海に浮かぶ夜景と波乱万丈な立ち恵比寿像『浮見堂』(気仙沼市)

宮城県

海の上に架けられた遊歩道の先にある小さなお堂。気仙沼に浮かぶ姿は、まちのシンボルとしても人気の場所です。お堂の傍に設置された立ち恵比寿像には、苦難のヒストリーが詰まっていました。

訪問日:2022/10/9(日)

気仙沼のシンボル

宮城県北部に位置する気仙沼。海沿いに広がる港町で、フカヒレをはじめとした海産物が全国的な知名度を誇っています。

そんなまちのシンボルとして知られているのが、今回ご紹介します「浮見堂」。海上に続く真っ赤な遊歩道の先につくられた小さなお堂で、気仙沼湾が日本百景に選ばれた記念に設置されました。滋賀県琵琶湖の浮御堂をモチーフに、地元の有志が力を合わせて建立したそうです。

24時間自由に入ることができるので、気仙沼に宿泊した際には朝の散歩がてら訪問したり、お風呂上りにふらっと立ち寄ったりと、好きな時間に訪問することができます。今回はすっかり日が暮れた19時ごろ、いちば寿司でフカヒレメニューを堪能したあとに訪問してみました。

海面に映る夜景にうっとり

夜間はライトアップされており、華やかな雰囲気。お堂にはベンチも設置されており、海を眺めながらゆったりと過ごすのにもおすすめです。

浮見堂の先に広がるのは、漁港の夜景。規模はそれほど大きくありませんが、海面に反射する姿は幻想的。

そんなロマンティックな雰囲気からか、訪問したときはカップルが数組訪れていました。また、何人か釣りに勤しんでいる人の姿も。市街地が近いためか、夜でもにぎやかな雰囲気の場所です。

珍しい立ち恵比寿像

そんな遊歩道のそばに佇むのは、恵比寿様。

通常の恵比寿像はあぐらを組んでいたり、片足だけあぐらでもう片足は下ろした「半跏踏下坐」であったりと、座っていることがほとんど。しかし、ここの恵比寿像はしっかりと立ち上がった姿をしており「立ち恵比寿像」と呼ばれています。

良く見かける座っている恵比寿像はとても穏やかで訪れる人を迎えるような姿に見えますが、立ち上がった姿は勇ましさを感じます。この姿は、港を行きかう人に「いってらっしゃい」「おかえりなさい」と呼びかける姿という伝承が残っているそうです。

立ち恵比寿像のヒストリー

実は現在見ることができる立ち恵比寿像は3代目。そこには波乱の歴史が秘められていました。

まず「初代」は1932年に浮見堂と合わせて建立されました。金属で造られていたのですが、それが原因で戦時中の金属回収令により政府に献納されてしまいました。その後、台座には龍神様の祠が置かれていたそうです。

「2代目」が建立されたのは1988年。初代の姿を踏襲し、立ち恵比寿として造られ訪れる人々を出迎えていました。しかし、2011年の東日本大震災の津波によって流出してしまします。人々の懸命な捜索もむなしく、再び立ち恵比寿像は不在となってしまいます。

2代目恵比寿像(2010年撮影)

「3代目」の建立計画がはじまったのは2017年。その後、3年の歳月が過ぎた2020年ついに3代目立ち恵比寿像が建立されます。これまでの姿を踏襲しつつ、右足を一歩前へと進めた勇ましい姿へ。復興への強い意思を感じずにはいられません。

さらに、2代目はタイを抱えていましたが、3代目はカツオへと変化。実は気仙沼はカツオの水揚げが多く行われており、1997年からは10年連続で日本一を達成。2007年には「市の魚」としても指定されています。

苦難の歴史を歩んできた立ち恵比寿像ですが、時代の流れを映す鏡のような存在として、今日も訪れる人を笑顔で出迎えてくれます。

なお、行方不明であった2代目立ち恵比寿像は、3代目恵比寿像建立の計画が進んでいた2019年に海中より発見されます。現在、人々を見守る役目は3代目に譲り、五十鈴神社にて余生をすごしているそうです。

アクセスと駐車場情報

BRTの鹿折唐桑駅より徒歩13分ほど。車の場合は三陸自動車道の気仙沼港ICから9分、気仙沼鹿折ICから4分。駐車場は敷地内に数台分のスペースがありますが、気仙沼魚浜公園駐車場などに停めて歩いてもすぐです。

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