その差は1,300年!新旧2つの塔がそびえる古刹『薬師寺』(奈良市)

奈良県

西ノ京に建つ、非常に長い歴史を持つ寺院。巨大な金堂・大講堂など、見ごたえのある建築が並びます。バランスよく並んで建つ東塔・西塔は、非常に年が離れているというのもポイントです。

2021/9/19(日)

飛鳥時代末期の寺院

680年に天武天皇が皇后(後の持統天皇)の病気平癒を祈り、建立した寺院。「龍宮造り」と呼ばれる壮麗な伽藍が広がる寺院でしたが、天災や兵火により多くの建築が消失。昭和に入ってから大規模な復興がおこなわれます。1998年には、世界遺産「古都奈良の文化財」の構成資産にも指定されました。

真言宗や天台宗以前より日本に広まっていた仏教の1つ、法相宗の寺院で、興福寺とあわせて大本山とされています。

境内の見どころは、大化の改新~平城京遷都までの白鳳文化を現代に伝える<白鳳伽藍>と、法相宗の開祖である玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)の遺骨を祀る<玄奘三蔵院伽藍>の2ヶ所に別れています。

<白鳳伽藍>
東塔、西塔、金堂、大講堂など
<玄奘三蔵院伽藍>
玄奘塔、大唐西域壁画殿など

拝観料は白鳳伽藍と玄奘三蔵院伽藍合わせて1,100円。別々の拝観料は設定されていないため、両方回るのが一般的です。

巨大な白鳳伽藍

まず目に入るのは立派な金堂。1528年に焼失しており、1971年に創建当初の姿で再建された寺院です。二階建ての建築ですが、随所に裳階(もこし)という飾り屋根が施されているため、多層建築に見えます。

堂内では、奈良時代に造られた薬師如来像、月光菩薩、日光菩薩を安置しています。高さ3mを越える姿は圧巻で、黒く光っているように見えるのは火災で金が溶け込んだためだそう。

台座には、ギリシャの葡萄唐草文様、ペルシャの蓮華文様、インドの力神像、中国の四神と、様々な国を象徴する絵柄が描かれています。シルクロードを通じて、様々な国の文化が日本まで伝わってきたと考えられているそう。(※写真はレプリカです。)

金堂を抜けた先にある大講堂も2003年に再建されたものです。金堂に比べると平坦な印象の建築ですが、屋根の両サイドにキラリと光る鴟尾(しび)が良いアクセントになっています。堂内では奈良時代の作である彌勒如来、法苑林菩薩、大妙相菩薩の弥勒三尊像が安置されていました。

新旧2つの塔

門をくぐり、右手にそびえるのが東塔(とうとう)。高さは34.13m、薬師寺の境内において創建当時から残る唯一の建築物です。

大小の屋根が交互に広がる独特な建築。6層に見えますが、このうち小さい屋根は先ほどの金堂と同様に裳階(もこし)。そのため、三重塔という扱いになります。この東塔は「凍れる音楽」とも称されているそう。大小の屋根が波打つ様を旋律に見立てたのでしょうか。

左手にそびえる西塔(さいとう)。1528年に兵火によって焼失してしまい、昭和56年に再建されました。東塔と同様3層の裳階をそなえた造りですが、こちらは丹塗りと金色の装飾が施されたきらびやかな姿。

高さは36mと東塔より少し高めにつくられています。これは、材木の伸縮や基礎の沈下を考慮しており、500年後には東塔と同じ高さに落ち着くと計算されているそう。内部には、彫刻家・中村晋也による金銅製の仏伝が安置されています。精巧で神秘的な作品は非常に見ごたえがあります。

薬師寺は、日本で初めて2つの塔が相対する伽藍配置にて建立されたそうです。昭和の復興により、往時に近い姿にて蘇りましたが、この2つの塔の年の差は約1,300年。2つの塔の間に立って見ると、時空が歪みそうです。

玄奘三蔵院伽藍

仏教の真髄を求めるためインドを旅した中国の僧・玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)の遺徳を後世に伝えるために建立された伽藍。

玄奘三蔵ときいてもピンと来る方は少ないかと思いますが、この方は西遊記でおなじみの三蔵法師のモデルとなった人物。こう聞くと、急にイメージがわきますね!

8角形の玄奘塔。玄奘三蔵の頭部の遺骨・ご頂骨を納めています。掲げられた扁額に記された「不東」の文字は、インドにたどりつくまでは東(唐)には帰らないという意思を表しているそうです。

回廊の先、玄奘塔の奥にある平山郁夫の大唐西域壁画も見応え抜群。ヒマラヤ山脈を描いた「西方浄土須弥山」やアフガニスタンの「バーミアン石室」、ラピスラズリで描かれた天空など、巨大な壁画が広がります。この様々な場面は、平山画伯が玄奘三蔵の旅した地を実際に訪れ追体験した上で描いたそうです。

アクセスと営業情報

近鉄橿原線の西ノ京駅より徒歩1分。車の場合は第二阪奈道路の宝来ICから15分ほど。駐車場は有料で1日500円。何時間停めても同料金なので、ここに停めたのち唐招提寺も徒歩でめぐると駐車料金を節約できます。(唐招提寺は玄奘三蔵院伽藍から徒歩10分弱です)

拝観時間 8:30~17:00
料金 1,100円~
公式サイト https://yakushiji.or.jp/

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