キラリと輝く刀剣がずらり『刀剣博物館』(墨田区・両国)

東京都(23区)

武器でありながらも、その匠の技と精巧な装飾から芸術品として鑑賞できる日本刀。そんな刀を多数展示しているのが刀剣博物館。約2ヶ月おきに展示が変わるので、何度訪れても楽しむことができるミュージアムです。

訪問日:2024/11/30(土) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

日本庭園内の博物館

両国駅の近く、旧安田庭園内にある刀剣博物館は、日本刀を専門に扱うミュージアム。

戦後に壊滅状態にあった日本刀を保存継承するために設立された「日本美術刀剣保存協会」によって、1968年にオープン。かつては代々木にありましたが、2018年にこの地に移転してきました。

もともとは大正時代に造られた「両国公会堂」であった建築。リニューアルされてモダンな姿に切り替わりました。メタリックな外観が雰囲気抜群です。

1階にはチケットカウンターと情報コーナーがあり、日本刀の製作工程が映像や実物で展示されています。各部の名称もわかりやすく紹介されているので、展示室へ行く前に見ておくのがおすすめ。

定期的に変わる展示

展示は基本的に2ヶ月毎に変わる企画展。常設展示は無いので、訪れる度に違う作品に出会うことができます。

訪問した際に開催されていたのは、こちらの展示。

鏨の技巧 刀身彫刻の世界
会期:令和6年10月26日(土)~12月22日(日)

日本刀の刀身に刻まれた彫刻に焦点を当てた企画展。古くは平安時代から始まり、鎌倉時代や江戸時代、さらには近代の昭和時代まで、時代によって変遷していく刀身彫刻の世界を体感することができます。

展示室は3階の1部屋。天井の高い広々とした空間には多数の刀剣が並んでいます。フラッシュを焚かなければ撮影もOK!

ということで、ここからは私が気になった刀剣をいくつか紹介させていただきますね!

なお、日本刀は名称というのは無く、「茎(なかご)」という鞘に収まる部分に刻まれた「銘文」で識別するそう。ということで、刀の銘文も記載していくことにしました。

後にこの選択を後悔することになります。

■「銘」と「号」
実際に刻まれた「銘(銘文)」とは別に、通称として「号」という呼び名がある刀もあります。銘文とは異なり「雷風神」「三日月」などわかりやすくかっこいい場合が多いですが、いずれも後から付けられるニックネームのようなものであるそうです。

力強い刀身彫刻

■銘文:安綱

現在の鳥取県中西部、古伯耆を代表する刀工・安綱による平安時代後期の作品。刀身彫刻は無いように見えますが、よく見ると溝が走っています。こちらは樋(ひ)と呼ばれる最も典型的な彫刻。軽量化や風切音を出すなど機能面での効果が目的と言われています。

■銘文:相州伊勢大綱広 (附)古鞘

江戸時代前期に造られた刀であり、刻まれているのは不動明王の姿。中世以降は神仏の加護を得るための刀身彫刻が施されるようになっていきます。

■銘文:彫物同作龍王子源貞次(花押) 昭和癸巳歲八月日 百日精魂盡此一刀

最も多く見かけた彫刻は倶利伽羅(くりから)。不動明王の化身とされる竜の名で、剣に絡みついた姿で表されます。こちらは昭和時代の作品です。

銘文の文字数が刀によって全然違います!!

昔は刀工の名前を入れる程度ですが、時代が進むにつれて居住地や注文した人の名前なども刻まれるようになり、非常に長くなっていくのです。

ユニークなデザイン

力強い印象の刀身彫刻ですが、中には個性的なモチーフのものも。

■銘文:和泉守藤原国貞

江戸時代前期に造られた刀。そこに刻まれているのは中国の古典に由来する伝説の生き物・猩々(しょうじょう)。酒を好み舞をなすという性格から、盃をもった姿で描かれています。

■銘文:水心子正次(花押) 天保十年仲春

江戸時代後期の刀。仁王像が描かれており、表側は阿像、裏側は吽像と表裏で一対になるように描かれています。

■銘文:筑前守信秀 東山筆 於大坂

こちらはなんとウサギ。しかも丸っこくてかわいらしいデザイン。画家の下絵を元にしたものであるそうです。江戸時代末期の刀とのことですので、戦うための武器というよりも美術品としての価値が見えてきた頃なのかもしれませんね。

難しすぎる銘文

さてさて、最後の一振りは入口に展示してあったこちらの刀。細部まで丁寧に仕上げられた精巧な彫刻、刀身と鞘を固定する「鎺(はばき)」の部分にも三日月と波が描かれており、神秘的な姿。

さあ、気になる銘文はこちら。

■銘文:固山宗兵衛宗次作之 弘化二乙巳八月 東海林善兵衛信辰[*1] 余家藏於九[*2]金剛杵伝言空海修法 器昔日寄進之平間寺今也[*3]刀 心而為子孫之護矣間資貞識 (附)黒石目花卉文散螺鈿鞘協指拵

長過ぎます!!!

しかも[*1]は「釒(かねへん)」に右上「隹(ふるとり)」と右下「乃」、[*2]は「月」の旧字のような部首に「古」、[*3]は「屰」に「刂(りっとう)」という見たことのない漢字も。読み方はおろか、検索しても出て来ない漢字なので変換はムリです!!

ちなみに手打ちではなく、スマホカメラのスキャンです。でも、目視確認したら誤った認識の字もあったりしたので、結局一文字ずつ確認しました・・・。うっかり銘文を記載するなんて書いてしまいとっても後悔したのですが、普段見かけない漢字を調べた時間はとっても有意義でした(ポジティブ)。

3階には屋上庭園も設けられています。旧安田庭園が見渡せる、非常に眺めの良い庭園です。広々とした景色に身を委ねていると、難読漢字の苦労も吹き飛んだ気がしました。

アクセスと営業情報

JR総武線の「両国駅」西口から徒歩7分、もしくは都営地下鉄大江戸線の「両国駅」A1出口から徒歩5分。

庭園は無料なので、JR両国駅から向かう場合は庭園を抜けていくのがおすすめです。

開館時間 9:30~17:00
休館日 月曜、年末年始 ※展示替期間に休館あり
料金 1,000円
公式サイト https://www.touken.or.jp/museum/

※掲載の情報は2024年12月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

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