会津総鎮守である由緒正しき伊佐須美神社。その境内には殺生石を祀る稲荷神社が建立されています。そこにはどのような謂れがあるのでしょうか。
殺生石のあらすじ
私のブログを読んでくださっている方はもうすっかりおなじみとなってしまっているかもしれませんが、栃木・岡山・大分に続き今回もまた殺生石についての記事。
ざっくりと振り返りますが、中国やインドで悪事を働いた大妖怪・九尾の狐(玉藻前)は日本に上陸。平安時代の日本を混乱に陥れようとしますが、陰陽師である安倍泰成(安倍晴明の子孫)にその姿を見破られます。武士によって追い詰められた九尾の狐は、那須にてついに退治されます。
しかし、九尾の狐は石に変化。毒を放出して、近づくものの命を奪い続けます。誰も近づくことができず、人々は「殺生石」と呼ぶようになります。
時が進み、南北朝時代になると玄翁という名の僧が金槌でこれを破壊。その破片は日本各地へと飛び散ったそうです。
日本各地に伝説が残されていますが、その中でも気になるのはWikipediaに記載された「高田という地名の場所に飛散した」という情報。実際に美作国高田(岡山県真庭市)には、祀られた殺生石が残っていました。
会津高田もその候補の一か所ですが、会津に高田という地名はありません・・・・と思いきや、現在は地名が変わり美里町となっていました。
ということで、今回は美里町(旧・会津高田)の殺生石を探しに行きます!
まずは伊佐須美神社へ
美里町の殺生石は、思いのほか簡単に見つかります。なぜなら、殺生石稲荷神社というそのまんまのネーミングの神社が存在するのです。
伊佐須美神社の末社。ということで、まずは本社である伊佐須美神社へ。注連縄のかけられた大きな赤い鳥居は重なかなかのインパクト。
鳥居に続くのは楼門。白木造りで重厚感のある建築です。
社殿は2008年の火災で焼失。現在は拝殿跡に建てられた仮社殿であるそう。テレビ埼玉によって奉納された提灯が目立っているのが気になるところ。ちらっと調べてみたところ、なぜかテレビ埼玉にてこの神社のCMが放送されていたそうです。
他にも回遊式庭園の「あやめ苑」や、知恵の神様として祀られる「菅原神社」、「天海大僧正手植えのヒノキ」、ヒノキに寄り添う「縁結びのモミジ」、高く伸び上がる「飛竜の藤」という3本の御神木など、見どころは多いです。
殺生石稲荷神社
殺生石稲荷神社は、伊佐須美神社のすぐそば。赤い鳥居が連なる先にあります。
こちらが殺生石稲荷神社。御祭神は、伏見稲荷大社の主祭神としても知られる宇迦魂神(うかのみたまのかみ)。
社殿に向かって左側には、木々に隠れるように鎮座する石が。これこそがここに祀られる殺生石。案内板には、玄翁和尚によって打ち砕かれた破片との記載も。大分の殺生石ではこのエピソードの記載はありませんでしたが、ここではしっかりと書かれていました。
この殺生石稲荷神社の創建は江戸時代。川の氾濫がおこり多くの犠牲者が出た際、それを殺生石の祟りと考えて、水神とともに祀ることで災いを鎮めようとしたそうです。
実はホンモノじゃない!?
ネットで調べていると、この大きな石は本物ではないという書き込みをみつけました。まさかニセモノということなのでしょうか?
どうやらこの殺生石、実はモニュメントであるそう。実物はもっと小さいのですが、しっかり神社にて祀られているそうです。
もしかして、本殿の手前に置かれた破片のような石でしょうか・・・?
そう思ったのですが、実物は地中に埋まっているとのウワサも。
ところで気になるのは時系列。殺生石が全国に飛び散ったのは至徳2年(1385年)、この神社の創建は天保12年(1841年)と、祀られるまでの間にかなりの年月が経っています。その空白の期間、この石はいったいどのような扱いだったのでしょうか。殺生石と伝えられ誰も近寄らなかったのでしょうかね・・・?
私の調査によると、この九尾の狐のストーリーは、江戸時代に浄瑠璃や歌舞伎、浮世絵といった題材になり広く知れ渡ったそうです。もしかしたら、この地に飛来したという伝説もそのときに生まれたかもしれませんね。
というか、冒頭で記載したあらすじも、江戸時代に大幅に脚色されている可能性もあります。とはいえフィクションで片付けてしまうには惜しいので、それはいったん置いておきましょう・・・!ということで、私の殺生石めぐりはもう少し続きます。
アクセスと駐車場情報
JR只見線の会津高田駅から徒歩30分ほど。前述の通り、伊佐須美神社を目指していけば迷うことなく訪問できます。
駐車場は伊佐須美神社の鳥居前に数台分、もしくは殺生石稲荷神社のすぐそばにもあります。
コメント
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