和歌山城のそばに美術館とともに立つ博物館。展示内容は歴史資料が中心で、「御三家」と称される紀州徳川家に関する貴重な品々や、古来より信仰の続く熊野・高野に関する内容となっています。
歴史がメインのミュージアム
前回ご紹介させていただいた和歌山県立近代美術館のすぐ隣に立つのは和歌山県立博物館。1971年に和歌山城内の二の丸跡で開館、1994年に現在の場所に新築移転しました。

こちらの建築も和歌山県立近代美術館と同じく黒川紀章。美術館と同時期に設計され、対をなすような姿で佇んでいます。
STAFF ONLYですが、2階部分は橋で繋がっています。また、表には見えませんが2つの建物は地下部分が繋がっており、電気系統などは共用であるそう。一体となったひとつの建物とも捉えることができます。

美術館同様に広々としたエントランスホール。1階が有料の「特別展示室・常設展示室」、2階が無料の「屋外展示室」「文化財情報コーナー」となっています。

紀州徳川家の貴重な資料
江戸幕府を開いた徳川家康の10男・徳川頼宣を初代とする紀州徳川家。尾張(名古屋)・水戸(茨城)と並べて「御三家」と呼ばれます。やがては江戸幕府8代将軍・徳川吉宗や、14代将軍・徳川家茂を輩出、御三家で唯一将軍を輩出した徳川家なのです。
そんな紀州徳川家に関係する歴史資料を多数所蔵。訪問した際は1階の特別展示室では、こちらの特別展を開催中。

2025年10月11日(土)~11月24日(月)
初代和歌山藩主である「徳川頼宣像の掛軸」、徳川家康所用の228本もの矢や陣貝(法螺貝)、まるでペーパークラフトのような「御天守起シ御絵図」など、他では見られない品々がそろっています。
読み物系の解説パネルは少なめですが、現物がたっぷり!これ、期間限定の特別展としては凄いクオリティです。そう思っていたのですが、途中で特別展から常設展示に変わっていたみたいです。シームレスすぎて気が付いておりませんでした!
深い信仰を示す歴史の道
展示室は1階のみですが、無料で入れる2階にもいくつか展示を見つけました。見応えがあるのが屋外展示室。「歴史の道」と題された熊野古道を表した石畳の道があり、その道沿いに信仰を表すものが展示されています。

写真の手前にそびえ立つのは高野山町石(レプリカ)。高野山登山道のうち、中世のメインルートである町石道に建てられていた五輪卒塔婆型の石塔のひとつ。弘安8年(1285年)に建立されたものであるそう。
次は王子社。大阪から熊野へ向かう熊野街道沿いには九十九王子と呼ばれるほど王子社が建てられていました。これは玉垣と社殿で当時の王子社を再現したもの。西行物語絵巻に描かれた八上王子社を参考にしているそうです。

道の果てに立つのは像高55.2cmの牛馬童子像(レプリカ)。牛と馬のにまたがる姿は、花山法皇の熊野詣の姿を象ったものと伝わっています。2頭に同時またがってますが、ちゃんと進めるのか気になってしまいますね。

石畳の道から少し離れたところに鎮座するのは地蔵菩薩像(レプリカ)。地蔵峰寺の本尊で、像高147.5cm。光背も含めて砂岩の一材で造られているそうです。

御当地焼き物・三楽園焼
屋外展示室のさらに奥へ進んだ先にある文化財情報コーナーにて、こんなチョコミントみたいなかわいい焼き物が展示されていました。

こちらは《交趾写八角皿》。紫色と浅葱色の2色で仕上げられた八角皿は、2つの釉薬を混じり合うようにかけて仕上げられています。
この焼き物は「三楽園焼」といい、新宮水野家の9代当主・水野忠央が「偕楽園焼」再興のために始めたもの。「偕楽園焼」というのは、紀伊徳川家10代藩主・徳川治宝が別邸・西浜御殿の庭園「偕楽園」で焼かせた焼き物です。
隣には、同じく三楽園焼の《色絵牡丹唐草文涼炉》も展示されていました。華やかなボタンと唐草が、黄色のバックをあざやかに彩ります。中国清時代のやきものを意識して制作されたと考えられているそう。

最後の1枚はこちら。高野山の宮大工が手掛けたという「利他の蓮華」。2025年9月30日(火)~10月9日(木)の期間、大阪・関西万博の「和歌山ゾーン」にて展示されていたものです。7月26日(土)には海外パビリオンのイタリア館にも展示されていたそうです。こんなところでも感じる万博。この先もきっといろんなところで、その面影にふれることでしょう。

アクセスと営業情報
JR「和歌山駅」または南海電鉄「和歌山市駅」からバスで約10分、「県庁前」下車、徒歩2分。
| 開館時間 | 9:30~17:00 |
|---|---|
| 休館日 | 月曜、年末年始 |
| 料金 | 常設展・企画展:310円 |
| 公式サイト | https://hakubutu.wakayama.jp/ |
※掲載の情報は2025年10月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。


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