陶芸のイメージが覆るモダンなミュージアム『茨城県陶芸美術館』(笠間市)

茨城県

陶芸のまちとして知られる笠間にある笠間陶芸美術館は、近現代の陶芸を中心に扱うミュージアム。自由な作風で造られた陶芸は、美しいものからユーモアあふれるものまで多種多様。「陶芸なんて面白いの?」そう感じる方にこそおすすめな美術館です。

2021/5/28(金)

陶芸専門のミュージアム

「伝統工芸と新しい造形美術」をテーマにした笠間芸術の森公園。イベント広場や、ロングすべり台などの遊具を備えた「あそびの杜」、笠間焼の展示販売や体験が楽しめる「笠間工芸の丘」など、様々なスポットが集まったレジャー施設です。

そんな公園内にあるのが茨城県陶芸美術館。陶芸の魅力を幅広い世代に伝えるために作られました。2000年オープンの新しい美術館なので、館内はかなりキレイで見やすく作られています。

笠間焼の歴史

「笠間焼」ときくと、古来より続く伝統文化のイメージがありますが、実はその歴史はそこまで古くありません。はじまったのは江戸時代といわれており、美濃(岐阜県)や有田(佐賀県)といった他の地域に比べると新しめのやきものなのです。

笠間に陶芸をもたらしたのは、笠間藩箱田村の久野半右衛門道延という人物。凶作で荒廃した農村に新しい産業を見つけるため旅に出た道延は、信楽(滋賀県)で陶工の長右衛門と出会います。彼から信楽焼を学んだことにルーツを持つため、笠間焼は信楽焼からの影響を大きく受けています。

その後、久野瀬兵衛益信という人物が、信楽の陶工・吉三郎を連れてくることで本格的な陶器生産が開始。藩主の庇護も得て、やきもの作りが盛んになっていきます。

昭和初期まではすり鉢や水瓶など、生活に密着した製品を作っていましたが、水道やガスの発達に伴う生活様式の変化によって、その役目は失われていきます。

低迷を迎えた笠間焼ですが、戦後に笠間に窯業指導所が開設されると、全国から作陶家が集まるように。様々な作品が作られ、再び隆盛を迎えることになりました、

個性的な陶芸作品

展示内容は近代以降の作品がメイン。そのため、かなり自由な作風の陶芸を見ることができます。

『水の骨』by 佐藤 雅之
くじらの骨のような白い曲線に、背びれのようなものが生えている不思議な作品。色合いがとっても爽やかで、ずっと眺めていられます。原料となる泥状の磁土を「水」に、水分が失われて乾いた姿を「骨」に例えているそうです。

『祝日本遺産・カサマシコアマビエ』by 田崎 太郎
2020年に造られた作品。笠間と益子が日本遺産に指定されたということに、アマビエを組み合わせた、令和を象徴するかのようなテーマ。このように時代を直接的に反映させた作品もあるのですね。

『色絵金彩猫図鼠高浮彫花瓶』by 初代 宮川 香山
ネコが描かれた花瓶にネズミの立体が付けられたユニークな作品。よく見ると右側のネズミは大根に、左側のネズミはタコに群がっています。明治時代前期に作られた作品で、民芸運動の興る以前にもこのような作品が作られていたことに驚きです。

自由過ぎる笠間焼

笠間焼を表す言葉に「特徴がないのが特徴」という表現があります。伝統にとらわれない作品を作ることができるため、若い陶芸家が集まり、従来の枠にとらわれない作品が次々と生み出されていきました。

ここ陶芸美術館にも、陶芸のイメージが覆るような作品が多く展示されています。

『minority』by 田原 形子
ネジや歯車でできたスチームパンクのような世界観の作品。整列した28体の兵隊たちは、よく見るとそれぞれ模様やデザインが異なっており個性があります。タイトルのminorityは、「みんなそれぞれ違う」という意味かと思ったのですが、明らかに1体だけモチーフが違うマイノリティが混じっていました。

『White Trichogomphus』by 堀 貴春
白くなめらかな姿のカブトムシ。パーツそれぞれは非常にリアルな作りですが、全体のバランスは少しデフォルメされているため可愛らしさも感じます。ぐわんと伸びたツノは光輝き、とっても美しいです。

左『IZANAMI -death-』右『TOYOTAMAHIME -birth-』by 大石 早矢香
動物や花の中に人体が埋まる、なんとも神秘的な作品。いずれも日本神話の神の名を冠しており、人を超越した世界を感じさせてくれます。左は植物的、右は動物的など、2つの作品を比較してみると面白いです。

『UFO鍋』中田 英寿 × 植葉 香澄 × 奈良 美智
真っ白い鍋から不思議な生き物が飛び出す、ポップでワンダーな作品。中田英寿の出したお題「土鍋」に対し、奈良美智らしい可愛らしさと植葉香澄の華やかさが組み合わせっています。平成23年に開催された特別展「“REVALUE NIPPON PROJECT”‐中田英寿、現代陶芸と出会う‐」の際に展示された作品。

 

アクセスと営業情報

JR水戸線の笠間駅から徒歩25分ほど。もしくは友部駅からかさま観光周遊バスで15分ほど。
車の場合は北関東自動車道の友部ICから約10分、笠間西ICから約15分。駐車場は笠間芸術の森公園の「北駐車場」が近くておすすめです。

開館時間 9:30~17:00
休館日 月曜
料金 コレクション展:320円 ※企画展は別料金
公式サイト http://www.tougei.museum.ibk.ed.jp/

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