扇ガ谷(おうぎがやつ)の奥地にたたずむ禅宗寺院。石庭ややぐら群、季節の花など見どころに加えて、目を引くのは「十六ノ井」。いったい何のための井戸だったのでしょうか。
禅宗寺院として再興
海蔵寺(かいぞうじ)は臨済宗建長寺派の寺。建長5年(1253年)に宗尊親王の命により藤原仲能が創建、当時は真言宗の寺院でした。
七堂伽藍を持つ大寺院であったそうですが、鎌倉幕府滅亡の際に戦火によって焼失してしまいます。応永元年(1394年)に第二代鎌倉公方・足利氏満の命により、上杉氏定が禅宗寺院として再建。心昭空外を開山として再興されました。
この空外という僧は「源翁心昭」のこと。玉藻前(九尾の狐)の化身である殺生石を砕いたという伝説を持っています。ゆるく殺生石めぐりをしている当ブログでは非常によく登場する人物です。
この海蔵寺は拝観料は無料。ただし境内自由ではなく開門時間は決まっているようなので、時間にはご注意を。
境内の見どころ
山門の手前にあるのは底脱の井。鎌倉時代の武士・安達泰盛の娘である千代能が水を汲みに来た際、水桶の底が抜けたため、このような名が付けられています。「鎌倉十井(じっせい)」の一つに数えられているそうです。
山門をくぐった先の境内。赤い野点傘が映えます。
左手に見える建築が薬師堂、右手が本堂。
薬師堂の堂内は土間となっており、薬師三尊像や十二神将像など、多数の仏像や厨子が安置されています。
今回は冬場の夕暮れどきであったためほとんど見かけませんでしたが、実は様々な花が咲くお寺でもあります。カイドウ、レンギョウ、ユキヤナギ、ノウゼンカズラ、ハギ、ウメなど季節に合わせて色々な花を見ることができるので、訪問される際はぜひ花に注目してみてください!
やぐらと石庭
本堂に向かって左奥へ進むと多数のやぐらが並んでおり、それぞれ宝塔や石碑が祀られています。根本の部分が朽ちてきている鳥居は、不安定ながらも威厳を放っています。
不思議な石像も見つけました。取っ手のついた壺のような形ですが、もしかしたらとぐろを巻いた白蛇かもしれません。
やぐらの先に広がるのは庭園。心字池を中心とした石庭が広がっています。園内に入ることはできませんが、やぐら側から鑑賞することができました。
神秘的な十六ノ井
海蔵寺に来たら見逃せないのが十六ノ井。境内は無料ですが、こちらは拝観料100円が必要。先ほどの赤い野立傘のところに納めます。
案内通りに進むと、大きな岩に木枠がはめ込まれている姿が見えます。
中を覗くと16個の円形の井戸に水が溜まっています。薄暗い空間にならぶ穴と観音菩薩像は神秘的な雰囲気です。
ほとんど水の流れが無いように見えますが、水は湧いているのでしょうか?そして井戸を複数並べた目的も推測が難しいです。井戸ではなく納骨穴であったという説もあるようですが、実際のところ何のための穴だったのかは不詳であるそう。
不思議な井戸を見学していると、どこからか聴いたことのない鳴き声が!鳥かと思ったのですが、木々を飛び交う姿はリスでした。鎌倉はリスが非常に多いのですが、実は特定外来生物のクリハラリス。可愛らしい姿に癒されますが、近年では数が激増しており、農作物などへの被害も出ているそうです。
アクセスと拝観情報
JR線の「鎌倉」駅西口より徒歩20分。
開門時間 | 9:30~16:00 |
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料金 | 無料 ※十六ノ井は100円 |
公式サイト | 不明 |
※掲載の情報は2025年1月時点のものです。
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