帝国劇場の上に入る、日本や中国といったアジアの古美術を中心に収蔵する美術館。企画展をメインとした美術館であり、展望が楽しめるロビーや茶室、陶片資料室なども備えています。今回は「青磁─世界を魅了したやきもの」を見に行ってきました。
丸の内・日比谷の美術館
題名のない音楽会のCMでおなじみの出光美術館は、出光興産創業者である実業家・出光佐三が集めた美術品を展示するため、1966年に開館した美術館。
東京丸の内にそびえ立つ帝劇ビルの9階に入っています。重厚な建築は、「東京国立近代美術館」や「東京国立博物館・東洋館」などの設計でも知られる谷口吉郎によるもの。日比谷駅が最寄りとなり、B3出口は帝劇ビルの地下2階と直結です。ただし、出光美術館に行く場合は一度1階で外に出て専用のエレベーターに乗り換える必要があります。
企画展・青磁
さてさて、この美術館の展示のメインは企画展。今回訪問した際に開催されていたのはコチラ。
開催期間 2023年11月3日(金・祝)~2024年1月28日(日)
青磁というのは青磁釉を施した、透明感のある青緑色の磁器のこと。ひとことで青磁といっても様々な色合いのものがあります。この企画展では、青磁のルーツとなった灰釉陶器からはじまり、青磁が徐々に変化していく様子を楽しむことができます。作品には200文字程度の解説も添えられており、知識が無くても楽しめるように工夫がされていました。
展示室内は撮影禁止となっていますので、購入したポストカードをもとにいくつか紹介させていただきますね。
《青磁天鶏壺》
中国・南北朝時代の作品。滑らかな壺の肩にニワトリの頭部が添えられているユニークな姿が特徴的です。壺の肩の部分には四角い突起のようなもの、さらに把手部分も何か生き物を象っているかのようなデザイン。シンプルに見えて不思議と吸い込まれる作品です。
《青磁熊足燭台》
中国・西晋時代の作品。「熊」とタイトルに入りますが、そこに象られているのはクマとは似つかない不思議な動物。大きな耳や細長い顔、長い手足は、まるでキツネザルのよう風貌です。
《青磁新亭壺》
中国・西晋時代の作品。壺の上に多数の鳥が飛び立つ姿が象られており、非常い見応えがあります。鳥の群れの下には楼閣と笛や鏡を持った人々、壺の胴部分にはカニ、ヒツジ、サンショウウオなど様々な動物の姿も。細部までじっくりと観察したくなる壺です。
《青磁鎬文壺》
中国・元時代の作品。ポスターにも映された今回の展覧会を代表する作品であり、側面の肩から腰にかけて入る削ぎ模様「鎬文(しのぎもん)」が印象的。よく見るとこの鎬文はまっすぐではなく少しうねりがあります。わずかに違和感を感じる姿は、まるで坪自身が存在を主張しているかのように感じます。
今回の企画展は、壺が多く展示されています。このような展覧会へ行く際にぜひ覚えておくと良いのが「壺の部位の名称」。「口」「首」あたりはイメージできますが、「肩」「腰」なども覚えておきますと、作品解説を読んだ際の解像度がぐっと上がります。
展望が楽しめるロビー
館内のロビーからの眺めは抜群。目の前には皇居が広がり、二重橋、桜田門、富士見櫓などを一望することができます。座り心地の良い椅子やフリーのお茶サーバーも置かれており、ゆったりとした時間を過ごすことができます。
ロビーの側には茶室朝夕菴(ちょうせきあん)という茶室も設けられています。中を覗くと、茶碗、茶器、掛軸、青磁の花入など美術館のコレクションが用途に合わせて展示されていました。(※写真撮影NG)
常設のルオー展示室
展示室4はルオー専用の展示室。《秋の終りⅡ》をはじめ、色彩鮮やかで力強い作品が数点並んでいます。ステンドグラス作りに携わっていた経験からと考えられる黒い輪郭線、絵具を重ねて盛り上げる技法など、非常にインパクトがあります。
《小さな女曲芸師》は、白馬にサーカスの少女がまたがる姿を描いた作品。全体的に暗い印象ですが、その分少女の青いスカートや髪飾りが目立ちます。
ユニークな陶片資料室
展示室5は国内外の遺跡より出土した陶片資料を展示している一風変わった展示室。古陶磁を学ぶための部屋として、陶磁器研究家小山富士夫によって開館と同時に開設しました。
展示室内では、瀬戸・美濃・八代・沖縄など出土した場所毎に陶片が展示されています。陶片ということで完全な状態ではありませんが、様々なやきものを一度に見ることができるのはなかなか新鮮です。
日本だけでなく、海外の陶片も。朝鮮半島・中国はもちろんのこと、ベトナムやタイなどアジア諸国を中心に、様々な陶片が集まっていました。
行ってみた感想と所要時間
日曜の訪問でしたが、混雑は控えめ。全体的に静かな雰囲気となっており、じっくりと美術鑑賞を楽しめる空間となっています。
今回の展覧会はなかなかのボリューム。作品に添えられている解説がとってもわかりやすく、理解を深めながら新しい知識も増えていきます。これまであまり意識してこなかった青磁について学ぶ良い機会でした。
見学所要時間はじっくり見ても1時間程度。常設のルオー展示室と陶片資料室は小部屋なので、よほど飲み込まれない限りはすぐに見終わりそうです。
なお、出光美術館は国宝の『伴大納言絵巻』を収蔵しております。『源氏物語絵巻』、『信貴山縁起絵巻』、『鳥獣人物戯画』と並んで四大絵巻物に数えられる作品で、代価は当時で30億円以上とのこと。ここに来たらぜひ見たい!と思っていたのですが、今回は見ることができずでした。いつか展示される日がありましたら、また再訪したいと思います。
アクセスと営業情報
・JRの「有楽町駅」国際フォーラム口より徒歩5分
・東京メトロ有楽町線の「有楽町駅」、都営三田線「日比谷駅」B3出口より徒歩3分
開館時間 | 10:00~17:00 |
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休館日 | 月曜、年末年始、展示替期間 |
料金 | 1,200円 |
公式サイト | https://idemitsu-museum.or.jp/ |
※掲載の情報は2024年1月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。
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