の活躍を語る上で忘れることのできない場所。避難所、軍事施設、そして陸軍病院として利用されていましたが、その歴史は悲しく恐ろしい。

訪問日:2022/3/29(火)

見捨てられたガマ

アブチラガマは南城市にある全長270mの洞窟。アブ=深い縦穴、チラ=崖、そしてガマ=自然洞窟という意味を持ちます。

沖縄戦の際には住民の避難場所、そして日本軍の地下陣地・倉庫として利用されてきました。

戦いが激化していくと、1945年5月1日からは南風原陸軍病院の分室としても利用されるようになります。軍医・看護婦・ひめゆり学徒が入洞。そして600人以上にも及ぶ負傷者がここに運び込まれます。

中でも破傷風患者と脳傷患者は回復させることができないと考えられており、真っ暗な洞窟の一角に放置されいたそう。ひめゆり学徒隊もそのエリアに入ることは許されず、水すらも与えられず、地獄絵図のような光景となっていたそうです。

このガマでは懸命な救護活動が行われていましたが、5月25日には撤退命令が下されます。歩行が困難な重症患者は「青酸カリ」が支給され、置き去りとされました。

見捨てられたアブチラガマに残った住民と負傷兵は、その後も攻撃を受け続けます。終戦後の1945年8月22日、奇跡的に生き残った負傷兵と住民は米軍の投降勧告に従いガマを脱出。一命をとりとめました。

見学には予約が必要

凄惨な歴史を持つアブチラガマですが、内部へ入ることができます。受付となっているのはガマのすぐ近くにある南部観光案内センター

ここでチケットを買うことができるのですが、ガマへ入るにはガイドの同伴が必須。個人だけでの入洞はできません。

ガイドは基本的には予約制となっています。私はたまたま予定が空いたので立ち寄ったところ、予約なしでも受付してもらえました。ただし、受付の方がガイドに連絡して確認するため、タイミングが悪いと参加できない可能性もあります。事前予約、もしくは訪問前に電話確認するのが無難です。

料金は入場料300円+ガイド料1,000円。懐中電灯がない場合はレンタル料100円、さらに軍手が無い場合は50円プラスとなります。ヘルメットは無料です。

今回ガイドしてくれたのは優しいおばちゃん。語り部のような雰囲気もある方です。

ここがアブチラガマの入り口。ここから先は撮影禁止となります。入る前に、ガイドさんとともにガマに向かって深く一礼。

(以降に載せる洞内のイメージ写真は、パンフレットの画像を加工したものになります)

ガイドさんと共に洞内へ

照明の無い真っ暗な洞窟内の道を、懐中電灯で照らしながら進んでいきます。ときには手すりにつかまったり、頭をぶつけそうな箇所も。

入口はとても狭く感じましたが、洞内を進むと想像以上に広い空間が広がっています。生活の要となっていた流水を溜め込む井戸をはじめ、便所や病棟なども置かれていました。

さらにガマの内部から見つかった数多くの遺物も安置されています。ひめゆり学徒隊が水を汲んでいたという水瓶、錆びついたなにかの破片、そして靴。歩けなくなった負傷兵が、天井から落ちる雫を靴の中に集めて飲んでいたそう。

米軍によって流しこまれたガソリンで黒く焼けた壁、爆破により吹き飛んだトタンが刺さった鍾乳洞など、ショッキングな光景も広がります。

ガイドさんがその場その場でいろいろな話を聞かせてくれますが、どれも痛々しく胸が締め付けられます。所要時間は約60分。長くも短くも感じませんでした。

行ってみた感想

真っ暗な洞窟の中で、その現場を前にして聴く凄惨な話。これほどまでにリアリティのある体験は他ではできないことでしょう。これまでいくつか戦争の傷跡が残るスポットをめぐってきましたが、最も生々しく胸に刺さる場所でした。

もし行くのを躊躇っている方がいましたら、迷わず「行った方が良い」と答えます。

私も最初、単純に「怖い」という気持ちから敬遠しておりましたが、いざ行ってみると怖いというより神聖な場所、といった雰囲気を感じました。また不謹慎と思われるでしょうが真っ暗な自然洞穴を歩くことに少しわくわくしてしまいました。

見学を終えて真っ暗な洞窟を出た後、太陽の光に照らされると不思議と晴れやかな気分に。嫌な気になりその後の観光に陰を落とすなんてこともありませんでした。

ここに来たからと言って、無理に沖縄戦について勉強したり、戦争反対を叫んだり、といった何かに迫られる必要はありません。この場所でこのようなことがあった、それを知るだけで充分です。その後にどう感じるかは個人の自由だと思います。

アクセスと営業情報

ゆいレール旭橋駅近くにある那覇バスターミナルから南城市役所行きのバスで約50分、バス停《世利田》下車後、徒歩12分ほど。(他にもルートあり)

車の場合は那覇空港から那覇空港自動車道経由で約30分。

営業時間 9:00~17:00
定休日 年末年始
料金 入壕料300円+ガイド料1,000円(持参していない場合は懐中電灯レンタル100円+軍手50円)
公式サイト https://abuchiragama.com/

※掲載の情報は2022年4月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

コメント

  1. […] それほどアクセス数は伸びませんでしたが、がんばったのは『チビチリガマ』、『シムクガマ』、『アブチラガマ』の戦争関連の記事、おもしろく書けたかなと思ったのが『ホエールウォッチング』、『海とくらしの史料館』、『狛江古墳群』あたり。ネタの仕込み具合としては、『シフクノオト 金澤寿司Dining』も思い出深いです・・・! […]

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