ノスタルジックなアートフェスティバル『中之条ビエンナーレ2019』(中之条町)

群馬県

中之条町で2年に1度開催されるアートフェスティバル。都心からもアクセスしやすく、温泉街や町の中に溶け込んだものや、廃校を利用したものなど個性的な作品のオンパレード。今回は半日でどっぷりとめぐってきました。

期間:2019/8/24(土)〜9/23(月祝)の31日間
時間:9:30〜17:00(会期中無休)
料金:パスポート1,500円

中之条ビエンナーレって?

ビエンナーレ

四万温泉、沢渡温泉、六合温泉など温泉が有名な群馬県の中之条町。町内全域を使用して行われるアートフェスティバル、それが中之条ビエンナーレ
廃校となった木造校舎、情緒あふれる温泉街、養蚕文化の残る山村など、町の景観や文化など人々の暮らしにアート作品が溶け込んでいるのが特色です。

1998年に町営温泉でアーティストが作品を作りながら暮らしはじめたことをきっかけに、2007年に第1回目が開催され、中之条ビエンナーレとしてはじまりました。
「ビエンナーレ」というのは、2年に1度開催される美術展覧会のこと。その名の通り1年おき、奇数年が開催年となっています。

開催期間

中之条ビエンナーレは中之条町のメイン観光資源である温泉が閑散期となる夏場に開催されています。
第7回目となる2019年は8月24日(土)-9月23日(月祝)の31日間。
まだまだ残暑の厳しい期間の開催となるため、日中はかなりの暑さになる日も多いです。タオルや日傘、飲み物など暑さ対策はお忘れなく!

料金

中之条ビエンナーレは、作品毎に入場料金が指定されているわけではなく、共通のパスポートでめぐるタイプのアートフェスティバル。

ビエンナーレパスポート

パスポートの料金は1,500円。期間中有効なので、何日かけても、何回行っても料金が変わらないのが嬉しい。このパスポート、中身が31個のスタンプシートになっています。特定の作品に設置されたスタンプを集めると、15個で四万温泉宿泊10%割引券&温泉無料入浴サービス、31個制覇でオリジナル記念品がもらえるそう。

また、パスポートを購入すると、「まち歩きクーポンマップ」と、通常500円の「なかのじょう周遊チケット」もセットでもらえます。アートめぐり以外の観光スポットやレストラン&カフェ、温泉施設などの割引や優待を受けることができます。

アクセス

伊香保温泉から車で30分ほどのところにある中之条町。玄関口となる中之条駅までの東京からのアクセス手段はこちら。
中之条駅

【自動車】
東京から約2時間30分ほどでアクセスできます。
最寄のI.Cは関越自動車道の「渋川伊香保I.C」。そこから下道で40分ほどです。
【高速バス】
東京駅・新宿駅から約3時間ほど。草津や伊香保へ向かうJRバス関東の上州ゆめぐり号が中之条駅にも停車します。料金は3,000~3,750円くらい。
【電車】
上野駅から中之条駅まで特急草津で約2時間。

どの手段を選んでも2~3時間でアクセスができます。東京から程よい距離感で、日帰りも可能というかなり行きやすいアートフェスティバル。会場となっている四万温泉や沢渡温泉で一泊すると、さらに余裕をもってゆったりアート鑑賞が楽しめそう。

展示エリア

作品の展示会場は大きく6エリア50ヶ所。

【展示エリア】
・中之条伊勢町(なかのじょういせまち)エリア
・伊参(いさま)エリア
・沢渡暮坂(さわたりくれさか)エリア
・四万温泉(しまおんせん)エリア
・名久田(なくた)エリア
・六合(くに)エリア

各エリア合計150組のアーティストが参加しているため、その作品数はあまりにも膨大です。
今回は半日しか時間がないので「中之条伊勢町エリア」「伊参エリア」「沢渡暮坂エリア」の3ヶ所をさらっと見てきました。

中之条伊勢町エリア

中之条駅から徒歩圏内に広がる中之条伊勢町エリア。電車利用の方はもちろん、6エリアの中でも最も南にあるため、東京や前橋方面から車で来る方にとっても最初に立ち寄るエリアとなります。

ふるさと交流センターつむじ

つむじ

パスポートの販売や案内所のあるビエンナーレの中核施設。カフェや雑貨屋さん、屋内休憩スペースや足湯もある町中の憩いの場といった印象のスポットです。

中之条伊勢町エリアの作品は町中にあるため駐車場がありません。車の方は、このつむじに停めて歩いてめぐるのが基本スタイルになります。
とはいえ駐車場は20台ほどしかありません。ビエンナーレ開催期間は混雑必至です。
満車だったので、指示に従い臨時駐車場となっている役場に停めました。ここからつむじまでは徒歩1分ほど。

かねんて倉庫

かねんて倉庫

かねんて倉庫内部

名前の通り、倉庫を利用したアート作品。中に入るとそこには吊るされた倉庫があるかねんて倉庫。建物の中にその建物がある、堂々巡りのような不思議な感覚。倉庫自体もかなり古い建物で、木々の隙間から自然の光が差し込みます。

吊るされている倉庫も、そこが忠実に再現されているのが細かい。
ちなみに「かねんて」というのは直角の曲がり角のこと。このかねんて倉庫のある道はカクっと曲がっているため、「かねんて」と呼ばれているそう。

林昌寺山門

林昌寺

林昌寺山門は、なんとお寺にあるアート作品。立派な山門の真下に立って上を見上げると、青く光る作品が。

林昌寺山門

このお寺、随所に六文銭があしらわれています。戦国時代に荒廃していたところを、真田昌幸の叔父である矢沢頼綱という人物が再建し、それ以来 沼田真田家縁の寺となっていたそう。

トラヤ

トラヤ

このビエンナーレで私がイチオシの作品がこちらのトラヤ。普通の町のブティックですが、中に入ると・・・

トラヤ内部

そこで繰り広げられていたのはマダムたちのファッションショー!!
こちらはトラヤ コレクション 〜わたし流を楽しむ〜(作者:蓮輪康人)という作品。
キラキラしたミラーボールの光と華やかな音楽が流れる中、ヒョウ柄のランウェイに腰掛けるマネキンたち。そして、スクリーンには実際に中之条マダムたちがランウェイを歩く映像が。まるでパラレルワールドに来たような強烈な違和感です。

 

実は、このトラヤ、閉店した洋服屋トラヤを舞台にしたアート作品。流れている映像は、その服を使ったファッションショー「わたし流を愉しむ」。
出てくるマダムたちは、拍手とフラッシュを浴びてみんな良い笑顔。集まっている町の人たちもとっても楽しそうで、見ていると幸せな気持ちになる映像なのです。

当時の募集要項みつけました。
https://nakanojo-biennale.com/event/toraya-fashion

町の人に親しまれていたお店の閉店という物寂しさと、最後に繰り広げられるファッションショーの華やかさが一度に襲ってくる不思議な気分。切ないようなほっこりするような気持ちで心がいっぱいになります。

トラヤ(2回目)

このトラヤで流れている音楽がとても胸キュンソング。
誰の曲か気になったのでGoogle Pixelの「この曲なに?」や、歌詞を聞きとって検索してみたりしたのですが全くヒットしません。

実は、あまりにも気になってしまい翌日も訪問してしまいました。

トラヤの歌

私の疑問の答えは、トラヤの壁に書いてありました。
曲名は「わたし流を愉しむ」。ファッションショーと同じタイトルなので、この作品のために作られた曲なのでしょう。

歌っているのはn・nさんという方。調べてもヒットしないので、もしかして有名な歌手の方が匿名参加してる、とかでしょうか。

伊参エリア

総合案内となる施設イサマムラを中心とした伊参(いさま)エリア。中之条伊勢町エリアのつむじから車で10分ほどの距離にあります。

イサマムラ

イサマムラ

小学校を利用した施設イサマムラ。ショップや軽食販売、体験教室などが集まっており、ビエンナーレの中心施設です。

イサマムラ内部

館内は各教室それぞれがアート作品の展示室。なつかしのスリッパを履いて校内へと入っていきます。
遠い記憶の小学校。昇降口や水飲み場、黒板や学習机など、ノスタルジーを感じる中のアートめぐりは新鮮で楽しい。

伊参集会所

伊参集会所

イサマムラ向かいにある伊参集会所もアート作品。どことなくヒエロニムス・ボスとヒグチユウコの世界観を足したような、少し狂気を感じる展示内容となっています。

JAあがつま倉庫

あがつま倉庫

同じくイサマムラの裏手にあるJAあがつま倉庫。真っ暗な倉庫の中でゆっくりまわるライト、水蒸気のスモークと虫の声、そして低音のきいたアンビエントが流れる不思議な空間。妙に落ち着くのですが、かなり蒸し暑いです。

伊参スタジオ

伊参スタジオ

元々は伊参中学校ですが、平成2年に廃校。その後は、群馬県の人口200万人を記念して作られた映画「眠る男」の撮影に使用され伊参(いさま)スタジオへ。映画にまつわる資料が展示された記念館となっています。

眠る男

ここもアート作品の展示会場。趣深い木造校舎の各部屋にはそれぞれ個性的な作品が配置されています。暗い体育館の中では、傘の取っ手から生えた花たちが多数ぶら下がっていました。

伊参スタジオ体育館

沢渡暮坂エリア

「一浴玉の肌」と称される美肌の湯として有名な沢渡(さわたり)温泉を中心としたエリア。こちらも中之条伊勢町エリアから車で10分ほど。

沢田小学校

沢田小学校

引き続き学校を会場にした展示場。先程のイサマムラと同じように、各部屋が展示室となっています。

沢田小学校内部

ベッドのような白い台が並ぶ中、複数配置されたブラウン管からは同じ映像が流れている。
耳を済ませると、映像とともに流れてくる音声はそれぞれ違う人の声。その内容は、町に鎮座する「あれ」についての話。気づいたときにあった「あれ」。結局その正体を明確には伝えてくれないのですが、聴こえてきた言葉は煙突、喘息、高速道路の工事。

沢田小学校の布団

今度は本物の布団。なんと、実際に昼寝しても良い作品なのです。人々が騒がしくて眠れないときは、枕元の楽器(音叉)を鳴らして静かにしてほしいことをアピールすれば良いそう。

沢田小学校内部2

他にもカラフルなインスタレーションが多数。暗幕で包まれた教室には、妖しくライトアップされたドライフラワーが並んでいます。

沢田小学校内部3

そして唐突に現れる崩れた地層。

晩釣せせらぎ公園

晩釣せせらぎ公園

沢渡温泉街のすぐ近くの晩釣(ばんつり)せせらぎ公園。ここでは、流れる小川の上にぶら下がっているワイヤー作品を鑑賞できます。

晩釣せせらぎ公園2

刺激的な作品が続いたので、川辺でひと休み。
日中の暑さもやわらぎ、涼しい風が吹き始めた夕暮れ。せせらぎの音を聴きながら過ごす時間は、都会に暮らしているととても贅沢。

行ってみた感想

そろそろ時刻は17:00、屋外展示以外のアート作品は閉館の時間なのでアートめぐりもそろそろ終了。

今回初めて訪れた中之条ビエンナーレ。
新潟県で開催される「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や、瀬戸内海の島々を会場とした「瀬戸内国際芸術祭」と比べても、満足度は引けをとりません。また、会場がコンパクトなので、いろいろまわりやすいのもポイントです。

ただし、他のアートフェスティバルでも感じることなのですが「どこから見よう」「次は何を見よう」と迷うことが多かったです。
膨大な数の作品を全てまわるのはかなり厳しい。限られた時間の中で、より自分が惹かれる作品を見たいもの。
HPやガイドマップは「作者名」だけなので、「作品の写真」も掲載されていると判断基準になるかなと思います。また、その作品が屋外展示で見学自由なのか、それとも観覧時間が決まっているのかも記載があるとさらにアートめぐりが快適になるのではないでしょうか。

次の開催は2021年。2年間楽しみに待ちます!!

 

コメント

  1. […] 【群馬】ノスタルジックなアートフェスティバル『中之条ビエンナーレ2019… […]

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