西洋絵画にどっぷり浸るアートスポット『ひろしま美術館』(広島市)

広島県

ヨーロッパの絵画を中心に扱う美術館。シンプルで静かな雰囲気の館内は、作品とじっくり向き合うことができます。ゴッホやピカソ、モネなど有名画家の作品も多く並びます。

開館時間:9:00〜17:00
休館日:月曜
料金:600円
2020/9/24(木)

ひろしま美術館のアクセス

市内路面電車の「紙屋町東」、また広島バスセンターからそれぞれ徒歩5分ほど。広島城や原爆ドームからも歩いて行ける位置にあります。

広島市内には他にも、広島県立美術館、広島市現代美術館と名前が似ているミュージアムがあるため、混同しないようにご注意ください。

2つの世界遺産がモチーフの美術館

昭和53年に100周年を迎えた広島銀行が記念事業として設立した美術館。戦後の復興を支えた人々へのやすらぎの場所として、また原爆で命を落とした方々への鎮魂と平和への願いが込められています。

白く重厚な外壁の上にグリーンのドームが乗っかる印象的な展示室。この形状は、原爆ドームをイメージして造られています。

周囲は回廊になっており、ベンチも設置されています。こちらはなんと厳島神社がモデルとのこと。交通量も多くにぎやかな広島市内中心部にあって、俗世間と隔離されたかのようなほっとする空間です。

コンパクトで静かな館内

内部はアリスティドマイヨールのヴィーナスを中心としたホールになっており、その周囲に4つの常設展示室、さらに別棟に企画展用の4つの展示室があります。

白い壁に絵画が並ぶ空間は、いかにも美術館といった印象。作品名と作者名だけのシンプルな展示ですが、音声ガイダンスや公式ホームページを確認すると、詳細な解説を知ることができます。

そして、館内はフラッシュを焚かなければ写真撮影可能美術館で写真を撮ることは意見が分かれそうですが、額縁や壁など、美術館側の意図も含めた状態で切り取ることができるのがポイントです。

有名画家の作品

フランスを中心としたヨーロッパ美術がメインの展示作品。その中には、誰もが一度はその名を聞いたことがある有名画家の作品も多く飾られています。

アムステルダムの眺め by クロード・モネ
まだ少し冷え込む、早朝の港のような空気を感じる作品。停泊する舟の前にはたくさんの人影が並んでいます。これからどこかへ行くために乗船待ちなのか、それともどこからか来て船を降りているのか、色々とストーリーが考えられます。

女の半身像 by パブロ・ピカソ
1970年に描かれたピカソらしい独創的な作品。3本指や4本指、2つの鼻と謎のシルエットなどどこを見ても不思議に描かれており、理解しようとすると突き放されていきます。他にもピカソの作品は年代別で6点ほど展示されており、順に見ていくと驚くべき画風の変化を実感することができます。

ドービニーの庭 by フィンセント・ファン・ゴッホ
様々な緑色を組み合わせて描かれる植物。全体的に統一感のある色調ですが、絵の具の厚みで非常に立体的なので単調に感じることはありません。この作品には同名同構図の絵がもう一枚存在しており、現在ではスイスのバーゼル市美術館に収蔵されているそう。

要塞の眺め by アンリ・ルソー
ぼんやりと暗い世界には、いかにもルソーといったくすんだ色合いが全面に出ています。中央右下には、一人で佇む黒い人物が描かれている。ハットと杖から老紳士のような出で立ちですが、いったい何を思っているのでしょうか。

エコール・ド・パリ

1900年頃から1940年頃にかけてパリで活動していた画家たちの総称として、「エコール・ド・パリ(パリの学校)」という呼び方があります。世界各地より集まった画家たちは、モンマルトルやモンパルナスの共同アトリエで創作活動を行い、多くの作品を世に出していました。そんなパリ派と呼ばれる画家の作品も展示されています。

青いブラウスの婦人像 by アメデオ・モディリアーニ
佇んでいる青い服を着た女性。暗い背景の中に、暗い青がぼんやりと浮かび上がります。眉間にシワが寄っているように見えるその表情からは、恨みのようにも取れる眼差しを感じます。

ヴィテブスクの眺め by マルク・シャガール
ヴィテブスクというのはベラルーシの都市の名前。一見すると街の風景を描いたように見えるのですが、逆さまになった人、屋根の上の結婚式、空を飛ぶ楽器奏者、バイオリンを奏でるヤギなど、見れば見るほど不思議な世界が広がります。カラフルな色合いで少しコミカルに感じる作品です。

河のほとり by マルク・シャガール
青い世界の中で、男性が女性に花を送るロマンティックな作品。それを祝福するかのように舞う踊り子も、3人目の主役であるかのように描かれています。

個性派な絵画

多くの作品が並ぶ中で、目に止まった作品がこちら。

赤い家 by ベルナール・ビュフェ
ビュフェの特徴でもある黒い直線で描かれた赤い家と黒い橋。その前面と背面に配置された植物は、無機質な構造物との対比で力強く感じます。

雪の集落 by モーリス・ド・ヴラマンク
まるで白波のようや青白く輝く雪が特徴的。春を感じさせるものは何1つ描かれておらず、ただただ暗く重い雰囲気が漂います。

パリ、ポン=ヌフ by ポール・シニャック
1cmほどのピースが並べられて描かれたとってもカラフルな作品。ちぎり絵のような、粗めのドット絵のような雰囲気もありますが、色使いやディティールは非常に繊細。何だか明るい気持ちになれる絵です。

妖艶な日本画

西洋画だけでなく、黒田清輝や岸田劉生といった近代日本画も多く収蔵しています。数点展示されていたのですが、その中でもひときわ印象が強かったのがこちらの作品。

踊る女 by 甲斐庄楠音(かいのしょう ただおと)

妖艶な表情で踊る女性。滲み出したかのような赤色とその笑みを眺めているとゾクゾクしてきます。よくみると肩に担い棒を乗せており、背面には波のような模様も描かれています。これは日本舞踊の演目『汐汲み』ではないでしょうか。

作者である甲斐庄楠音は大正時代の日本画家。表面的な美しさよりももっと深い部分が滲み出たような、ダークでリアルな画風が特徴的。「きたない」といった評価を受けることもあったそうです。


広島市内の観光地の中では、少し地味な印象を受けるスポットですが、静かに絵と向き合うにはぴったりな美術館。戦争の歴史で心が重くなったとき、ちょっと一息入れるのに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

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