貴重な妖怪資料やデジタルコンテンツが並ぶ妖怪ミュージアム。妖怪の持つ神秘性だけにとらわれず、商業化していく様子も抑えた多角的な展示が非常にユニーク。様々な収蔵品の中でも企画展示に登場する「魔像」はかなりのインパクトで、禍々しくもユーモラスな造形は他では見ることのできない独特な雰囲気を持ちます。
レアな公立妖怪ミュージアム
広島県三次(みよし)市にある三次もののけミュージアム。正式名称は「湯本豪一記念日本妖怪博物館」といい、妖怪研究家である湯本豪一氏が集めた妖怪資料や作品を展示した博物館です。
このように書くと、私設のマニアックなヴンダーカンマー的な施設をイメージされるかもしれませんが、実は市によって運営される博物館。公立の妖怪博物館は日本初とのことです。
この三次市は江戸時代につくられた妖怪物語「稲生物怪録(いのう もののけろく)」の舞台。調査のために何度もこの地に足を運んでいた湯本氏は、三次市から町おこしのための博物館開設の話を持ち掛けられます。これに合意した湯本氏は2016年に自身の妖怪コレクションを市に寄贈。2019年にもののけミュージアムとしてオープンしました。
受付から展示室は中の見えない扉。なんだかお化け屋敷みたいな演出に心が踊ります!
香ばしい妖怪展示
薄暗い館内へと足を踏み入れると、おどろおどろしい妖怪の世界・・・と思いきや、わりとスタンダードなミュージアムの雰囲気。湯本氏の5,000点にも及ぶコレクションを収蔵しており、その一部が常設展示されています。
こちらは雷獣のミイラ。静岡県の蔵の中から発見され、雷獣と書かれた和紙にくるまっていたそう。
絵図をもとに立体化された妖怪モデルも。不思議な姿をした妖怪たちは、どこかかわいらいいビジュアル。ゆるキャラみたいにも見えますね。
展示室はそれほど広くないため、全て見るのにそれほど時間はかかりません。
おもしろすぎる妖怪資料
たくさんの妖怪たちがどこかへ向かう様子を描いた「百鬼夜行絵巻」。百鬼夜行をテーマにした絵巻は数多く存在していますが、それぞれ描かれているものは異なっています。
江戸時代に描かれた「神農鬼が島退治絵巻」は農業と医学の神である神農が、家来とともに鬼退治するという桃太郎をアレンジしたストーリー。鬼退治のための必殺技は、なんと「おなら」!!!!!絵巻物ときくととっつきにくそうな印象ですが、なかなかにコミカルです。
こちらは文政10年に斎藤月岑によって描かれた「人面草紙」。ゆるすぎる人面キャラクターがとってもユーモラス。
このキャラはミュージアムショップにてグッズ展開もされています。もはやマスコットキャラクターのような存在感です。
遊べるデジタルコンテンツ
こちらはプロジェクションマッピングで映し出されたデジタル百鬼夜行絵巻。様々な妖怪たちが次々と巻物の上を通り抜けて行きます。
さらに、手をかざすと妖怪たちは絵巻から壁に飛び出していきます!インタラクティブなコンテンツでとっても楽しめます。
さらに、入場料金プラス120円で入れるチームラボ★妖怪遊園地もあります。
デジタルアートで話題のチームラボとのコラボエリアで、好きな色に塗った妖怪が壁に現れる「お絵かき妖怪とピープル」や、マッピングされた妖怪が動き回る「妖怪が住まうテーブル」、おもしろ妖怪写真が撮れる「妖怪カメラ」と3つのアトラクションで遊ぶことができます。
キャラクターとしての妖怪
妖怪=不思議な伝説としてだけでなく、製品化されて人々に愛されるというキャラクタービジネス的な視点でも紹介しているのがこのミュージアムの面白いところ。
こちらの細工は妖怪根付。根付というのはは、印籠や巾着が帯から落ちないようにつけるもの。江戸時代や明治時代には、デフォルメされた妖怪の根付が作られていました。今でいうキャラクターストラップのような感覚しょうかね。
さらに郷土玩具としても妖怪は人気のテーマ。からくり人形や魔除け人形など、いろいろな形でつくられていました。
昭和に入ると子供向けのおもちゃのテーマとして人気に。カードや人形など、近代に入ってもますます人気は続きます。思えば「ゲゲゲの鬼太郎」や「妖怪ウォッチ」、近年の「アマビエの流行」など、科学が発達した現代においても妖怪の人気は続いていますね。
『稲生物怪録』のストーリー
冒頭でも触れた妖怪物語「稲生物怪録」とは、いったいどんなストーリーなのでしょうか。
館内の一部屋では稲生物怪録の資料やそれに関する展示がたくさん。本や絵巻など多くの作品が作られていますが、いつ誰が最初に作ったのかははっきりしていないそう。作中には実在する場所が多く登場。さらに、稲生平太郎は実在する人物。急にリアリティが・・・。
このストーリー、なんだかすごく見覚えがあると思ったのですが「ぼくはへいたろう」という絵本が稲生物怪録をテーマにした絵本でした!私のように「なんだか知っているような気がする・・・」という方は、ぜひ検索してみてください!きっと見覚えのある表紙がでてくるはずです。
※稲生物怪録の展示室のみ写真撮影禁止でした
企画展に登場する謎の魔像
館内の半分は企画展示室となっており、ユニークな展覧会を開催しております。私が訪問した2022年6月9日~9月13日の期間は、春の企画展「妖怪のかたち2 あつめて・くらべて・かんがえる」を開催しておりました。
展示の中で特に目を引くのは、博物館が収蔵する合計136体にも及ぶ魔像。まるで特撮の怪人のような少々グロテスクなデザインですが、デフォルメされているためどこかかわいらしさもあるクセになる作品です
技術的には江戸時代後期頃の作品とされていますが、いつ誰が何のために作ったのかは謎。「現代に作られたのでは」という意見もあるようですが、それならばもう少し情報があっても良さそうに思えます。
この魔像は常設展示ではないため、いつでも見られるというわけではありません。しかし、これまで2019年・2020年の企画展でも展示されてきていますので、この先も1年に1回程度展示が行われる可能性は高いです!気になる方は公式情報をチェックしてみてください!
ちなみに、今回の展示では総選挙も行われていました・・・!!あなたの「推し魔像」を探してみてはいかがでしょうか?
アクセスと営業情報
JR三次駅からバスでおよそ8分。中国自動車道の三次ICから約10分。
開館時間 | 9:00~17:00 |
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休館日 | 水曜、年末年始 |
料金 | 480円(※チームラボ妖怪遊園地利用の場合は600円) |
公式サイト | https://miyoshi-mononoke.jp/ |
※掲載の情報は2022年6月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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