モダンでシュールな演出写真の世界『植田正治写真美術館』(伯耆町)

鳥取県

鳥取出身の写真家・植田正治の作品を収蔵・展示するミュージアム。緻密に計算された「演出写真」は、見るものをその世界に引き込みます。巨大なカメラの中に入れたり、大山にハットを被せたりといった楽しめる要素もあるため、写真にあまり詳しくない人でも楽しめる写真美術館です。

訪問日:2022/5/4(水)

モダンなミュージアム

鳥取県の伯耆町にある植田正治写真美術館は、写真家・植田正治(うえだ しょうじ)の作品を展示するために作られた個人美術館。

田んぼの中に突如現れるスタイリッシュなコンクリート建築。この印象的な建築を手掛けたのは、島根県生まれの建築家・高松伸(たかまつ しん)。仁摩サンドミュージアムやなんばヒップスなど、日本各地に作品を残す人物です。

想像していたよりも遥かにスケールが大きいです!!訪問前に外観の写真はWebサイトなどで見ていたのですが、いざ目の前に立つとその大きさに驚かされます。

写真家・植田正治

さて、まずは写真家・植田正治についてさらっとまとめてみますね。

植田正治は1913年に鳥取県境港市に生まれます。当初は画家を目指していたものの、中学3年生頃から写真の魅力にとりつかれていきます。最初は画家になるために美術学校への入学を希望していましたが、両親の反対を受けて断念。その代わり、高価な外国製カメラを買ってもらい、米子写友会という写真クラブへ。そこで表現方法を磨いたり、様々な作品を見ることで表現としての写真の魅力を実感していきます。

その後、東京のオリエンタル写真学校に入学、卒業後は帰郷して19歳の若さで写真館「植田写真場」をオープンします。

仕事としての写真とは別に、自分の写真も撮り続け、多くの写真雑誌や展覧会に入選。写真家としての頭角を表していきます。国際的な評価を得た植田の写真は“Ueda-cho”(植田調)として広く知られていったそう。

植田正治の世界

ざっくりと人柄がわかったところで、作品を見に行ってみましょう!植田正治写真美術館は、植田正治本人から寄贈された12,000点の作品を収蔵、常設展示を行っています。展示室は撮影禁止だったので、イメージとして購入したポストカードの写真を載せておきますね。

代表作である「少女四態」(1939年)。この作品は偶然を切り取ったのではなく、ポーズや立ち位置など徹底したディレクションで演出を行って撮影されています。このテクニックは「演出写真」と呼ばれているそうです。

こちらは植田正治自身と家族を映した「パパとママとコドモたち」(1949年)。いわゆる家族写真なのですが、植田正治の手にかかればこんなにもモダンでおしゃれな雰囲気。被写体それぞれが自由な立ち振る舞いをしているように見え、まるで物語の表紙を見ているように想像が膨らみます。

鳥取砂丘を舞台とした作品も数多く残しています。こちらは砂丘をバックにハットが置かれた「シリーズ〈砂丘モード〉より」(1983年)。遠近法で、まるで帽子の上に人が乗っているような構図がユニークです。

自らの作品以外にも、ファッションブランドTAKEO KIKUCHIのカタログや雑誌「BRUTUS」などの撮影も行っています。また、近年では福山雅治の10thシングル「HELLO」のCDジャケットも手掛けております。知らず知らずのうちに植田作品にふれているかもしれませんね。

ハットをかぶった大山

さて、この美術館の見どころは展示室だけではありません。建物に刻まれたスリットの窓から見えるのは、雄大にそびえる中国地方の最高峰・大山(だいせん)。その美しい姿から伯耆富士や出雲富士とも呼ばれています。

よく見ると下に張られた水面に大山が写り、「逆さ大山」にもなっています。

大山を見ることができるスリットは3ヶ所ほどありますが、そのうち1つの窓ガラスには黒いハットが貼られております。上手くカメラを向けると大山に帽子を被せることができるのです。

遠近法のため、撮る位置によって帽子の大きさが変わります。ガラス窓に近づくと、ちょっと大山には大きすぎる帽子にも変化。

さきほど紹介した作品にも映し出されていた通り、ハットは植田作品において頻出のモチーフ。誰でも気軽に植田正治風な写真撮影が楽しめます。カメラマンになったつもりで色々と遊んでみると面白いです!

巨大なカメラの中へ

館内には映像展示室もあります。ここでは、毎時00/30分に15分間のプログラムが上映されており、カメラの仕組みや歴史、植田正治のヒストリーが映し出されます。出入りは自由なので、気軽に鑑賞できます。

この展示室、実は巨大なカメラとなっています。前面上部には世界最大のカメラレンズが取り付けられており、プログラムの最初と最後に大山を映し出します。

これは録画された映像ではなく現在の大山。そのため、天候次第ではキレイに見えないこともあるそう。

映像室の外には、ここで使用されている世界最大のカメラレンズの実物も展示されています。732.2mm、625kgというとんでもない大きさです。

行ってみた感想

写真美術館と聞いたとき、写真について学んだことはない私が果たしてその魅力に気づけるか不安でした。しかし、実際に行ってみると大山を望む窓をはじめとしたモダンな建築や映像作品などとっつきやすい要素がたくさん。

作品もそれぞれユーモアがあったり、シュールレアリスムのような不思議な雰囲気だったりと、引き込まれるものばかり。解説も多いため、写真の知識が無くても問題なく楽しめました!

一通り館内を見終えたので、ベンチに腰かけてぼんやりと大山を眺めていたら、突然噴水が!

アクセスと営業情報

最寄り駅はJR伯備線の岸本駅ですが、3kmも離れているため、徒歩だと少々困難。タクシーを使えば5分ほどです。また、米子駅からタクシーに乗った場合は約25分でアクセス。

車の場合は米子自動車道の溝口ICまたは米子ICから約15分、大山高原スマートICからは約5分ほど。無料駐車場を備えています。

とっとり花回廊のすぐ近くなので、合わせての訪問もおすすめです!

開館時間 10:00~17:00
休館日 火曜
料金 1,000円
公式サイト https://www.houki-town.jp/ueda/

※掲載の情報は2022年6月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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