様々な動物の供養碑や著名人のお墓がならぶ寺院。大相撲との関わりも深く、かつては相撲が行われる場所でもありました。それほど広い寺院ではありませんが、境内には見どころが詰まっており、じっくりと参拝したいお寺です。
モダンな佇まいの寺院
両国に建つ回向院(えこういん)は浄土宗の寺院。独特なデザインの山門、仁王像は季節に合わせたライトアップを行っています。
本堂はモダンな仕上がり。月に2回ほど、珈琲やハーブティーとともに法話をきくという「法話カフェ」なるイベントも開催されているそうです。
この寺院の創建と関わりの深い災害が明暦3年(1657年)発生した明暦の大火。市街地の6割が焼土と化し、10万人もの人々が命を落としたという大火災でした。当時の将軍は徳川家綱は、そんな人々を葬るための万人塚を建立します。それがこの回向院のはじまりといわれています。
安置された仏像の数々
安置されているのは御本尊の阿弥陀如来像。大きな仏像は、江戸時代に幕府御用を務めた鋳物師、「釜六」こと釜屋六右衛門の作。背面には千体地蔵尊もずらりと並んでいます。
天井に描かれた龍。法要の片付けをしているお坊さんが、「床に蓮の華が描かれたところで手を叩くと、龍が鳴くよ」と教えてくれました。実際にやってみると、非常に独特な残響音が響き渡ります。
本堂の隣にある念仏堂では、厨子に入った秘仏の阿弥陀如来像を安置しています。格天井に描かれた花や鳥、金色の地に花々が描かれた屏風画などの見どころも。2階には念仏回廊もあるそうですが、行き方がわからずでした。
高くそびえたつのは馬頭観音堂。江戸幕府4代将軍・徳川家綱の愛馬を供養するために建立された馬頭観世音菩薩像が安置されています。白い壁にステンドグラスが光る、荘厳な空間となっていました。(※当時の菩薩像は焼失してしまっているそう)
様々な動物の供養塔
こちらの観音像は「犬猫供養塔」。邦楽器商組合によって、三味線の革の供養のために建立されました。台座には犬が2匹、そして糸塚も併せて建てられています。
宝珠のようなデザインの「小鳥供養塔」。黄色いアヒルさんが多数添えられています。
ガラスに包まれた「猫塚」。江戸時代、ネコをかわいがっていた魚屋が病気を患い、商売ができなくなってしまいます。困っていたところ、ネコがどこかから2両のお金をくわえてきて、魚屋は大いに助けられたそう。ある日、ネコが帰ってこなくなってしまい調べたところ、商家で2両をくわえて逃げようとしたところ主人に見つかりこの世を去ってしまっていたことがわかります。魚屋は商家の主人に事情を話すと、主人も感銘を受け2人で回向院に葬ることに。それがこの猫塚とのこと。
魚供養と書かれた魚籃観音は、2023年に建立されたもの。台座部分をよく見ると、様々な魚が描かれています。集まってきたかのようなカニの彫刻も置かれていました。
「膃肭臍」という難しい字が並ぶ供養塔。これが読める方はなかなかの漢字マニア。
この漢字は「オットセイ」と読み、これは「オットセイ供養塔」なのです。一般人の生活にはあまり馴染みのない生き物に思えますが、かつては何か人々と関わりがあったのでしょうか。調べても参考になりそうな情報が見つからず、お坊さんに尋ねてみれば良かったです。
著名人のお墓も多数
境内には著名人のお墓も多数あります。こちらは江戸時代の浄瑠璃語りであった竹本義太夫のお墓。
江戸時代後期の浮世絵師・戯作者である山東京伝のお墓もあります。なお、山東京伝という名前ではなく、本名の「岩瀬醒」という名で刻まれているので、探す際はご注意を。
鼠小僧次郎吉のお墓もあります。江戸時代の盗賊ではあるものの、大名屋敷など大金持ちしか狙わず、後世には義賊として庶民の信仰を集めていました。
お墓の前に置かれた「お前立ち」と呼ばれる石を、小さな石で削る参拝方法があります。長年捕まらなかった運にあやかろうと、墓石を削りお守りに持つ風習があり、現在も合格祈願などの信仰を集めているそうです。
力塚と回向院相撲
こちらは昭和11年(1936年)1月に大日本相撲協会によって建立された力塚。写真で見るよりもずっと大きく、およそ5mほどあります。
明和5年(1768年)、回向院の境内で勧進相撲が興行されます。以降、年に2回の興行が開かれ庶民の人気を博し、これが今日の大相撲の起源となっているそう。
明治時代に入ると洋風ブームの影響もあり人気が下火になるも、明治17年(1884年)の天覧相撲を契機に人気が復活。明治42年(1909年)には旧国技館が境内に建てられました。
国技館建設までの時代の相撲を指して「回向院相撲」と呼ぶこともあるそうです。
境内はそれほど広くはありませんが、見どころは非常に多く感じました。石碑や供養塔がびっしりと並んでおり、解説が添えられているものも。それぞれに込められた想いを感じながら、ゆっくりと歩きたいお寺でした。
アクセスと参拝情報
JR総武線の両国駅西口より徒歩3分、 都営地下鉄大江戸線の両国駅より徒歩10分。
開門時間 | 境内自由 ※本堂は9:00~16:30 |
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料金 | 無料 |
公式サイト | https://ekoin.or.jp/ |
※掲載の情報は2024年12月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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