アーティスティックな石垣と進化を続ける城郭『金沢城』(金沢市)

石川県

金沢の街の中心に鎮座する金沢城。公園として整備された城内には、復元された櫓や門、庭園など多数の見どころが点在しています。築造当時の姿を見せる石垣からは、加賀藩主・前田家の美意識の高さもうかがい知ることができます。

訪問日:2022/11/18(金) ※掲載の写真・情報は訪問時のものです

金沢の中心に位置する城

1580年に佐久間盛政が加賀一向一揆の拠点であった尾山御坊を攻め落とし、金沢城としたのがはじまり。1583年に前田利家が入城すると、それ以後は前田家の居城に。前田家が藩主を務める加賀藩は「加賀百万石」と称され、江戸時代の日本全国の大名の中で最大の石高を誇っていました。

現代は金沢城公園として整備され、歴史を感じながら散策が楽しめます。兼六園や21世紀美術館と並ぶ、金沢を代表する人気の観光スポットです。

城を代表する3つの門

金沢城には複数の門があり、様々な方角から入城することができます。

ポピュラーなのは、東側に向く「石川門」。1788年に再建された門で、石川櫓がいかにもお城らしい姿で訪問者を出迎えてくれます。兼六園と繋がる入り口なので、兼六園から向かう方はこちら。

こちらは2020年に復元が完了した西側の「鼠多門」。金沢駅方面から向かう方は、こちらから入ることもできます。尾山神社の境内から鼠多門橋で繋がっているので、合わせて訪問するのもおすすめ。

北側を向くのは「河北門」。石川門と近くにあります。少々地味な印象ですが、実質的な正門であったそう。門の手前に広がる芝生・新丸広場は、観光客よりも地元の方の憩いの場といった雰囲気。近江町市場から徒歩10分ほどなので、市場→金沢城コースの方はこちらから。

金沢城公園自体が観光スポットに囲まれるような場所にあるため、どこかの観光スポットから近くの門に入って通り抜けながら見学し、別の門を出て次の観光スポットへ、といったように非常にルートに組み込みやすくなっています。

なお、ここで紹介した3つの門はいずれも無料で中に入ることができます!河北門、鼠多門は再現建築なので内部はとってもぴっかぴか。展示はそれほどありませんが、窓から門をくぐる人々を見下ろせるのはちょっとした優越感。

石川門だけは江戸時代に造られたもので国の重要文化財にも指定されています。そのためいつでも公開しているわけではありません。ちなみに2022年度はこんな感じで、かなり多くの日程にて公開しております。

<石川門公開期間>
2022年4月~11月、2023年3月の土・日・祝日他(※3月4,5,11,12,18,19,21日は除く)

来るべき戦に備えた城郭建築

様々な見どころのある金沢城でも、最も城郭建築らしさを実感できるのがこちら。左側が「橋爪門続櫓」、右側が「菱櫓」、2つの櫓を繋ぐ「五十間長屋」

こちらの3つは館内見学が可能。内部で繋がっており、一度に全て見ることができます。料金は330円。兼六園共通券も500円にて販売していました。

2001年に木造で復元されたものであるため、館内はとってもきれい。ちょっとした歴史紹介パネルはありますが、お城恒例の鎧兜や歴史資料などはほぼありません。その代わり紹介されているのは金沢城の建築。屋根は木材に鉛板を張り付けた「鉛瓦葺き」。積雪に耐え得る軽量な瓦であると同時に、鉄砲の弾へと転用が可能となっています。

壁面は平瓦を並べて貼り、継ぎ目に漆喰を塗った「なまこ壁」。外から見ると壁ですが、こちらも有事の際には瓦一枚割ることで鉄砲狭間に切り替わるという仕掛けになっているそう。

さらには、攻め入る敵へ向けて攻撃するための「石落とし」も設置されています。

戦国時代も終わりとなる時期に築造されたお城ですが、このように様々な戦への備えをしていたことが随所に見て取れます。おそらく仮想敵は江戸幕府。徳川家に継ぐ石高を持つ大名であった加賀藩前田家は、いつ目をつけられて攻められるかわからない緊張状態であったのでしょう。

なお、1602年に落雷によって天守が焼失。代わりに建てられたのが三階櫓。あえて天守を再建しなかったのは、財政的な理由や、機能的に不要という考えはもちろん、幕府への配慮であったとの意見もあります。

アーティスティックな石垣

金沢城では多種多様な石垣を見ることができることから、「石垣の博物館」と呼ばれています。

マニアックなイメージの石垣ですが、ここ金沢城にはアーティスティックで知識が無くても楽しめる物も多数存在しています。その象徴ともいえるのがこちらの「色紙短冊積石垣」。赤戸室・青戸室という2色の石を組み合わせたアートのような石垣。5代・前田綱紀が作り上げた作品とも呼べる石垣で、横の方が強度があるのにわざわざ縦に置いていたりと、機能面より見栄えを重視しているそう。

さきほど内部を紹介しました「橋爪門続櫓の石垣」も、赤と青の戸室石が使用されておりモザイク模様のような姿。上に続く格子模様のなまこ壁と組み合わさっています。

たくさんの刻印が見られる「数寄屋敷(すきやしき)石垣」もなかなかユニーク。まるで象形文字のような文様は、作業分担のために付けられたといわれています。

他にも、多種多様な石垣をあちこちで見ることができます。金沢城公園を散策する際は、少しだけ意識してみると面白い発見がありそうです。

夜間はライトアップ

金沢城公園では、一年を通してほぼ毎日ライトアップを開催しています。11月に訪問したところ、石川門は世界糖尿病デー(11/14)に関連してブルーに輝いていました。

橋爪門続櫓は光に照らされ、白さが際立つ。お堀の水面に映る姿もまた美しいです。

必見なのは玉泉院丸庭園のライトアップ。通常のライトアップに加えて、音と光の演出もあります。橋や池、そして積み上げられた石垣が鮮やかなカラー照明で彩られ、なんとも幻想的な光景。

3代・前田利常をはじめ、作庭に関わってきた歴代藩主たちは、何百年も経った後に鮮やかに彩られる美しい姿を見たら深く感動するのではないでしょうか。

明治から現代へ続く金沢城

明治時代に入り廃城令が施行されると、軍用地として残す処分となり陸軍省の管轄に。現在も城内には旧第六旅団司令部の建築が残されています。

戦後は金沢大学の丸の内キャンパスが置かれます。1995年に金沢大学が移出すると、石川県の管轄となり公園としての整備がスタート。

2001年には菱櫓・橋爪門続櫓・五十間長屋、2010年には河北門といもり堀、2015年には橋爪門二の門と玉泉院丸庭園、2020年には鼠多門・鼠多門橋と、次々と復元・整備が行われていきます。

今回訪問した2022年11月は、二の丸広場で大規模な工事が行われていました。どうやら二の丸御殿復元計画があり、2024年着工を目指しているそう。

4回目の訪問でしたが、何度来ても少しずつ変化しているため非常に訪問しがいのある城郭。次訪れるときはまた違う姿を見せてくれることでしょう。

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