大垣の町に溶け込むように建つ平城。関ヶ原の戦いでは西軍の拠点でもありました。戦国時代を生きた女性のストーリー「おあむ物語」や、屋根に隠れた邪鬼探しなど、ユニークな見どころも詰まった城郭です。
美濃を代表する城郭
1535年に、宮川安定が築城(※諸説アリ)。その後、織田氏、斎藤氏、池田氏と幾度となく城主が替わっていきます。関ヶ原の戦いの際には、城主である伊藤氏が西軍についていたため、石田三成が入城し西軍拠点へ。江戸時代に入ると、戸田氏の居城となりました。
明治時代の廃城令によって廃城とはなるものの、天守は壊されずに残ります。1936年には国宝に指定されていましたが、第二次大戦の空襲により焼失してしまいます。
1959年に、かつての外観のまま再建されたのが現在の天守閣。真っ白な壁がとても美しい出で立ちです。
この天守は、郡上八幡城をモデルに再建されたそうですが、郡上八幡城はもともと戦前の大垣城をモデルに建てられた模擬天守。さらに、現在の大垣城は墨俣一夜城歴史資料館のモデルにもなっております。
ややこしいので順番に並べて見ると、【大垣城(旧)⇒郡上八幡城⇒大垣城(新)⇒墨俣城】ということになるようです。受け継がれていく様子がなんとも趣深いです。
歴史資料と展望が楽しめる城内
館内は恒例の資料館。パネルや模型、映像コンテンツでわかりやすい展示が多いです。祝日の訪問でしたが人影はまばら。多くの人でごった返していた岐阜城に比べてとても静かな印象です。
最上階の展望台からは、大垣の街並みが見渡せます。大垣城の周辺は大垣公園となっており、遊んでいる子供たちの声が聴こえてきます。遠くに目をやると、関ヶ原の戦いで毛利輝元が陣を張った南宮山、そして滋賀県最高峰の伊吹山も見えます。
平地に築かれた平城(ひらじろ)なので、東側は少々圧迫感のある景色。ビルの奥に目を凝らすと、金華山に立つ岐阜城もちらっと見ることができます。
関ケ原の前哨戦!杭瀬川の戦い
関ヶ原の戦いに関する展示も多く、徳川家康と石田三成それぞれの思惑を図り知ることができます。
大きなジオラマで紹介されているのは、杭瀬川の戦い。関ヶ原の戦いの前夜に起きた前哨戦です。
江戸を離れることができないはずであった徳川家康が、関ヶ原出陣のために美濃へ訪れます。これを見た西軍内には、逃亡者が出るほどの動揺が走ります。
これを受けて石田三成の家臣である島左近は、味方の戦意を高めるために前哨戦を決意。大垣城のすぐ近くを流れる杭瀬川に伏兵を潜ませ、敵地の田んぼの稲を刈り取るという挑発を行います。
計略にはまった東軍・中村一栄が攻めてきたところ、伏兵による射撃で迎え撃ちます。さらに援軍にきた東軍・有馬豊氏隊もさらなる伏兵で迎撃。西軍の圧倒的な勝利となりました。
たらい舟にまつわる「おあむ物語」
城内で上映されていたのはアニメ「おあむ物語」。戦国を生きた女性おあむと、現代に暮らす女子高生あんの時空を超えたストーリー。フィクションのアニメではありますが、実は「おあむ物語」は江戸時代の絵巻に基づいています。
この絵巻は、石田三成の家臣である山田去暦(きょれき)の娘が、年老いてから記した昔話で、当時の暮らしを女性目線で伝える貴重な資料とされています。
関ヶ原の戦いで西軍が敗北すると、大垣城は東軍の中に孤立、包囲されてしまいます。大垣城に籠城していたおあむは、鉄砲の玉を鋳造したり、味方が討ち取った敵将の首の身分を高く見せるためにお歯黒にしたりしていました。
その後、おあむたちは、たらいを舟にして城を脱出。無事、逃げ延びることに成功しました。このエピソードから、大垣市ではたらい舟による川下りを期間限定で開催しています。
邪鬼を抑える鬼瓦
天守には鬼の顔をした鬼瓦が設置されているのですが、そのうちの一箇所は邪鬼を抑えたデザインとなっているそう。
・・・探してみたのですが、全く見つかりません。
そもそも下からも天守内部からも見えない部分が多く、捜索は非常に困難。ということで、係員さんにきいてみました!
邪鬼がいるのはこちらです。よく見ると他の鬼瓦とは異なり、先端に何かが付いているような感じがしますが、ちょっとわかりにくいです。もっと見やすい位置は無いのか尋ねてみたのですが、そもそも見えるのはココからだけだそう。
お城入口のパネルには、その写真が載せてありました。コミカルな姿で描かれた邪気は、鬼瓦にしっかりと押さえつけられてます。鬼が鬼を抑えているのも何だか不思議です。
アクセスと駐車場
大垣駅南口から徒歩7分。車の場合は名神高速道路の大垣ICから15分。駐車場はありません。
天守閣の西側、徒歩5分ほどのところに「奥の細道むすびの地第2駐車場」という市営の無料駐車場があります。
さらに天守閣の裏側にあたる北側には、コインパーキングも複数あります。30分100円くらいなので、天守だけ行く人はこちらに停めると非常に楽です。
休館日:火曜
料金:200円
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