史跡だけでなく、アート作品も多く存在する本島。その多くは歴史に根差しており、アートというフォーマットを通して過去を現代へと伝えています。
瀬戸芸会場の島
本島(ほんじま)3本目である今回は、島に点在するアート作品について。本島は瀬戸内国際芸術祭の会場となっている島であり、島内には多数のアートが点在しています。
「アートの島」といいますと直島や豊島など瀬戸内海の他の島に見劣りしてしまうかもしれませんが、「歴史を物語るアート」という点において、他とは異なる独特の世界観が広がります。
なお、内部に入るタイプの作品は、瀬戸内国際芸術祭の「秋会期」限定の公開。今回は期間外のタイミングで訪れたので、外観のみの見学が多いです。
たまたま通りかかった近くの本島中学校の前には色とりどりのブイが飾られています。使わなくなった漁具をペイントしたかわいらしい作品たち。
①Vertrek「出航」
フェリーの着岸する本島泊港のすぐ近くにある作品。今にも動き出しそうな赤い帆船 。後方へ伸びる線が、船に動きを付けています。
《Vertrek「出航」》by 石井章
かつて塩飽水軍の根拠地だった本島は、優れた造船技術を持つ船のスペシャリストが暮らしていました。日本で初めて太平洋を往復した「咸臨丸」にも塩飽の人々が多く乗っていたといいます。この作品はそんな塩飽の人々の技術を広く伝えるために作られた作品であるそう。
②シーボルトガーデン
医師であり博物学者でもあるシーボルトは、瀬戸内の魅力をヨーロッパへ伝えた人物でもあります。
《シーボルトガーデン》by 川口豊・内藤香織
シーボルトガーデンは、そんなシーボルトの名を冠した様々な植物が植えられたお庭。徐々に自然に帰りつつある、そんな雰囲気の作品です。
芸術祭の期間中はビデオインスタレーションが展示されていたらしいですが、訪問時は公開停止しておりました。
③咸臨の家
青、黄、灰を中心としたカラフルな板で彩られた家。よくみると木や鳥が描かれています。こちらの家は、先ほど述べた「咸臨丸」の水夫の生家なのです。
《咸臨の家》by 眞壁陸二
秋会期期間中は内部が公開されていたそう。カラフルな世界は、館内へと続いていきます。
④漆喰・鏝絵かんばんプロジェクト
普通の民家など、島内7ヶ所に掲げられたアート作品。まさに生活に溶け込んでいる芸術です。
《漆喰・鏝絵かんばんプロジェクト》by 村尾かずこ
描かれているのは、昭和58年より続く島の一大イベント「マイペースマラソン」。どことなく小学生の夏休みの宿題みたいな親しみやすさがあります。他のポイントでも、その場所にちなんだ島のの景色を描いた作品が飾られています。
⑤産屋から、殯屋から
木々に包まれて静かに佇む、生と死をテーマにした作品。
《産屋から、殯屋から》by 古郡弘
産屋というのは、字の通りお産に使う小屋のこと。「殯(もがり)」というのは、死者の遺体を埋葬するまでの間、安置して別れを惜しむこと。殯屋は現代で言ったら霊安室みたいなものでしょうか。
公開は秋会期のみ。崩れかけており、ここも自然に帰ろうとしているかのようです。
なお、少し分かりにくいところにあり、私は見落としてしまいました。たまたま近くで工事してるおじさんが教えてくれてたどり着くことができました。
⑥善根湯×版築プロジェクト
塩飽諸島の優秀な船大工たちは、やがて宮大工や家大工へと姿を変えていきました。そんな大工衆が忘れられることのないように造られた作品です。ちなみに「版築」というのは、土を突き固める工法のこと。
《善根湯×版築プロジェクト》by 齊藤正×続・塩飽大工衆
この作品は自由に上ることができます。そこから見えるのは横たわる瀬戸大橋。ちょっとした展望台のような感覚で楽しめる作品でした。
⑦水の下の空
砂浜に並べられた3隻の和舟。網などの漁具が使われており、本島の漁業を絡めているのでしょうか。
《水の下の空》by アレクサンドル・ポノマリョフ
浜辺まで降りていけばもっと近くで見れそうですが、帰りの船の時間が不安なので、ここで引き返します。
一通り周り終えたので、9:40の船で丸亀に戻ります!
レンタサイクルを返却し、帰りの乗船券を購入。あれ、どこかで見たことある人・・・。朝、丸亀港の受付にいた人だ!私のこと覚えててくれて「もう帰っちゃうの~?笑」なんて言われました。
丸亀7:40発→本島8:15着の船で来たので、島の滞在時間は85分。ちょっと急ぎ足でしたが、歴史とアートにふれることができて大満足の島旅でした。
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