日本最古の歌集「万葉集」をテーマにしたミュージアム。再現された人々の暮らしや、映像コンテンツを通して「歌」の文化を非常にわかりやすく学ぶことができます。万葉劇場はかなり見応えがありますので、上映時間にあわせての訪問がおすすめです!
歌のミュージアム
万葉集をご存じでしょうか。奈良時代に編纂された現存する最古の和歌集。5・7・5・7・7のリズムで作られた短歌が多数収められています。天皇や貴族だけでなく、無名の兵士や農民まで、様々な人が詠んだ歌が入っているのが特徴。今でいうSNSのような空気も感じる歌集です。
奈良県立万葉文化館は、そんな万葉集や当時の文化に焦点を当てたミュージアム。
一階の企画展示は有料ですが、地下一階の一般展示室は無料で見学することができます。とりあえず今回は一般展示室を見学してみることにしました!
なお、古墳や遺跡など屋外の見どころが多い明日香村において、貴重な屋内スポット。暑い季節や寒い季節はちょっと休憩がてら立ち寄るのにも良さそうです。
万葉の世界へ
展示室への入口は、ミラーで仕立ての現代的な道。「歌とはなんだろう」というテーマのもと、「いしやーきいもー」「ちちんぷいぷい」「火の用心マッチいっぽん火事のもと」「色は匂へど」といった、馴染みのあるフレーズが飛び出します。ここは歌のふるさとである万葉集への導入部分なのです。
抜けた先は人形がたくさん置かれた空間。「歌の広場」というまるでカラオケ店みたいな名前のスペースは、海石榴市(つばいち)をはじめ東市、西市、軽市などをイメージした古代の市の風景が再現されています。
集まり歌を詠む人々や、歌を文字で記す人など、みな歌に関連した動きをとっています。落書きした土器、筆、木印、銅印など、古代の文房具も展示されていました。
「さやけしルーム」は光や音を通して万葉人が詠った四季のうつろいを感じる部屋。天井には星座と四神が映し出され、まるでプラネタリウムみたいな神秘的な空間です。
歌を掛け合う「歌垣」
映像コンテンツも多数。こちらのアニメーションでは歌垣の様子が紹介されています。
歌垣というのは、男女が集まり互いに歌をかけ合う儀式。歌われるのは求愛の歌であり、そこでカップルが成立するというものでした。
この映像で歌垣を行うのは、乱暴者で恐れられていた皇太子(後の武烈天皇)と鮪(しび)という2人の男性。影媛(かげひめ)をめぐり、お互いをディスりながらも、アンサーを返していく様子はまるでラップバトルのようでした。
人形と映像の万葉劇場
館内にある万葉劇場では、人形と映像による歌劇「額田王(ぬかたのおおきみ)」と「柿本人麻呂」、アニメーションの「万葉のふるさと」という3本の映像作品を上映。
訪問時はちょうど13:00からの額田王が始まるところでした。
万葉のヒロインである額田王の物語。飛鳥から近江へ遷る都、勃発する壬申の乱。情勢が不安定な中で額田王が思うことは・・・。様々な思いが歌にのせて語られていきます。
歌声が音楽としても楽しめる内容であり、高い芸術性も感じるコンテンポラリーな作品でした!
遺跡と共存する文化施設
入口から展示室へ向かう途中、窓から見えるのは中庭。ここ、実は飛鳥池工房遺跡の復元遺構なのです。
農業用のため池であった飛鳥池。工房の遺跡が見つかり、仏像鋳型、瓦、漆、ガラスなど様々なものが出土。当時、最先端のものづくり工房であったことが判明しました。
この遺跡は、このミュージアムが建設の際の発掘調査により見つかったもの。そのため急遽、建設計画を変更し「遺跡と共存する文化施設」となったのです。
特別展示室には、出土した木簡も多数展示されています。その中のひとつには「天皇」と記されたものも。
天皇の称号がいつから生まれたのかははっきりと分かっておりませんが、この木簡により7世紀後半の天智天皇の頃には使用されていたことが推測されます。
また、この遺跡からは富本銭(ふほんせん)という貨幣が出土。展示室の館内の一部はガラス床になっており、その出土したポイントを見ることもできます。
ちなみにこの富本銭、日本最古の貨幣として知られています。
あれ、和同開珎じゃなかったっけ?という方もいらっしゃるかもしれませんが、研究が進み富本銭の方が古いことが判明したのです。ただし、富本銭は実際に流通していたかはわかっておらず、流通した最初の貨幣としては「和同開珎」が正解で良さそう。
さぁ、スッキリしたところでお次は日本最古の寺ともいわれる、飛鳥寺へと向かいます!
アクセスと営業情報
開館時間 | 10:00~17:30 |
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休館日 | 月曜、年末年始 |
料金 | 無料 ※展覧会は別料金 |
公式サイト | https://www.manyo.jp/ |
※掲載の情報は2025年5月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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