日本で唯一の「髪」の神社。嵐山の小倉池のほとりで、現代人の頭髪に対する不安や悩みを一手に引き受けています。切実な願いがこもった絵馬も見どころのひとつ。日本に7か所ある理容遺産の1つでもあります。
御髪神社へのアクセス
JR山陰本線の嵯峨嵐山駅から徒歩15分、京福嵐山線の嵐山駅から徒歩8分ほど。 阪急嵐山線の嵐山駅からは少し距離があるため、徒歩20分くらいかかります。
嵯峨観光鉄道・トロッコ嵐山駅の目の前なので、トロッコ列車に乗る予定の方は、待ち時間にも立ち寄りやすいのでは。
それぞれの駅から向かう場合、おそらく通り抜けるのが竹林の小径(こみち)。高くそびえる竹に囲まれた回廊は、嵐山を代表する景観です。
竹林の小径を抜けた先にある小倉池のほとりに静かに建っています。なお、この池はカワセミが観察できるらしく、三脚を構えたバードウォッチャーの方がたくさん集まっていました。
髪の毛の神社
御髪神社は、日本で唯一とされる髪を司る神社。くせ毛に悩む方、ストレスによる抜け毛が気になる方、ダメージヘアを改善したい方・・・髪に悩みを抱えている現代人はとても多い。そんな方々の悩みを受け止めてくれるのがこちらの神社。
創建は1961年。歴史深い神社がひしめく京都の中では。最新と呼べるほど新しい神社。京都市の理美容業界関係者によって造られました。
「髪は、人間の最も高いところに位置する御神より賜った美しい自然の冠です。その美しい御髪より受ける大きな恩恵に感謝しましょう。」こんな素敵なコトバも掲げられていました。
床屋の祖を祭る神社
御祭神は采女亮(うねめのすけ/藤原采女亮政之)。日本における理容・美容業の祖とされている人物です。
紛失してしまった宝刀を探す父親の手助けをする際、生活の糧を得るために武士を相手にした髪結所を下関に開きます。これが、日本における最初の理容・美容職といわれています。この髪結所に床の間があったことから「床屋」というネーミングが生まれました。
徳川家康をまつる日光東照宮や菅原道真をまつる太宰府天満宮、明治天皇を祭る明治神宮など、将軍や官位のある人間が神様として祭られるケースは多いですが、一般人を個人で祭っている神社は、非常に珍しいのではないでしょうか。
髪の毛を納める「髪塚」
境内には髪の毛を奉納する髪塚があります。願い事をしながら神職の方に髪の毛を切ってもらい、それを封筒に入れてお参りするそう。その後、髪の毛は髪塚へと納められます。
そのため、この髪塚には参拝した多くの人々の髪の毛が納められているのです。
切る髪の毛が無い方はどうすれば・・・
理容関係企業が勢ぞろいの玉垣
神社のまわりにめぐらされている朱色の玉垣。そこには、神社に寄進した企業や団体の名前が書かれています。
リーブ21、アートネイチャー、カネボウ・・・よく見ると、髪に関わる会社の名前がずらり。他には各都道府県の美容生活衛生同業組合の名前が並びます。さすが髪の毛の神社だけあり、他の神社では見かけないラインナップが個性的です。
髪への想いが詰まった絵馬
神社といえば、願い事を記して奉納する絵馬。神社ごとにデザインが異なっていますが、ここ御髪神社の絵馬は、櫛(くし)の形をしています。
ちらっと覗かせてもらったのですが、美容師国家試験、理容師国家試験の合格祈願、スタイリストさんや美容師さんのスキルアップなど、専門職の方の願いが目立ちます。
そんな中、非常に生々しい悲痛の叫びがちらほら。
「〇〇の毛がこれ以上減りませんように」
「お客様の髪が早く生えてきますように!」
「キープ!キープ!キープ!現状維持」
芸能人も多数来訪?
吊るされた絵馬の中には、芸能人が書いたと思わしきものもいくつかあります。
「髪の毛が少しでも残りますように」by モト冬樹
「さすがに僕は手遅れですよね?」by バイきんぐ小峠
「無理のないはんいで発毛よろしくおねがいします」by ブラマヨ小杉
そこに並ぶのは、頭髪にクセのある方ばかり。見る人を笑わせにきてます。
芸能人の絵馬は、一般の絵馬に比べて黒く年季が入っています。おそらく芸能人の方が参拝したときに納めたものを、長年下げずに一番前にくるようにしているのではないでしょうか。
個性的なお守り
小さなクシの形をした御櫛守(おぐしまもり)、房のように糸が垂れている房々守(ふさふさまもり)など、髪にちなんだデザインとネーミングがかわいらしい。
ハサミの形をいた匠守(たくみまもり)は、美容師や理容師さんが買うのでしょうかね。
なお、公式ホームページでは、郵送による授与も行っています。なかなか参拝できない方や、「やっぱ買っておけば良かった・・・」なんて方にはありがたい仕様です。
理容遺産とは?
この御髪神社は、前述の通り理容の祖を祭る神社。鎌倉時代に生まれた床屋の歴史を現代に伝える存在であることから理容遺産に認定されています。
世界遺産以外にも日本遺産や農業遺産など様々な遺産がありますが、理容遺産というのは初めて聞きました。気になったので公式サイトへ。
http://www.riyo.or.jp/%E7%90%86%E5%AE%B9%E9%81%BA%E7%94%A3/
全国理容連合会が「理容発展史上、歴史的に重要と認められるもの」「理容関連で国民生活の発展と文化の向上に貢献したと認められるもの」の2つの基準のもとに認定しており、石見銀山内にある大正末期の理容館アラタや、南極観測船「ふじ」内にある 理髪室など全部で7つのスポットが登録されています。
竹林の道を抜けてJR嵯峨嵐山駅へ。これにて嵯峨野めぐりはおしまい。山陰本線で京都駅まで戻ります。
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