大正ロマンが香るフランス風洋館『萬翠荘』(松山市)

愛媛県

白く輝く姿が印象的な洋館。館内へ足を踏み入れると、ステンドグラスやシャンデリアといったインテリアを存分に堪能することができます。豪華でありながらも洗練されており、非常にエレガントな建築です。

訪問日:2021/12/9(木)

大正時代の洋館

松山城が立つ城山の麓に建つ洋館・萬翠荘。松山藩主の主家の子孫である久松定謨(ひさまつさだこと)伯爵が1922年に建築した別荘です。

久松伯爵はフランスに長く暮らしていたため、フランス風ルネッサンス様式に仕上げられています。設計を担当したのは木子七郎(きごしちろう)。伯爵に依頼された七郎は最高のものを造り上げるために、ヨーロッパへ赴き西洋建築を学んだそう。

戦後はアメリカ軍に接収され、その後は商工会議所、家庭裁判所を経たのち、愛媛県立郷土芸術館としてオープン。愛媛県立美術館分館と名称変更した後、国の重要文化財に指定されました。一般開放されており、予約不要で誰でも見学することができます。

なお、坂の上の雲ミュージアムと同じ敷地内にあります。ミュージアムの窓から見る姿もまたとても美しいです。

知識が無くても大丈夫

入口を入ると、初老の男性が丁寧に受付をしてくれます。この時点でかなり雰囲気があります・・・!

こういった洋館などを見学する際に気になるのが、建築に詳しくなくても楽しめるのかどうか。「ふーん」で終わってしまわないか不安になります。

しかし、受付でいただけるパンフレットは見どころの記載がきちんと記されており、さらに館内ではボタン式の音声ガイドが各所に設置されています!また、2階には館の説明や久松伯爵についての展示室もあります。ミュージアム感覚で楽しめるスポットなのです。

エレガントな館内

入口すぐ右手にある謁見の間。漆喰のホワイトをベースに、金色の装飾がゴージャスなお部屋です。ここは、久松伯爵が後に昭和天皇となる皇太子様に謁見した場所とのこと。

謁見の間の隣にある晩餐の間。華やかだった謁見の間に比べるとシックな雰囲気。格子状に梁がめぐる格天井は和風な要素。吊り下がるシャンデリアはガラスではなく水晶でできているそうです。

2階ではブルー&ホワイトのテーブルセットが爽やか。お昼ごろに訪問したところ、レースのカーテン越しにちょうど日が差し込んでいました。

純粋に美しい内装ばかりなので、何も考えなくても満足できそうですね・・・!

ステンドグラス

階段の踊り場にはあざやかなステンドグラスが施されています。太陽の光を吸収して輝く姿に思わずうっとり。大海原を進む帆船が描かれており、日本とフランスを行き来した伯爵が思いを馳せていたと考えられています。

船は中心ではなく上半分に位置しており、下から見ると少しアンバランスにも見える構図。しかし、2階中央ホールから見るとちょうど目の前に船が来るように計算されているのです!

手掛けたのはステンドグラス製作者・木内真太郎。横浜山手にある外交官の家や大阪中央公会堂などのステンドグラスを手掛けた人物です。

色合いをよく見るとグラデーションになっているのがポイント。アメリカ式と呼ばれる色ガラスを溶かしてつなぎ合わせる技法で作られているため、中間色を自在に表現できるのです。

愚陀佛庵って何?

萬翠荘のホームページやパンフレットなどを見ていると目に入る「愚陀佛庵(ぐだぶつあん)」の文字。いったい何でしょうか?

かつて英語教師として松山に赴任していた夏目漱石。彼が下宿していた庵が愚陀佛庵。空襲によって焼失してしまいましたが、1982年に萬翠荘の敷地内に復元。正岡子規も同居していたことがあり、文人ゆかりの地として人気のスポットでした。

萬翠荘の裏手にある階段が愚陀仏庵へ続く道でしたが、現在は立入禁止となっています。どうやら2010年の大雨による土砂崩れで全壊してしまったそうです。

もう見ることはできませんが、道後公園にある子規記念博物館では内部の様子が再現された展示があるそう。後で行ってみよう!

愚陀佛(ぐだぶつ)という、何だかどろっとした響きの言葉は、夏目漱石の俳号(※俳句を作る際に使用したペンネーム)。愚陀佛庵の名称は、漱石自身が自ら名付けたという説と、正岡子規が「愚陀佛がいる庵」ということで名付けたという説があるそうです。

アクセスと営業情報

伊予鉄環状線の大街道停留場から徒歩3分。萬翠荘の案内板はあまり見かけませんでしたが、坂の上の雲ミュージアムの案内はたくさんありますので、それに従って進めば迷うことはないかと思います。

開館時間 9:00~18:00
休館日 月曜
料金 300円
公式サイト http://www.bansuisou.org/

※掲載の情報は2021年12月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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