「アカエイ伝説・流下式製塩所・えびす様」 ゆるやかな島時間が流れる『通詞島』へ

天草諸島

天草下島から橋で渡ることができる通詞島(つうじしま)は、離島の趣をよく残す穏やかな小島。民俗資料館や製塩所、赤エイにまつわる伝説や町中のえびす様など、ふらっと散歩するのにぴったりな島です。

訪問日:2019/10/6(日) 

長閑な空気の島


通詞島は周囲4kmの小さな島。天草下島の北部から通詞大橋という長さ184mの橋で渡ることができます。イルカウォッチングの乗船場となる天草市イルカセンターのすぐ近くなので、クルーズを終えたあとにふらっと訪れるのにぴったり。

通詞大橋を渡るとすぐに広がる港町。細い道が入り組む集落となっております。このようなスタイルを地元の言葉で「せどや」というらしい。

橋で繋がってはいますが、離島らしい長閑な雰囲気でとてもゆったりした島です。集落は細い道ですが、それ以外は車道も整備されているため、車でも回ることができます。

3体のえびす様

そんな通詞島の集落には大漁祈願や海上安全を願ってえびす様が祀られています。観光マップを見ると、全部で3体。どれもすぐ近くなので、巡ってみることにしました。

1体目は港の漁協のすぐ隣。赤い帽子に青と緑の衣をまとったカラフルなえびす様。手に持っているのは本物の釣竿。

2体目は漁協からすぐ近くの民家の前。先ほどのえびす様とは打って変わって石造りで無骨な印象。きっと長い間この島を見守ってきたのではないでしょうか。

3体目は通詞大橋を渡ってすぐ左の道沿い。青と白と金色の爽やかなえびす様。こちらはなんと2体並んだ親子仕立て。この親子えびす様はイラストになっており、観光マップにキャラクターとして描かれています。

地図に書かれていたのはこの3体ですが、それ以外にも存在しているらしい!時間に余裕がある方は島を散策しつつ、隠れたえびす様を探してみるのも楽しそう。

五和歴史民俗資料館で島を知る


島の中央を登ったところにあるのは、五和歴史民俗資料館。島の歴史を知ることができる小さなミュージアムです。入館料は無料。

並んでいるは、少し変わった形の土器。お椀状なのですが、下に脚が一本ついたキノコのような形状をしています。

こちらは、古墳時代から奈良時代にかけて行われていた塩作りのための土器。天草式製塩土器という名で、海水を入れて熱することで塩を作っていたそう。
塩ができたあとは、足を折ってそのまま器として利用していたと考えられており、折った足もたくさん出土しています。

漁業に関する資料も豊富。こちらは潜水漁法をする男性の人形。鋭く磨いた「尖頭状石器」を用いて、アワビをとっています。

この人形なんと名前があります。その名は「ほんだくん」。絶妙なユルさです!KKT(くまもと県民テレビ)の番組で英太郎という方により命名されたそうです。

館内にはイルカの見える展示室もあります。望遠鏡が設置されており、館長さんによると、ほぼ毎日イルカを見ることができるそうです。

島を見渡す展望台

五和歴史民俗資料館の後ろには階段があります。登るとそこは開放的な展望台!

左奥に見えるのは風力発電の風車で、熊本県で最初に造られたそうです。畑の真ん中に立つ真っ白な風車は、まるで波照間島のようです。

資料館の手前もかなりの展望スポット。こちらからは島の北部や、天草下島と繋がる通詞大橋が一望できます。

先ほどエビス様を見つけた、せどや集落。上から眺めると、民家が密集しているのがよくわかります。そしてこちら側にも白い風車が。通詞島には2本の風車が立っているのです。

アカエイの伝説が残る三天宮


五和歴史民俗資料館のすぐ隣にある、弁財天・大黒天・毘沙門天の3体の神様をまつった神社。

この神社には弁財天とアカエイにまつわる伝説が記されています。

かつて通詞島に数千のエーガッチョ(赤エイ)が現れました。弁天様を中心にそれぞれ神様のお伴が乗っていたそう。その神様は「赤エイを大事にすることで、島の漁の守り神になる」というメッセージを残しました。その言いつけを守り、赤エイを大切にすることで島の漁師たちの暮らしはよくなりました。(案内板の要約)

島の人々は現在でもその決まりを守っており、赤エイを食べることは無く、獲ってもすぐに逃がしているとのことです。

なお、島では赤エイが餌付けされており、5月中旬から8月終わりにかけて集落近くの海岸に集まってくるらしい。エイの餌付けなんてこれまで見たことのない光景!ぜひとも見てみたいのですが、基本エイがやってくるのは朝方とのことです。もし通詞島で宿泊する方は、お見逃しなく!

食事もできる温泉施設ユメール


島の真ん中にあるユメール。こちらは人工温泉による日帰り入浴施設。

食事処では天草ちゃんぽんやウツボ料理などがあるとの情報だったのですが、今日はランチバイキングのみでした。バイキングのお値段は1,200円ととってもリーズナブル。

売店では島の特産品も扱っています。天草の地アイスも揃っており、「いくり」「モリンガ」「地たこ醤油」など他ではお目にかかれないようなレアなフレーバーが興味を惹きます。入浴せずとも、お土産探しに立ち寄ってみるのも良いのでは無いでしょうか。

また、ユメールではレンタサイクルもやってます。通詞島は多少起伏がありますが、電動自転車を借りることができるので、きっとすいすい快適にめぐれるでしょう。料金は2時間600円から。

太陽の力で塩を作る自然食品研究会


名前からは何の施設か想像し難い普通の一軒家のような施設。ここは天然塩を製造している製塩所です。外から眺めていると、おじさんが施設内部を解説してくれました。

製塩には様々なスタイルがありますが、ここで行われているのは流下式。海水をこちらの木枠に掛けられた網へと吹付けます。天日にさらして流れることで水分が蒸発していき、ここを循環することで徐々に塩分濃度を高めていきます。万が一雨が降ったら即停止。少しでも雨水が入ってしまったら、その海水はもう廃棄するしかないそう。


その後、濃縮された海水はこちらの棚で天日干し。通常は窯で炊くらしいのですが、ここでは自然に水気が飛ぶまで干し続けるそう。そうしてできた塩を、完全天日塩と呼びます。この製法を行っているところは、日本でもわずかしかないらしいです。

こちらでは塩の販売を行っています。通常1袋700円ですが、ここは極上850円を!普通の塩に比べるとたしかに割高ですが、見学させてもらえたし、解説もいただけたのでこれくらい安いものです。塩そのもの以外にも、化粧水やごま塩、塩バニラアイスなんかも売っています。

通詞島にはもう1軒ソルトファーム塩工房という製塩所があります。そちらでは、世界初のタワー式濃縮法による製塩が行われているらしい。

 


 

いろいろまわって、いろいろ見れて大満足!
長い時間過ごした気分で時刻を見ると12:40。島に来てからたった70分しか経っていませんでした。びっくりするほど時間の流れがゆっくりに感じる場所でした。

通詞大橋を渡って天草下島に戻り、そのまま海沿いを南へと進みます。

すぐに目に入るのはおっぱい岩。誰がどうみてもおっぱいにしか見えない不思議な岩があるのですが、干潮時にしか姿を現しません。タイミングを誤って満潮時に来てしまったので拝むことはできませんでした。

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