民法・刑法といった法律、出入国審査などを担当する内閣の機関・法務省。赤レンガ棟には史料展示室が作られており、一般人でも予約不要で見学することができます。近代司法制度の成立とその歴史を学ぶことができるミュージアムです。
※平日限定のスポットです。土日祝日は閉館しているのでご注意ください。
重厚な赤レンガ棟棟
霞が関のビル群の中にとつぜん現れる重厚なレンガ建築。こちらは法務省の赤レンガ棟という、明治時代に造られた建造物。
ドイツ人のエンデとベックマンを招き、諸外国に劣らぬ近代建築が並ぶ都市を作り上げる「官庁集中計画」が行われました。赤レンガ棟は、そのときに造られた建物の一つです。
関東大震災には耐えたものの、東京大空襲によりレンガの外壁と床を残して焼失。昭和26年に復旧されるも、老朽化により整備が必要になります。官庁集中計画の唯一の生き残りであるこの建物を保存するため工事が行われ、平成6年に当時の姿で復原されました。
3階の一部が法務史料展示室となっており、一般人でも見学可能。入口で守衛さんに見学の旨を伝えると、館内と注意事項の案内を受けることができます。
こちらの札を首から下げて準備完了。案内の方に導かれて、館内の展示室へ。普段入ることのない省庁の建物は、とってもドキドキします。
上品でレトロな館内
案内されたのは明治の雰囲気を今に伝える復原室。レトロな室内はとても静か。
真っ白な壁にシャンデリアが下がる上品な空間。一枚残されていた写真を参考に内装や装飾を復原しております。細部にも精密な彫刻が施されており、非常に見ごたえがあります。
白亜の天井は照明を広く反射し、館内を明るくする。精巧な彫刻と、ツヤのある木材とのコントラストがとても美しいです。
急ピッチで進められた司法制度
明治維新から続く近代司法組織の歴史や、そこに関わる人物について紹介するパネルが続きます。
明治時代に使用されていた司法省の日誌や刑法典などの実物も展示されています。ボロボロになった紙の史料からは、150年の歴史の重みを感じ取ることができます。
明治維新とともに、急務として行われたのが司法制度の整備。江戸時代に欧米諸国と締結された不平等条約を解消するためには、近代的な司法制度を構築する必要がありました。
江藤新平の尽力
その役割を担ったのが開設された司法省のトップである司法卿を努めた江藤新平。展示室の中央に置かれた2冊の書籍は江藤が作り上げた「司法職務定制」と「民事慣例類集」。
「司法職務定制」は、検事・判事などの職務、全国に裁判所の設置、司法権についての考えがまとめられた一冊。現代にも通じる内容で、まさに近代的な司法制度確立に不可欠なものです。
一方「民事慣例類集」は、民法をつくるために日本各地より風習や慣例を聞き出しまとめたもの。出産や離縁、嫁入りの持参金などについても記されています。
実際の事件の記録
明治初期の事件の書類や新聞などが展示された「明治事件史コーナー」もあります。
明治15年に板垣退助が襲われた板垣退助遭難事件の書類も見つけました。板垣の似顔絵の上に赤線で傷がつけられた場所を印している、非常に生々しい記録も見ることができます。
さらに、明治4年に広沢真臣が襲われた事件については、広沢の受けた傷を医者が記録したという人形の姿も。赤く傷つけられた人形は、まるで呪いの人形のような出で立ち。この事件の犯人は、現代においても分かっていないそう。
教科書に出てくる事件というのはあくまで「歴史上の出来事」としか捉えていなかったのですが、このように具体的な資料を見ると、ニュースで報道されるような「実際の事件」として見えてきます。
メッセージギャラリー
法務史料館の隣にはメッセージギャラリーを併設しており、司法の近代化と建築の近代化に関する史料を展示しています。先程の復元室に比べると、いかにもミュージアムといったわかりやすい展示内容。
「近代司法の夜明け・法典の近代化・今に伝える近代建築」という合計10分間の映像も流れています。いずれも非常にわかりやすく、これを見ると展示内容がすんなりと入ってきます。
むき出しの赤レンガ壁の前には、赤レンガ棟の歩んできた歴史が記されたパネルや、実際に使用されていたレンガやレールなどの部品が展示されています。
開放的なバルコニー
展示室内にひっそりと設置されていた扉を開けると、屋外のバルコニーに通じていました。
眼の前にはせわしなく車が行き交う国道20号線と、石垣が積み上げられた皇居外苑・桜田門の姿。桜田門といえば幕末の桜田門外の変。遠い昔のようなイメージですが、わずか160年前というのも驚きです。
誰もいないテラスから皇居を眺めていると、まるで自分は違う世界にいるような気分。ちょっとしたヒミツの場所を見つけたような気持ちになりました。
アクセスと営業情報
東京メトロ有楽町線の桜田門駅・5番出口のすぐ眼の前にあります。他にも丸ノ内線・日比谷線の霞ヶ関駅や都営三田線の日比谷駅など、多くの駅から徒歩で向かうことができます。
休館日:土日祝
料金:無料
見学所要時間:20分くらい
コメント
[…] 普通に暮らしているとなかなか訪れることのない省庁。ニュースで見かけて名前は聞いたことがあっても、どこにあるかまで把握している人は少ないのではないでしょうか。普段はあまり縁の無い施設ですが、文部科学省の「情報ひろば」や、法務省の「法務史料展示室・メッセージギャラリー」など、東京都内にあるいくつかの省庁では、展示施設を併設しており一般人でも見学することができるのです。 […]