琴で飾られた三重塔と巨大な塑像『岡寺』 (明日香村)

奈良県

7世紀末に建立された非常に長い歴史を持つ寺院。国内最大級の塑像や、悪龍が眠る池、季節の花など見どころは豊富。三重塔には少し変わった装飾が施されていました。

訪問日:2025/5/11(日) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

創建1400年の古刹

明日香村に建つ岡寺は、7世紀末に創建されたと伝わる寺院。正式名称は龍蓋寺(りゅうがいじ)といいます。開山は義淵(ぎえん)。法相宗の祖であり、門下には東大寺創建に関わった良弁や行基といった名僧がおります。

現在は真言宗豊山派の寺院。西国三十三所観音霊場の第7番の札所にも指定されています。

参拝者を迎えるのは木造の仁王門。慶長17年(1612年)に建立された建築で、重要文化財に指定されています。仁王像とともに大きな草鞋も奉納されていました。

国内最大の塑像

重厚な本堂は文化2年(1805年)に再建されたもの。9:00〜16:00の時間内ならば内部へと入ることができます。

堂内に鎮座するのは本尊の如意輪観音坐像。奈良時代の作であり、その高さは4.85mとかなりの存在感。国内の塑像(土でできた像)では最大級とのこと。真っ白で巨大な姿が神秘的です。


※撮影禁止につき、看板に描かれていたイメージイラスト

ラッキーなことに「本堂内々陣お扉特別開扉」期間であったため、通常よりも間近に見ることができました。木とも銅とも異なる独特な質感は、他の仏像とは大きく異なります。

他にも如意輪観音坐像の胎内仏といわれる菩薩半跏思惟像、役行者木像、室町時代の扁額、平安時代の不動明王像など、様々な品々を見ることができました。

三重塔に吊るされた琴

高くそびえ立つのは、高さは15.4mの三重塔。塔身に比べて屋根が大きくせり出しており、細さを際立たせます。

文明4年(1472年)に大風で転倒、翌年より再建が始められますが、完成に至ることなく解体されて仁王門と楼門の用材として利用されてしまいます。現在の塔は、昭和61年(1986年)に再建されたもの。

軒先に何かが吊るされています。これ、よく見ると琴(こと)!弦もしっかりと張られています。

そっか、琴か。と納得しかけましたが、なぜ琴が吊るされているのでしょうか。しかも、弦が下に来るという逆さま吊り。

保延2年(1136年)に描かれた「両部大経感得図屏風」に描かれている装飾を再現したものであるそう。風を受けて音が鳴り、音を伴う装飾であったと考えられています。ちなみに、琴に限らずこのような飾りを仏教用語で「荘厳(しょうごん)」と呼んだりします。

悪龍が封印された池

境内には小さな池があります。こちらは龍蓋池(りゅうがいいけ)

かつて飛鳥には、農民を苦しめる悪龍が棲みついていました。義淵僧正は法力によりこの龍を池に閉じ込め、石の蓋をもって池に封じ込めます。龍は改心して善龍になり、この池に眠っているそう。

龍に蓋をすることから、龍蓋寺という名が付けられたという伝説が残っています。悪龍の『厄難』を取り除き飛鳥を守ったことが、今日まで続く「やくよけ信仰」のルーツであるともいわれているそう。

本堂前に吊るされているのは、龍玉願い珠。もちの木に吊るすことで、願いを「もち」叶えてくれるそう。わっ、駄洒落だ!

奥之院の石窟

本堂の奥は木々に包まれた道が続き、奥之院へと繋がります。高くそびえ立つ十三重石塔の傍を進んで行きます。

こちらは瑠璃井。今も水が湧いており、「厄除けの水」として参拝者が汲むことができます(飲用不可)。釣瓶を落とし水をくみ上げることができますが、これめっちゃ労力が要りますね!蛇口ひねれば水が出る現代からはそうぞ

奥にあるのは、山肌をくりぬいた石窟・弥勒の窟。中へ進むと、弥勒菩薩座像が安置されていました。本堂周辺はにぎわっていましたが、こちらはとっても静かで神聖な空気が漂います。

華の寺

春のシャクナゲや秋の紅葉など、季節に合わせた見どころもあります。5月に訪問したところ、境内では多数のボタンが花を咲かせていました。

手水は色鮮やかな花手水に。カラフルな花で彩られた姿は、思わず写真に撮りたくなります。

楼門にはボタンの花で作られた華宝珠も吊るされています。使用されているのは、天竺牡丹という種類であるそう。

さらにゴールデンウイークには、池をボタンで埋め尽くした「華の池」もつくられるそう。

あれ、この花ボタンじゃなくてダリアでは・・・?実は「天竺牡丹」というのはダリアのこと。種類はまったく異なりますが、花の形がボタンに似ているため、このように呼ばれていたそうです。

アクセスと参拝情報

近鉄線に「岡寺駅」とありますが、徒歩1時間くらいかかります。同じく近鉄線の「橿原神宮前駅」や「飛鳥駅」からバスを利用するのが一般的。

今回はレンタサイクル(電動)で向かったのですが、お寺の近くの道はアップダウンがめっちゃ激しい!炎天下でノーマル自転車だったら、かなりハードな道のりでした。

開門時間 3月~11月:8:30~17:00
12月~2月:8:30~16:30
※本堂内陣の一般内拝期間は4月~12月のみ
料金 500円
公式サイト https://www.okadera3307.com/

※掲載の情報は2025年5月時点のものです。最新情報は公式HPにてご確認ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました