頭だけの首大仏が鎮座する寺院『無量光寺』(和歌山市)

和歌山県

頭部だけの「首大仏」が残る寺院。このような形態の大仏様は火災や戦争といった災害が原因のケースが多いですが、ここはちょっと違った理由で頭だけとなっているようです。いったいどのような経緯があったのでしょうか。

訪問日:2025/10/21(火) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

頭部だけの大仏・首大仏

「首大仏(くびだいぶつ)」というのは、言葉通り胴体がなく、頭部だけの大仏様。地震・戦災・火災などで胴体が失われて頭部だけが残ったというのがその主たる要因です。

そんな首大仏は、日本各地に存在しています。

調べてみると、静岡県・福泉寺の「首大仏」や、石川県・悦叟寺「頭の大仏」などがあります。非公開ですが、京都・知恩院にも安置されているというウワサも。そういえば富山県の「高岡大仏」の胎内でも見かけました!あと、頭ではなく顔面だけですが東京の上野公園にある「上野大仏」は特に有名ですね!

そんな首大仏が和歌山市内の無量光寺というお寺にもあるということで、博物館や美術館めぐりとあわせて訪ねてみることにしました。

浄土宗寺院の無量光寺

和歌山城から少し離れたところに伸びる寺町通り。今でも多数のお寺が並ぶ、落ち着いた雰囲気のエリアです。

そんな中にあるのが無量光寺。文政12年(1829年)、紀州藩第10代藩主・徳川治宝(はるとみ)の時代に、徳本上人を開基として創建されました。治宝は念仏道場として堂塔を建立するも、明治14年(1881年)に一度焼失。その後、規模を縮小して再建されました。

本堂は明治19年(1886年)に傳法院という寺院から移築されたものであるそう。和歌山西国三十三箇所の第8番札所にも選ばれています。

観光寺ではないため案内板はほとんどありませんが、境内はとってもキレイ。立派な松の木が美しくそびえ立ちます。

巨大な仏頭

そんな境内に鎮座するのが首大仏。高さは約3m、本当に頭部のみの仏像です。

屋外ですが、屋根が設けられています。首の部分は劣化しているようで、石をはめて固定しています。

背後に回ることもできます。螺髪がしっかりと残った後頭部。

「首から上の願い事を叶える」といった信仰があり、特に受験生の合格祈願などで参拝者が訪れることが多いとのこと。

頭だけになった経緯

この首大仏、実は2代目の大仏様。最初の大仏は大福寺というお寺に享保年間(1716年〜1736年)に建立されたもので、高さ約4.8mの「丈六仏」であったそう。蓮心という僧侶が念仏修行中に一丈六尺もの仏様を目の前に拝み、その話をきいた村人によって造り上げられます。

天保6年(1835年)に火事で焼失。その際に溶けた銅を使って頭部だけの大仏を鋳造したのが現在の「首大仏」。胴体も鋳造し、頭部とつなげる予定だったのですが世相や予算の都合で叶わず。大福寺は安政元年(1854年)の安政大地震で全壊。寺を維持するのが難しくなり、明治41年(1908年)に廃寺となってしまいます。その際に、ここ無量光寺に移されました。

そもそもの要因は火災ではありますが、頭だけ残ったのではなく、頭だけ再建されたというのがこの首大仏の経緯なのです。

なお、この首大仏は鎌倉の大仏をモデルに計画されていたそう。もし身体も再建されていた場合、その比率から計算するに座高13mにも及び本家を凌ぐ大きな大仏様となる予定だったようです。

いつか完成した姿を見てみたいとは思いつつも、「サモトラケのニケ」や「ミロのヴィーナス」のように、欠けているからこそ語りかけてくる何かがあるはず。きっとここに訪れた人は、そんな不思議な魅力が気になって来たのでしょう。

アクセスと参拝情報

和歌山市駅から南に3kmほど。今回は和歌山城前の「わかやま歴史館」でハローサイクリングというシェアサイクルをレンタルしてアクセスしました!電動自転車で、10分ほどでした。

開門時間 7:00~16:30
料金 無料
公式サイト なし

※掲載の情報は2025年10月時点のものです。

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